【166】 自民党第23代総裁に麻生太郎氏  - 焦点は衆院選へ -   2008.09.22


 自民党総裁選は茶番だという声が多いけれど、さまざまな政治的な発言もあって、それなりの成果を挙げた12日間であったと思う。5人の候補者それぞれの個性も出ていたし、例えば、一貫して「自衛隊の海外派遣を!」と訴えていた石破 茂の姿は、初めから総理に就くことはないことを前提にした発言だとはしても、ぶれない政治家としての評価を得たことだろう。少なくとも、政治に人々目を向けたという効果は否定できない。
 麻生太郎 351票、与謝野 馨 66票、小池 百合子 46票、石原伸晃 37票、石破 茂 25票も、それぞれに納得のいく得票数であった。
 与謝野 馨は立候補したことの論功行賞として66票を貰いお家安泰…、もっとも次の総選挙は自力で勝利しなくてはならないけれども。小池 百合子の第2位46票もなかなか妙味のある象徴的な数字で、小泉元総理・中川元幹事長の存在を否定することなく、かつ小泉チルドレンの半数以上は巣立っていることをうかがわせる得票だ。石原伸晃37票は将来の総理候補としての可能性を残したし、石破 茂25票は推薦人として彼と一蓮托生の道を選んだ中の誰ひとりとして、彼を裏切らなかったことを示している。
 さて、麻生太郎の351票を多いと見るか少ないと見るかは、それぞれに見方の分かれるところだが、僕はこれも妥当な得票であると思う。麻生以外の得票数の合計が174で、麻生支持対非麻生が2対1ということは、自民党が極めてバランス感覚に富んだ政党であるという印象を与えるし、反面、党内の3分の2の支持を得ているということは、今後の政治基盤を強固なものにしたという印象も同時に与えることができた。
 

 22日中に党内役員人事を決め、秋分の日を挟んで24日に組閣を行う運びだが、細田幹事長の任命を見ても、麻生太郎の性格がよく出ている。細田という有能で実務型を選んだのは自分が粗野であることを自覚しているからだろうし、もうひとつ、新聞辞令をことごとく外して見せた天邪鬼さである。
 新聞各紙は、総裁選の半ばぐらいから麻生内閣人事に取り組み、幹事長に町村・石原…ら(朝日の一部に細田昇格の記事)、官房長官に大島…と書き、解散期日まで10月26日/11月2日などと決めていたが、細田幹事長に続き、官房もこれまで新聞には登場しなかった河村健夫がほぼ固まっている。
 麻生内閣が誕生すると、解散はいつか…が政局の焦点になる。麻生新総裁は総裁選で「補正予算の成立を無視して解散はしない」と明言していたから、10月26日の冒頭解散はない。24日の臨時国会召集から数えるとして、早々の解散は、「政権交代」という大激震を経験するこの内閣が史上最短内閣としての記録を更新することになる解散だから、注目に値するだろう。
 歴代内閣の在任日数を短い順に並べてみると、最短は終戦直後の東久邇稔彦内閣で54日。以下、羽田孜内閣64日、石橋湛山内閣の65日、宇野宗佑内閣の69日、芦田均内閣の220日、幣原喜重郎内閣の226日、細川護熙内閣の263日、片山哲内閣の292日。そして、昨年9月26日に発足した福田康夫内閣は24日に総辞職すると364日。安倍晋三内閣は366日で、2日間及ばない。
 政権交代を賭けて、いよいよ天下分け目の衆議院選が行われることになるが、国民生活の安心のためを掲げて補正予算の成立を図って解散を先延ばししたことが、吉とでるか凶と出るか。総裁選最中に開かれた、たった1日の休会中審査で太田誠一農水大臣の首が飛んだように、国会審議では「事故米、消された年金、金融不安、不況…」と与党にとって有利な材料は何もない。ジリ貧の止むを得ず解散となって、この戦いで麻生内閣が史上最短内閣の記録を樹立することはほぼ間違いがない。たった一つ、恥も外聞もかなぐり捨てて政権にしがみついき、とにかく解散を先延ばしにする道を選べば、最短記録は免れるが…。


 一方の小沢劇場を公演中の小沢一郎民主党代表だが、長崎2区で福田衣里子さんの擁立を決めるなど、着々と名演技を披露している。
 僕は前のこの項に、民主党の必勝作戦は『全国の注目選挙区へ、話題を集める新人議員を擁立していくこと』と書いたが、これはある意味で選挙の王道でもある。どれほどインパクトのある候補を擁立できるかが問われるところだ。
 そして、もうひとつは自身のお国替えだが、これも【雑記帳9/16】に書いたように、太田公明党党首との対決は、公明党とも話がついている現時点での話題づくりだけのことで、将来は連携しなければならないかもしれない相手の党首に、ガチンコ勝負を挑むわけがない。
 かといって、絶対に勝てる選挙区を選ぶ必要もあり、民主党支持者から見ればちょっと高慢ちきな、そして自民党の一面の顔になりつつもある小池百合子との対決が、舞台としては最も盛り上がるのではないだろうか。
 お互い負けるわけには行かない戦い…、でも、ここで敗れては政治生命が絶たれる小沢一郎が、民主党の名誉を賭けた総力戦で、かろうじて戦いを制す。硝煙のくすぶる中、『諸君、日本の夜明けだぁ』と拳をあげる小沢…。駆け寄る、民主の若者たち…。
 敗れた小池は、やさしく迎えてくれる「兵庫6区」へと都落ちして捲土重来を期す。
「カァ〜」とカラスが鳴いて幕…、チョ〜ン!  


 近年の劇場型選挙では、名優を演じたものが当選するのが必定である。岩手の権六が、九州の無法松や東京10区の揚巻を蹴散らすことができるか。
 そして、無法松かヤケクソ解散の野放図さを持っているかどうか…も焦点である。べらんめえ口調だけれど、そこは二代目の脆弱さ…、政権を失うリスクを背負って、時代を転換させる役割を演じきることができるかどうか、見物(みもの)である。


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