◆ アルカイダ、サウジの米人人質を殺害         2004/6/19 【国際87】

    −こんな非人道的な無法を許すな−


 12日、国際テロ組織アルカーイダを名乗る組織に誘拐された、米航空・防衛大手ロッキード・マーチン社の攻撃ヘリ「アパッチ」の技師、ポール・ジョンソン氏(49才)が殺害され、18日、アルカイダは、この男性の首を切って殺害したとの写真付きの声明をイスラム系ウェブサイトで公表した。サウジ治安筋は、首都リヤド郊外で殺害された男性の遺体を発見したことを明らかにした。


 何たる無法か…と思う。アメリカの統治に抵抗するために、無抵抗な市民や外国人技術者、ジャーナリストなどを無差別に拘束し殺害する無法を、国際社会は許してはならない。
 ジャーナリズムは、国家規模の殺戮集団は、犯罪者ではないという。9.11同時多発テロ以来、アフガニスタンで人民を武力支配し、世界の各地で多数の人命を奪ったアルカイダは、国際社会の中では犯罪組織ではなく、その指導者はオサマ・ビン・ラディン氏と呼ばれている。
 武装勢力やアルカイダの行なう殺戮や暴力は非難の対象でなく、アメリカの行なう捕虜虐待は非難する、その境界線が解らない。
 かつて私は、「イスラムの戦闘を指導する宗教者とは、神の御名のもとに民衆を戦争へと駆り立てる犯罪人である」と書いた。中世に吹き荒れた宗教裁判や魔女狩りの例のみならず、スペインの南米侵略も、プロテスタントのアメリカ進出も、列強の帝国主義さえもが、神の教えを広げる宣教活動の名分を持ち、インカの民やネイティブアメリカンたち先住民を殲滅することが正義であった。
 今、イラクでは、宗教の名のもとに、多くの無知で純粋な人々を戦いに駆り立て、自爆テロを神の道にかなうものと子供たちをも含めて洗脳し、人々を巻き込んで殺戮を繰り返している。一般市民を盾にしてアメリカ軍に近づき、人垣の間から発砲するという。まさか現代では、織田信長の一向一揆鎮圧のような皆殺しというわけにもいくまいが、戦闘地に近づく一般市民には、それなりのリスクが伴うことは当然としなければなるまい。


 アメリカのイラク進攻や統治の是非については、別の議論が必要であろう。ただ、今のイラクからアメリカが手を引くことは考えられないし、そんなことをすれば戦闘力を持つ無法者が占拠することは目に見えている。また、イラク市民の多くはアメリカの統治を支持していることも事実である。
 この6月末に、主権をイラク暫定統治評議会へ移管するとして、国の秩序を整えようとしているのだから、今はそのルールを守って、新しい国づくりを行うのがもっとも望ましい道筋であろう。たとえそれが、アメリカ主導のものであるとしても、新しい国の形が整えば、そこで定められた新しいルールにのっとって、イラク人の国づくりを進めていけばよい。
 大きな時の流れとしては、さまざまな紆余曲折はあるとしても、凡そそのようなかたちで、新しいイラクという国はかたちづくられていくことだろう。今の内乱状態は、新しい国を産むための陣痛の苦しみなのかも知れない。爆弾テロ、民衆の殺戮、拉致・殺害など…、国際政治の舞台上ではとりたてて問題にするほどのことでもないのだろうか。


 先日、イラクで武装勢力の襲撃を受けて亡くなった、フリージャーナリスト橋田伸介さんの遺志を継いで、日本で目の治療を受けた、モハマド・ハイサム・サレハ君(10才)の笑顔の屈託のなさが、イラク問題が秘めるエゴ・非情さ・残忍さ・虚しさ…などを覆い隠して、せめてもの救いである。


「日本は、今」トップページへ