【98】 郵政民営化選挙始まる  − 小泉劇場 開演 ー         2005.08.31


 小泉自民党が郵政民営化の是非を問うといい、岡田民主党が政権交代を掲げての衆議院選挙が告示された。各候補者は9月11日の投票日を目指して、選挙戦に突入した。
 自民党は、郵政民営化法案に反対した議員を全て非公認にして、選挙に臨む。法案成立に賭ける小泉首相の固い決意を表す措置というべきであろうし、反対した議員は、ひとつに解散に踏みきることはできないだろうとタカを括っていたことと、小泉執行部が非公認に加えて対立候補(いわゆる刺客)を擁立してくるとまでは、予想していなかったことだろう。解散から選挙に至るまでの、彼らの言動を見れば、見通しの甘さは否めない。解散のあとに右往左往して新党を結成しているなど、およそ政治の世界に生きるものの姿勢ではあるまい。
 造反組みの脇の甘さは確かにあるとして、私は「一法案に反対したからと言って、議員としての存在を脅かす非公認という措置を、執行部の一存で決定することができるのか」ということが腑に落ちなかった。これでは、執行部に盾突いたものは次の選挙で手痛いしっぺ返しを受けることが、既成事実化してしまう。
 そこで、中日・読売・産経の新聞3社に、「教えてください。自民党執行部にそこまでの権限があるのでしょうか」とメールを送ってみた。産経からの返信はなかったけれど、中日・読売からは返事をもらい、いずれも「法律的にも何の問題もない。いわば社内の人事異動のようなもの」という趣旨であった。これからの政治は、執行部に逆らうわけにはいかなくなったという、肌寒いものを感じた。
 

 さて、選挙戦の行方であるが、自民党の圧勝に終わると思われる。郵政民営化は、前のページで述べたとおり(http://www.ztv.ne.jp/kyoiku/Nippon/97yusei.htm)やり遂げなければならない課題であり、国民の誰もが必要と認める課題である。野党やマスコミは世論調査の結果などを示して、「郵政民営化は国民にとって切迫した課題でなく、今、率先して取り上げなければならない争点ではない」という。だが、全ての課題の根底に旧態依然たる構造腐敗があり、そのひとつの象徴が郵政民営化であることを国民が知らないとでも思っているのだろうか。
 「参議院で否決された法案の賛否を問う」という小泉自民党の問いかけは解りやすく、それに対する民主党の主張…「年金改革や3年間で10兆円の歳費削減など」は、スローガンはあっても具体策を提示できていない。今や、「改革を叫ぶのは自民党」の感さえある。
 寄せ集め政党の民主党は、戦いにくいという一面を内在させている。労働団体を支持基盤に抱えているから、郵政民営も公務員削減も明確には示しえない。小泉自民党が、長年の集票組織であった郵便局や医師会をバッサリ切った明快さに比べて、いかにも不透明であり、これで幅広い国民の支持を得ようというのは虫が良すぎる。今までの躍進は、反自民としての存在が膨れ上がっただけのことであって、民主党という理念政策集団(民主党に結党の理念はないが)が大きな支持を得てきたのとは違うということを、はっきりと認識することが大切である。
 小泉首相の「自公で過半数を取れなかったら退陣する」というアピールに呼応して、岡田代表が「政権交代が実現しなければ辞任する」と言うのも、甘すぎる言動だ。自公は、造反議員を切り捨てても現有勢力維持で過半数である。対立候補(いわゆる刺客候補)の何人かは当選してくるだろうから、自公での過半数はほぼ確実な数であろう。これに対して、民主党は、共産党との連携はしないという現在、社民党は数のうちに入らないから、政権交代を実現するためには70議席ほどを上積みしなければならないという、ほぼ不可能な数字である。また、岡田代表のこの宣言では、たとえ民主党が現有勢力以上の成果を挙げたとしても、代表の辞任は避けられず惨敗ムードに覆われることとなろう。


 11日後には、国民の審判が下る。「小泉劇場」と揶揄される今回の選挙戦の配役は、主演…小泉純一郎、ヒロイン(抜擢)…小池百合子、助演…岡田克也、敵役…亀井静香・綿貫民輔、悲劇の町娘…野田聖子、狂言師…田中康夫、その他…ホリエモン・いろいろな女の子たち、といったところだろうか。
 小泉首相の政治スタイルや手法を半ば侮蔑的に「小泉劇場」と呼ぶマスコミや批判勢力も多いが、テレビというメディアが大きな役割を果たす現代の選挙においては、ドラマを演じられないものは政治の主役にはなれない。「劇場型政治」という呼び方もよく耳にするが、今や大衆にアピールするパフォーマンス、明確・明瞭な言葉、好感度の高い振る舞いを演じきれないものは、大衆の心を捉える政治家たりえないことを認めるべきだろう。
 その観点からも、シナリオ・演出・キャストを比べてみて、自民圧勝はゆるぎないと思うのだが、いかがだろうか。


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