【15】 白山町へのごみ処理場建設は愚策                2005.12.30
   − 新津市のゴミ処理問題の解決は −


 平成18年1月1日、2市8町村が合併して、新しい津市が発足する。人口28万8千人を擁する、三重県第2位の都市である。
 さて、その新津市の新しいゴミ処理場として、白山町の三ヶ野地区が建設予定地に決まり、この12月に津地区清掃事業組合(理事長、近藤津市長)と白山町との間に建設確認書が締結された。合併前に、地方自治体としての白山町という形がある間に、契約書を巻いてしまおうとの急ぎ方であった。
 ゴミ処理場という社会の負の部分を受け持つ施設の建設であるから、地元の三ヶ野地区住民は当然反対の声を上げているが、白山町全体としては200億円といわれる工事費を見込んで、町内の土木建築業者を中心に、むしろ歓迎の意向が示されている。新津市は1月末に市長・市議の改選が行われるが、白山町を地盤とする立候補予定者は圧倒的に建設賛成派が多いのである。地元の関係業者としては、膨大な建設費は大きな魅力なのだろうが、その恩恵の外側にいる住民の声が聞こえてこないのは気がかりなことである。


 さて、流れは白山町の三ヶ野地区へ新しいゴミ処理場を建設する方向へと向かっているのだが、果たして津市のゴミ処理の方法として、それが最良の方法かどうか、大いに疑問である。
 第1に、人口の密集する旧津市内から遠くに建設することは、輸送の労力とコストにおいて、将来に渡り大きな負担増となる。
 第2に、現在埋められている片田のゴミについては、そのまま埋めたままに放置するわけで、何らの処理もなされない。盛り土して公園にでもするのだろうが、現在埋められたゴミからの廃液は、今後何10年も流出し続け、今でも周辺の水田の米は売買されないといわれているのに、これからも更に広範囲の土壌を汚染し続けることだろう。
 第3に、白山町の三ヶ野地区にゴミ処理場が建設された場合、その廃液が雲出川に流れ込み、津市民の飲料水が汚染される懸念が指摘されている。


 これらを解決する、ゴミ処理計画はないのか。現在の片田に新式のガス化溶融炉を建設し、公害のない近代的ゴミ処理工場を完成することだろう。
 片田は、新津市のどこからも交通の便は良い。旧久居一志地区からは165号線から至近であり、安芸地区からは中勢バイパスを利用して至便である。輸送コストを大きく節減することができるであろう。
 また、片田に新式のガス化溶融炉を建設するということは、現在の片田に埋めたままにされている廃棄物を、順次掘り起こして高温で焼却処理をしていくことを含んでいる。放置される片田のゴミをも、全て処理できるのである。
 ゴミ処理場の建設地はこれまで、負担の公平さなどといって、それまであった場所とは異なる地区への建設を、たらいまわし方式で決定してきた。しかし、ゴミ処理問題は 処理場さえ決めれば そこが満杯になるまでのあと何年間かは問題を先送りにできるといった対応をしていては、なにも解決されないことを肝に銘じるべきであろう。
 しかも、繰り返しになるが、埋め立てられたゴミは埋められたままで長年の間に発酵分解を待つだけなのである。当然、汚水の流出や土壌の汚染は避けられない。埋められたゴミを高温焼却して処理するほうが、片田地区の人々の利益にもつながるはずである。
 もちろん、新しい溶融炉は近代装備され、公害や悪臭とは無縁の設備でなくてはならない。周辺の道路も整備して、生活道路との兼ね合いもより便利なものにしていく必要があろう。そうして完成する新しい清掃工場は、片田地区の人たちにも受け入れられる…、むしろ現在の埋め立てゴミを処理することのできる…、歓迎を持って迎えられる設備であろう。逆に言えば、これから建設される清掃工場は、市民に説明できるものであり、市民に納得され歓迎されるものでなくてはならないということである。


 新亀山市に建設された溶融炉は80億円。新津市は約6倍の人口規模を持つが、効率などを勘案して4倍規模の炉を建設すれば、十分な処理能力を持つ。建設費用は300億円に近くなるかもしれないけれど、これからの津市のゴミ処理行政を展望すれば、決して高くはない投資である。白山町へ200億円の埋め立て処理場を造るよりは、よほど建設的である。
 また、ゴミ処理問題は、高能力の処理施設を作れば全てが解決するものではない。行政担当者の飽くことのない真摯な対応と、そして何よりも市民の協力なくしては、一歩も進みはしない。
 例えば、越谷市が1995年に竣工した清掃工場は、「ごみを使った火力発電所」が売り物で、一躍全国に名を知られた施設であった。1日あたりの処理量は800トン(200トン×4基)だったが傘下自治体から搬入されるゴミのことごとくが分別なしで、最初からプラスチック、紙、木など高カロリーごみが次々と運び込まれ、ペットボトルまで燃やされる有様であって、炉はすぐにクリンカーができ、極限まで傷んでしまった。
 あわてて1炉ずつオーバーホールしたりしていたが、その間もごみは途切れることがなく運び込まれ、通常3日から5日分が常識のピット滞留量が15日分という異常な事態を招いてしまった。工場内にはゴミが溢れ、現場は悲鳴をあげることになる。
 このゴミが、上野市まで運ばれていたということで、ご存知の方も多いことだろう。1日あたり80トンが産廃業者の焼却炉に運ばれたのであるが、こんな歪んだ処理方法を招いた根底には、ゴミ分別の必要性を訴えて住民の協力を得ることに努力を怠った行政の誤りと、まだ金さえ出せはゴミは処理できるという、考え方の甘さがあった。


 行政にとって、ゴミ処理の問題は、いずれもが英知を絞って取り組まねばならない大問題である。だからこそ、解決を先送りするような安易な処理法を求めずに、誰もが納得して歓迎する処理策を組み上げ、住民の理解と協力を得て、将来に渡る解決方法を作り上げることが大切である。
 行政は、すべからくそうであろう。英知を絞り、畏れず、怯まず…、新津市のゴミ処理問題を根底から解決するために、片田に溶融炉の近代処理センターを建設、完成したい。


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