三重県のホームページへ  津市について  飯田 章のホームページへ


このページは、関連項目が多いので、上から順に日付順に配しています。


【1】「三重県教育研究会」の設立を
 (6.15)


 現在、三重県には、信じられないことですが、三重県下全域を組織する小中学校の先生たちの研究会が存在しません。もちろん、愛知・岐阜などの近隣諸県はそれらの研究組織を持っています。
かつては、三重県にも「三重県小中学校教育研究会(三教研)」なる組織は存在し、国語・算数・理科・社会などの各教科に分かれて部会を持っていました。県下の全ての小中学校の先生はこの研究会の教科部会に会員として所属し、それぞれの専攻する教科の研究に取り組み、全県的な交流と研究発表を行っていました。各教科部会は、それぞれに年一回の研究発表会を必ず行い、会場になった学校は近隣の学校の協力を得て課題に取り組み、その発表を見ようと全県下から先生たちが集まって、活況を呈する研究発表が行われていました。
 ところが、今からさかのぼること15年ほど前、三重県教職員組合(三教組)から、「三教研は、県教委からの助成金を受けているから官製団体であり、民主的な研究が行われていない」といった、理由にもならない批判を受けて、突如、解散を宣言してしまいます。以来、三重県には、県下全域を組織する教育研究会はありません。
 現在の小中学校の研究組織は、各郡市内の教科研究会です。ただ、規模が小さいためマンネリに陥り、レベルの向上が望みにくい。この現状の中で、先生たちの自発的な研究団体として、国語は「三重県小学校国語研究会(小国研)」、算数は「三重県算数・数学研究会(三数研)」などといった、各教科の研究会が、全県下から有志の先生たちを集めて現存しています。自主研究団体といった、たいへん望ましい研究組織であることは確かなのですが、会費を出してまで自主的に勉強しようという先生たちは近頃少なく、どの教科の研究会も会員数を激減させていて、例えば、理科の「三重県小学校理科教育振興会(小理振)」の津市の会員はたった4名です。会員数を減らせば活動力は弱まり、会費は集まらずで、研究会自体が魅力のないものになってしまっています。今、三重県の小中学校の研究体制は、このように惨憺たる状況です。
 三重県の教育研究体制を整え、先生達の研究を進めてレベルをアップするために、「三重県教育研究会」の結成が急務です。



【2】「三重県小中学校教育研究会」結成によって、教育に『芯』を (6.22)

 「三重県小中学校教育研究会(三教研)」の結成を…という提案を前回行いました。全県的な研究体制を作ることによって交流が図られ、お互いに情報を提供し交換し合って、先生たちのレベルアップができるだけでなく、研究会組織を確かなものにすることによって、教育に芯(論理)を作ることが期待できます。
 今、教育は、芯がない(教育に論理がないと言ってもよいと思いますが)ために、各界各方面から実に様々なことを言われ放題で、教育現場は何らそれに対して言い返す言葉を知りません。
 先般も県内のある中学校で、他の生徒に暴力を振るう生徒を止めに入った先生が、その生徒に怪我をさせるという出来事がありました。その生徒の母親に抗議されて学校は謝罪するしかなかく、生徒の処分もできなかったというのです。全く、教育に芯(論理)がないというべきで、なぜ教育は、「悪いのは他人に暴力を振るった生徒であって、それを止めるためにその生徒に怪我を負わせたとしても、先生の態度は正当であり、教育的に考えて何ら問題はない」と言わないのでしょうか。暴力行為を取り締まるために加害者の腕の一本も折ったとしても、警察組織であれば、警官の行為は正当であったと主張するでしょう。教育委員会が、校長が、同僚が、その先生を守ることをしないならば、教育界に正義は行われません。
 このことは、教育に統一した意識の確立がないとも言えますし、共通理念による連帯感がないとも言えます。すなわち、今の教育現場の先生たちは、みんな孤独です。近頃は子供たちが友達と遊ばない、仲間を作らずに人と交流する方法を知らないと指摘されていますが、実は、子供たちだけでなく先生たちがそうなのです。特に若い先生たちは、職場の飲み会を断り、麻雀などの付き合いもしようとしません。慰安旅行も参加したくないと考える人が増えているそうです。先生たちの孤立感は益々深まり、熱心に取り組めば他の先生からそこまでするなと阻止され、家庭での基本的なしつけもできていない生徒を前に、立ち往生するばかりなのです。
 これらの問題をともに考え、解決の方法を示すことのできる組織としての「三重県小中学校教育研究会(三教研)」が必要です。問題を提示し、解決の方法をともに考え取り組んでくれる、仲間たちの組織が必要です。


【3】「三重県小中学校教育研究会(三教研)」の結成で、教育レベルのアップを(7.2)


 「三重県小中学校教育研究会(三教研)」は、先生たちの指導力アップにつながる研究組織です。「三教研」という組織ができれば、当初に述べてきたように、全県的な交流が図られ、お互いに情報を交換して刺激し合う…といった概念的な効果も期待できるでしょうし、さらにもっと進んで、「1年生の算数のこの単元は、基本的にこれをこのように教えることが肝要」といったように、教育現場に指針となる情報を提示する研究組織として機能することも期待できると思います。
 現在の教育現場は、ゆとり教育・総合学習・生きる力を身につけさせる…などの合言葉の中で、現場の教師自身が教材を選び、授業の構想を構築して実践することが求められています。理念倒れで、実際に機能する構想ではありません。現場の教師それぞれに、それだけの時間と研究環境が保証されているでしょうか。特に小学校の個々の教師に、国語・算数・理科・社会・音楽・図工・体育…など、担当する全ての教科について、教材を作り指導案を練って効果的な授業を行うことなどできるわけがありません。
 「三重県小中学校教育研究会(三教研)」の各教科の部会が研究を担当すれば、それができるのです。例えば、「1年生の算数のこの単元は、基本的にこれをこのように教えることが肝要」といった提言を、算数部会が教材を作り、研究実践を示し、現場の授業の模範の形を提案すればよいのです。
 勿論、現場の授業を規制したり制約するものでなく、基本的な必修事項を提示して指針を示すものであって、それをもとに現場の先生たちが、自分たちの工夫によって、学習を更に発展させるものでなくてはなりません。三教研の教科部会の責任は大きく、現場の学校の期待に応えるために、担当する先生達の研究は緊張感のあるものになることでしょう。そのこともまた、県下の学習レベルを大きく引き上げるものになるはずです。




【4】井上四日市市長 三泗鈴亀地区の合併に意欲!
  (12.13)

昨日の四日市市議会で、井上四日市市長は、三泗鈴亀地区(三重郡、四日市、鈴鹿市・郡、亀山市)の合併に向けて、「実現に努力する」との意欲を示した。「私のリーダーシップが巷間云々されているようですが、全力を以って実現にあたる」と語り、並々ならぬ決意表明であった。時期は未定としても、北川知事は鈴鹿市の出身であり、この合併には推進役として動くことだろうし、三市二郡の合併は事実上決まったと考えても良いだろう。
 三泗鈴亀地区(とさらには桑員地区も加えて)の市町村が合併して、人口50万人を超える北勢市(仮称)が実現すれば、三重県では突出した地区となるばかりでなく、政令指定都市としてさまざまな施策を実施することができ、中南勢地区と北勢市との地域格差は大きく開くことだろう。

 かねてから提言してきたことであるが、津市は安芸郡の各市町村を初めとして久居市・一志郡を、さらに松阪市・飯南郡を含めた地域との合併も視野に入れて、具体的な取り組みを始めるべきである。北・中・南勢、伊賀、紀州を大きな地域のまとまりとする三重県にあって、中勢地区の責任を負わねばならないのは津市であり、県都としての地位にふさわしい市を実現することが自らの責任であることを自覚して、早急な取り組みを始めなければならない。手をこまねいていて、河芸町が北勢市へ、松阪のみならず三雲町も南勢市への合併を決めたとなっては、津市に市政はない。どちらかの市に入れてもらうことが適当といわれかねない。




【5】三重県とその市町村は、独自の教育プログラムを!
    − 学力低下を招かないために −    その1     (1.14)



 学力低下が懸念される「新指導要領」が、いよいよこの4月から全国の小中学校で実施される。地方分権法案の成立を受け、地方の時代といわれる現在、地方自治体は主体性をもって地域の特性を生かした独自の教育プログラムを作成して、この問題に取り組む必要があることは、かねてから提言してきたとおりである。
 従来の繰り返しになるが、「新指導要領」はどの程度に学力低下が懸念されるのかを、もう一度、以下の資料を示して確認しておきたい。


@主要教科の時間数の激減
 現在の日本の子どもたちは、先進国の中で最も薄い教科書を用いて、最も少ない時間数のもとで学習していることを、皆さんはご存知だろうか。まさか、日本の学校教育が…と思われるだろうが、下の表をご覧いただきたい。新指導要領での中3の数学と理科の学習時間数は、英仏独豪の6割、アメリカの半分、オーストリアの4割程度である。


● 中3の数学と理科の授業時間数(単位 時間)【NAEE2002の資料より】

日本

158

ドイツ

256

イギリス

258

フランス

259

オランダ

267

アメリカ

295

オーストリア

390

 


A懸念される質の低下

 小学校の算数から、3桁×3桁のかけ算や、4桁どうしのたし算ひき算がなくなる。これでは、子どもたちは5000円で買い物をしたときのお釣りが計算できない。小数は、小数点第2位以下は扱わなくなる。だから、円周率の3.14は知っていても、計算するときには、「およそ3」として計算する。円周率を「3」で計算するということは、円周の長さとその円に内接する6角形の周囲の長さとが等しいことになり、近似値の域を通り越してほとんど詐欺である。
 これで、日本の科学技術は…、社会的な知的水準は…、維持できるのだろうか。


B日本と中国の大学生の計算力の比較(数学の現状)
 小中学校程度の計算問題を25点満点のテストにして、日本と中国の大学生に実施した結果、満点を取った生徒の割合は下の表のとおりである。

大 学 区 分

満点の割合

中 国

中国の国立大学トップ校

95.65%

日 本

国立大学トップ校 理系

45.00%

国立大学トップ校 文系

22.95%

私立大学トップ校 理系

.70%

私立大学トップ校 文系

.89%

     【1999年 小数ができない大学生 東洋経済新報社】
 文部科学省も、新指導要領を実施したあと学力テストを実施して結果を公表するとしているが、学力テストの結果の分析は、テストの問題傾向・分析の方法などにより結果が大きく左右される。ここに示したものは、小中学校程度の計算というシンプルな問題を25点満点という単純比較したもので、結果の比較は一目瞭然。もっと難しい問題なら逆転している…などという負け惜しみを言う元気もないだろう。


 以上、3つの指摘を見てきたが、これらの他にも学力低下が懸念される理由は、枚挙に暇がない。総合学習の導入によって、学力の定着が図られなければならない教科学習の指導があいまいになってしまうこと。授業時間が減少するため、実験・観察・社会見学・聞き取り調査などの科学的な感心・思考・手法が指導できないこと。体験を重視する総合学省は、机に座って学習するという形の学習形態を崩壊させていくこと。そして、授業を自ら計画しなければならない教師に、過度の負担を強いること。… などなど、列挙していけばきりはない。

 現在の日本の数学教育が、いかに内容の乏しいものかがご理解いただけると思う。今の日本は、過去の教育の遺産でかろうじて食いつないでいるのである。このまま、あと10年も経てば、日本は世界に取り残されてしまうことが目に見えている。
 なのに、まだ文部科学省は、授業時間数の大幅削減をもとにした、新指導要領を実施しようとしている。そもそも、荒れる学校に手を焼いた文部科学省は、詰め込み教育は子ども達の不満を募らせ非行を促進すると唱って、10年以上前から教科の内容を削減し続けてきた。その結果として招いたものは、切れる子ども達、少年非行の凶悪化と年齢の低年化
、学校崩壊と学級崩壊の低学年化…。子ども達の荒れと学習内容の軽減化とは何の因果関係もなかったことを、まだ認めようとも、その誤りに何の責任をとろうともしていないのである。


 今、文部科学省を初めとする国の教育政策がそうであるとするのならば、愛知県犬山市などですでにその取り組みが始まっているように、学習事項を整理して独自の教育プログラムを組み上げ、教育立県「三重」を掲げて、学力低下必至の現状に敢然と立つ姿勢を示しえないものだろうか。
 三重県は、情報公開や革新性で、全国の注目を集める独自路線を持っている。そろそろ、理念や方法論など内向けのパフォーマンスだけでなく、「全国学力テストで、平均に対してこれだけのプラスをしました。学校崩壊・学級崩壊は、三重県では無縁です」と胸を張れる成果を挙げ、結果を満天下に堂々と誇るべきプログラムをスタートさせるべきだと思う。





【6】三重県とその市町村は、独自の教育プログラムを!        (1.19)
   − 学力低下を招かないため −  その2   (下の、その1からお読み下さい)



 繰り返される学力低下への警鐘の前に、遠山文科相は17日の全国県教委連合会総会で児童・生徒の学力向上を宣言。教科書を超えた授業や、始業前に補習や宿題を奨励する新方針を表明した。また、教科書に学習指導要領を超えた「発展的記述」も容認。同省では、教科書検定基準の改定作業を行う方針であることが報じられた。
 官僚組織が計画を立て軌道に乗せようと動き始めたものは、外部からの意見や提言ではなかなか修正されないと、最近の読んだ著作の中で接した覚えがあるが、確かに、10年に渡って無為無策の赤字国債を垂れ流し、日本を666兆円の借金漬けにした大蔵省…、狂牛病対策に手落ちはなかったと退官の弁を語った農水省事務次官…、批判の中も国費使い放題の外務省を始めとする諸官庁など、誰がどう見ても誤っていることがわかる政策になおしがみつく官僚体質の中で、この文部科学省の軌道修正は、卓見とエールを贈っておこう。
 しかし、授業時間数の修正や何をどう教えるのかといった具体的な提案はなく、現場の工夫や努力に委ねるというものである。学校や教師に考えろというだけで、具体的な方策を伴わない新方針の効果は期待できない。


 さて、4月から実施される新指導要領が抱える問題点を、今日は、小学校6年生の授業時間数について見てみよう。日本の高度成長を支えた世代が小学生であった、昭和48年を比較の対照として比べてみると、年間で、国語が245→175時間(71%)、算数が210→150時間(71%)、理科が140→95時間(68%)、社会が140→100時間(71%)となり、この四教科で215時間減、約70%へと大幅に減っている。これに対して、特別活動の時間が35時間、総合的な学習の時間が110時間、新しく設定されている。
 特別活動とはいわゆる学級活動をいい、総合的な学習とは、指導要領のねらいをみると、@自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること,A学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること…とされている。もちろん、それを実現するための方策や具体的な教案・教材などはなく、各学校で地域に応じた学習計画を立案することとしている。
 なぜ、学力低下が懸念されるのか…。まず、大幅な国算理社の教科の授業時間が減ったことによって、内容も大幅に削減され、また、反復して演習をさせる時間もなくなってしまったことは、直接的な要因だが、もうひとつ、こうした教科指導の時間が少なくなり、体験学習が増えたことによって、子ども達の学習するという姿勢が希薄になってしまうことが挙げられる。

 総合学習は、児童生徒に社会生活に欠かせない規律を身につけさせ、生きるということに対する厳しさに目をそむけずに立ち向かう勇気を植え付けるものとされているが、本当にそうなのか。授業時間中に私語をしてはいけない、他人の迷惑になるような言動はいけない、規律を乱すものは厳しくしつけられ、時に罰を受ける…などを教える時間かと思ったのだが、もちつき・たこあげ・田植えと稲刈り・遊具作りとそれを使った遊び(竹トンボ、竹馬、…)・土地のお年よりに指導してもらって竹トンボや竹馬を作る活動などが、テレビなどのマスメディアを通じてもてはやされているように、実際は、学校とはいかに楽しいところかを経験させるところのようである。
 学校は、いま、子どもたちに楽しく一日を過ごしてもらって、明日も、喜んできてもらうところとなった。その楽しさが、学問することの喜びに触れ、真理を探究し、知識を積み重ねることの楽しさであれば、たいへん結構なことなのだが、子供たちにとって楽しい学校とは、したいことをさせてくれて、嫌なことを押し付けられたりしかられたりしない学校のことである。
 新指導要領が実施された結果、世の児童生徒や父兄に、『勉強は、「学習塾」で習うもの』と言われ、塾通いの児童生徒が増えたならば、公教育は…文部省と教育委員会そして公立学校は、教育の場における敗北宣言を余儀なくされ、もはやどこにも存在意義はない。そのような事態を招かないように、今、公教育がなさねばならないことは何か、その真価を賭して考えねばならない命題であろう。

 ことは、文部科学省にのみその責任を収斂しておけば済むという問題ではあるまい。直接に教育現場を指導監督し、その方策や結果に重大な責任を負わねばならない県や市の教育委員会は、当事者として取り組まねばならない課題である。もちろん、学校現場と教師自身は、最前線で結果責任を問われながら正対しなければならない現実である。




【7】三重県とその市町村は、独自の教育プログラムを!(学力低下を招かないために)
  その3  − 望まれる 教師の研修と問題解決を保証する研究体制 −  



 学力低下を招かないようにという遠山文部科学相の談話は、個々の教師あるいは学校が指導計画を練り上げ、指導案や教材を作り、事前準備を繰り返して授業に臨むようにというものであった。しかし、現実は個々の教師あるいは学校にそれだけの余裕はなく、またその体制も整ってはいない。
 
 先日のテレビで、イギリスで最もレベルの低い小学校と呼ばれていた公立カルバートン小学校(生徒数354人)に赴任して、5年間で不登校や授業崩壊を一掃し、国語・算数・理科300点満点の全国一斉テストでそれまでの平均44点を282点に引き上げて、エリザベス女王から勲章を授与された女性校長シャロン・ホローズ女史の姿が紹介されていた。

 シャロン校長は、離婚して2児を抱えながら、学校改革に取り組む。優秀な先生をスカウトし、学校補助員を配備し、授業時間はもちろんいつも学校内を歩き回って、問題点を見つけては職員とディスカッションして解決しようとする。
 人事権も予算も与えられている、イギリスの校長であればこそできる仕事だが、だからこそ校長の責任は重大である。イギリスの教師の平均給与は345万円ほどで、社会的に決して恵まれているとはいえない状況であるが、その条件の中で人材を確保し、教材を作成させ、授業の計画を練らせ、親たちの意識改革までも実行させる。
 学校の運営がそれぞれの校長に大きく委ねられているイギリスの風土を基盤としての取り組みだが、お上意識の強い連帯責任体制の日本においては、校長にそれだけの権限も意識も土壌も無いし、日教組の抵抗にもあわねばならない。日本の現状の中で校長の責任と権限において成し遂げねばならない取り組みであるかどうかは別の機会に考えるとして、教育改革を成し遂げるために取り組むべき課題を明示している番組であった。
 必要なことは、生徒と親たちの意識を改革すること。そのためには、信頼される学校でなくてはならないこと。さらにそのために、教師ひとりひとりの意識を高め、授業技術を磨き、より良い教材を提供して、よくわかる授業を展開することである。
 

 それでは現状をふまえて、現在の状態から教師の意識を高めるためにはどうすればよいのか。基本的なことであるが、研究体制を整えて研修を重ね、しっかりした授業を実現して、一人ひとりの教師が自信と誇りを持つことが必要であり、高いレベルの集団の中で充実した仕事を成し遂げていく環境を作ることが必要であろう。

 教師の研究を保証し、現場のレベルアップを図るために…、さらには、学級崩壊や不登校の問題を解決し、子どもや親たちに向かい合う姿勢などについてもともに考えていく機関として、教師が自分たちの研究組織として自発的に参加できる、「三重県教育研究会」の確立が急務である。
 教師は、大学を卒業してからあとは自学自習で、学級や教科の担任として生徒に向かうばかりであって、学校内で管理職や先輩教師から厳しい指導を受けることも、やらなければならない目標値を定めた研修もない。授業や生徒指導に行き詰まった場合に、頼るべき機関もないしマニュアルも整備されていない。教師は孤独である。依るべき問題解決の機関として、「三重県教育研究会」の設立が望まれる。


 「三重県教育研究会」の組織と研究体制作り、また運営は…。 以下、次号ということで!




【8】201X年、三重県庁移転 −近未来シュミレーション−   (8.3)


 四日市・鈴鹿・楠町が合併して誕生した、三重県初の中核市「三重市」は、新生の菰野市と川越・朝日町、さらには桑員の市町を合わせて、政令指定市の実現を目前にしている。2004年の合併話のときには、シャープの進出が決まって強気であった亀山市も、中国ICの流入と円高に押されて、当初見込んだ100億円の税収は望むべくもない。「政令指定都市の中の『亀山区』であれば、普通市と同じ権限を保持するのだから」と説得を受けて、田中亮太市長の決意は傾く。
 201X年3月、北勢地区のほぼ全域に市域を持つ政令指定都市「三重市」が誕生した。「これだけの大きな都市が、人口でも市面積でも3分の1足らずの津市に、県都を委ねておく理由は無い。県民の意思を問いたい」。井上市長の提案を受け、県都移転を長年の悲願としてきた北勢地区関係者の動きは素早かった。「津というだけで、商工会議所の会頭も、安全協会の理事長も…持っていて当然と考えていた津市の目を覚まさせよ」。積年の思いが噴出した動きであった。
 「中勢・南勢・伊賀・紀州地区に県の出先機関の拠点を置き、住民サービスのネットワークを張り巡らします」「現在の体制よりも、機能を低下させることは決してありません」と周到な説明が繰り返される。北川県政を受け継いだ中川正春知事が、北勢を地盤とするだけあって、この話には乗り気であった。関係各省庁の了解・承認も積極的に取り付け、手続き上の問題も払拭された。
 10月第2日曜日 午前7時、「県庁移転」を問う、県民投票が開始された。津市と北勢地区の他には直接関係のないことだと考えているのか、全県の投票率は、危機感のみなぎる津市と中心となる旧四日市市以外では、思いのほか低い。電子投票だから、結果は投票の締め切られる午後8時から15分もすれば判明する。
 それにしても、津市の危機感はいかにも遅い。中勢地区の核としての自覚を持ち、近隣各市町村との連携を持って、産業の振興や政治の近代化を実現する努力を払わねばならない立場であることを自覚せず、県都であることに奢ってきた結果といえば確かにそうなのだが、いま、県都としての立場を失うことの大きさを考えると、以後の凋落は免れない。
 午後8時15分。三重テレビの臨時ニュースが県民投票の結果を伝えた。



  このページのトップへ  三重県のもくじへ  飯田 章のホームページへ

ふるさと三重県
1ページ