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【157】 シベリア墓参  -終わらない戦後-         2008.07.25


 友人が、「今、ロシアからの帰りだ」と言って、暫く我が家で話し込んでいった。「ウラジオストックから新潟港に着き、上越新幹線~東海道新幹線と乗り継いで、東京回りで帰ってきた。新潟から乗り継ぎを入れて6時間…、美味しいお茶を飲ませてくれ」と立ち寄ったものだ。
 彼は、満州国の首都であった新京(現在の長春)で生まれ、日本の敗戦が色濃くなった昭和20年7月、満鉄勤務の父親を一人残し、母・姉とともに帰国した。母親の腕に抱かれて日本の地を踏んだ彼は、まだ生後2ヶ月の乳飲み児であった。
 社員や現地に残された人たちの世話にあたっていた父親は、8月9日、日ソ不可侵条約を一方的に破棄して侵入したソ連軍の捕虜となってシベリアに抑留され、バイカル湖畔のイルクーツク近辺で死亡したとされている。
 冬は-40℃の日が続き、バイカル湖の湖面が波立ったままの姿で凍るという極寒の地で強制労働に従事させられた日本人将兵・民間人の総数は60万人、うち彼の地の土となったものは26万人と言われていたが、ペレストロイカ以降の情報開示によってソ連の機密文書が次々と公開され、今では抑留された人数は105万人、うち死亡したものは35万人を下らないことが判っている。友人は、その顔も知らず、今なお遺骨も戻らない父親の、墓参に行ってきた帰りであった。


 往き、新潟からウラジオストックへと船で渡り、シベリア鉄道に乗って2日間、イルクーツクに着いた墓参団一行40名は、このあたりで死亡したであろうと思われる一帯の町や原野を訪ね、墓地があったとされる場所で慰霊・墓参の行為を繰り返してきたと言う。日本人捕虜たちの遺骸が埋められたと伝えられている場所の上に、今は街や道路が築かれたり、ロシア人の墓地が整備されていて、もう遺骨を掘り返すことも出来なくなっているところも多いと語る友人の顔には、旅の疲れとともに無念の思いが滲む。
 かつての墓参団では、シャレコウベを掘り出して、参加していた兄弟4人が「父のものです」と一様に叫び、持ち帰ってDNA鑑定をしたら見事に一致したという信じられないような話もあったという。
 今回の墓参団に同行した人の一人は、満州から引き上げる際、子供たちだけ400人ほどで帰国列車に乗せられ、途中の駅に何日も停められたり、乗り込んだ船の中で疫病が発生したりして、6ヶ月かかって日本の港にたどり着いたときは、生存者が10人もいなかったとの体験談を語ったとか。また他の参加者から、引き上げの途中に被害に遭った略奪・暴行・強姦の悲惨な目撃談を聞いたときには、耳を塞ぎたくなる衝撃であったと言う。
 友人を腕に抱き、姉の手を引いて帰国し、戦後60年間、女手ひとつで二人を育てられたお母さんは、今年90歳を越えた。痴呆症が進み、預かってもらっている施設へ友人が訪ねていっても、息子であることが解らないことが多いとか。そのお母さんに「シベリア墓参に行こうと思う」と話したら、「親父の名前を口にしてなぁ」と驚いていた。極寒の地で過酷な運命にもてあそばれて命を落とした夫のことを、忘れたことはなかったのだろう。お母さんにとっても、この世に残した最後の気がかりであり、息子から聞いた最後の親孝行の記憶が、シベリア墓参ということであるのかも知れない。


 戦後間もなく、当時ソ連と親しい関係にあった左派社会党の国会議員による視察団がシベリアの収容所を視察した。視察はすべてソ連側が準備したもので、「ソ連は抑留者を人道的に扱っている」と宣伝するためのものであったが、抑留者の生活の様子を視察し、ともに食事をとった戸叶里子衆議院議員(戦後初の女性代議士の一人)は思わず、「こんな不味いものを食べているのですか」と漏らしたという
 その社会党視察団は、過酷な状況で強制労働をさせられていた日本人抑留者から託された手紙を握りつぶし、帰国後、「とても良い環境で労働しており、食料も行き渡っている」と国会で嘘の説明を行った。抑留者たちの帰国後、虚偽の発言であったことが発覚し、問題となった。
 その後、日ソ共同宣言(1956年)をまとめた鳩山一郎は訪ソの前に、「北方領土返還が最大の課題として話題になっているが、ソ連に行く理由はそれだけではない。シベリアに抑留されているすべての日本人が、一日も早く祖国の土を踏めるようにすることが、政治の責任である。領土は逃げない、そこにある。しかし、人の命は明日をも知れないではないか」と語り、シベリア抑留問題の解決を重視する姿勢を示した。
 抑留者の帰国事業は実現したが、しかし、日本政府は抑留時の労働に対する賃金支払いすら行わず(国際法上、捕虜として抑留された国で働いた賃金は、帰国時に証明書を持ち帰れば、その捕虜の所属国が支払うことになっている。1992年以後、ロシア政府は労働証明書を発行するようになったが、日本政府は未だに賃金支払を行っていない)、満蒙開拓団民への保障や中国残留孤児への援助など、祖国としての責任は重大であるはずなのに、日本政府・厚生行政の対応の冷たさはいったいどうしたことなのだろう。(資料は『ウィキペディア(Wikipedia)』より)


 こんなことで、これから先、この国を守るために、国民は命を賭けることが出来るだろうか。政治の責任とは、かくも重いものであることに思いを致すべきだろう。


【156】 大分の教員採用汚職の教訓      2008.07.18
 

 大分の教員採用汚職が、あまりに大きなニュースになっていることに驚いています。


 こんなことで大騒ぎするなといった意味でなく、もちろん正直者が馬鹿を見るなんて世の中を許してはいけませんが、今まで教員や公務員の採用には口利きが行われていることは当り前…だったからです。
 議員枠なんていう定員枠もありましたね。だから、長年の間、教育現場でその現実を見聞きしてきた人たちは、自分の子弟や知人が採用試験を受けようとしているとき、自分のコネを存分に使って合格を働きかけたわけです。現金や商品券の授受という行為はいかにもまずかったのですが、少なくとも贈る側には後ろめたさはなかったことでしょう。今まで繰り返されてきた行為ですし、そうしなければ不利益をこうむることも知っていました。今回逮捕された当事者たちは、運が悪かったんだと思っていることでしょう。


 繰り返しますが、だから贈収賄した人たちは悪くないとか、コネを使うのは当然とか言っているわけではありません。一つ一つの事例に大騒ぎしていても意味はなく、構造的な仕組みを根本的に変えないことには、問題の解決にはならないということを指摘したいと思うのです。


 長年、教育界で生きてきたものが強いコネを得て子弟の合格を図ったことと、長年、中央官庁で生きてきたものがその地位・権力と強い先輩後輩の絆で特権的な天下りを繰り返していくことと、根は同じでしょう。むしろ天下りのほうが強権的ですし、国費を食いつぶす金額が膨大ですから、程度は悪いというべきでしょうね。

 日本の社会に巣食う、利権・癒着の構造の変革に真剣に立ち向かわないことには、大分の教員採用汚職といった不祥事は繰り返され、その都度、マスコミや人々はヤリ玉に挙げられた小悪党をヒステリックに糾弾することになります。
 その結果、末端のいつもは善良なのに魔がさしたとしか言いようのない犯罪者をひっ捕らえ、トカゲの尻尾を切り捨てて、ガス抜き沈静化が図られ、腐敗の構造は手付かずのままに残るのです。巨悪は今夜も枕を高くしてぐっすりお休み…ですね。


 どうすればよいのでしょうか。僕は民主党の回し者というわけではありませんが、今は「政権交代」がその処方箋の筆頭でしょう。自民党長期政権によって日本社会の隅々に溜まった澱(おり…底にたまった残りかす)=政権に結びついた利権・官公庁の横暴・政官財の癒着…などを掃除するには、監督政党が替わる政権交代が必要です。

 そしてもうひとつ、政党にばかり任せておかないで、国民一人ひとりが考え・発言し・行動することが望まれます。そのためには、志を同じくする人を見出して手を取り合い、発言の場を探して意見を言い、行動に参加することが、何よりも求められます。



 と、書いて公開したところ、早速にメールを貰いました。

 『 僕の周辺でも 県や市町村の職員の試験に不合格だった人が 臨時職員で採用され、いつの間にか正規職員になっているってこと、よくあります。

 親戚の子は保育士になるのに市会議員に頼んでいました。後ろめたいこともなんともなく、「頼むの当たり前やん」みたいな感覚でしたね。そのせいかどうかは判りませんが、見事採用になって、今は保育所に勤めています。

 おじさんは、「うちの娘が採用されんかったら、お前の次の当選はないぞ」と市会議員を脅していましたから、これのほうが犯罪ではないでしょうか。恐喝罪とか禁止! 』と。


 日本社会の慣習と言ってしまってはいけないのでしょうが、こうした事例は周辺に多いのではないでしょうか。頼めば合格できるのならば、頼まない手はない。人間の業や弱さを考えれば、個人の正義感に委ねて解決できる問題ではない。やはり不正や不公平を許す社会のシステム・構造を正していくことが肝要なのでしょう。
 


【155】 日本の最重要課題  公務員改革            2008.06.01
 - 基本法は今後5年間の制度改革のプログラム。必要な粘り強い監視 -


 成立が危ぶまれていた「国家公務員制度改革基本法」が、一転して自民・公明と民主党が共同修正に合意し、今国会で成立の運びとなった。
 自民党のなかの霞ヶ関の利益を代弁する勢力からは伊吹幹事長、身内の内閣にあっては改革に
最も中心的な役割を果たさなければならないはずの町村官房長官という、政策決定に大きな役割
を果たすべき面々から根強い抵抗を受け、四面楚歌の中で何とか成立に漕ぎ着けた渡辺行革相の
が、苦難続きであった改革の道筋を物語っていた。
 自ら民主党にも足を運んで調整を行なったという渡辺大臣には、さまざまな課題は残しながらも大きな一歩を踏み出したことに、心からの評価を捧げたい。これこそが、今日の日本の最重要課題であるのだから。


 今回成立する改革案の一番の眼目は、官僚の最大の関心事ともいえる省庁人事について、内閣官房に「内閣人事局」を創設して一元化するとしたことだろう。
 「省益あって国益なし」いわれてきた官僚政治(各官庁の部内利益誘導政治)を排除し、国家全体のために働くという本来の公務員の姿に、制度の面から変えていこうという狙いだ。政治が主導する国政への、重要な変更を意味している。
 現在の官僚機構は縦割り組織と仲間内人事で、強固な利益共同体になっている。自分の官庁の利権確保と自分個人の人事しか考えていない。隙あらば理屈をつけて規制を強化し、権限と予算を手にして、国民に不便と手間をかけさせることを、何とも思っていない。その結果、国家財政に大いなる無駄を生じさせ、自分たちの利益を守る省内功労人事と身分保障、時には大臣をも欺く情報の操作・非公開や歪曲が慣例化している。
 今回の改革案は、全ての官庁間にまたがっての人事を、首相と官房長官・各閣僚が協議して行うことで、縦割り行政の排除を狙っているが、さて、どうやって職員を評価し人事原案を作成していくか…。公明正大で、各省庁や官僚の機能・実力を発揮させ、改革の本義を達成するための方法については、これから詰めなければならない点が多いことも事実である。


 また、この法案が成立したことの評価として、人事を担当する役所は、政府案では人事庁となっていたのを、「肥大化させず簡素な組織にすべき」という民主の意向を汲んで、「人事局」に縮小されたと聞いているが、このように、今回の改革案が自公と民主党の協議で生まれたことにも、
政権交代可能な二大政党下における政治のあり方の一歩として、大きな意味を見出すことができると思うのである。


 これまで、給与・スト権など、公務員の労働者としての権利は、人事院勧告制度などによって代替することもあって制限されてきた。今後、総務省や人事院などが担ってきた人事行政の機能は、ほとんど内閣官房に移ることになるから、労働条件を当局との交渉で決めることができる「団体協約締結権」も、どのように付与していくかを考えなければならない。今回は対象の範囲を拡大する方向性は明確にしたけれど、中身の具体化はこれからだ。
 民主党の支持団体でもある連合からは、「団体協約締結権が認められなければ改革案に賛成できない」という注文もついたが、公益を優先しなければならない公務員の勤務に対しては、一定の歯止めはあってしかるべきであろう。基本案は、「全体像を国民に示し、開かれた自立的な労使関係制度にする」という抽象的な内容で、これもこれから具体的な検討がなされていくことになる。


 そして、公務員改革のひとつの目玉であった「天下り禁止(再就職あっせんの禁止)」について、ほとんど触れられていないのは拍子抜けだ。
 高級官僚たちが独法や特法を渡り歩き、高額の退職金を手にしていく図式は、国民の納得を得られるものではない。基本法案に天下り規制が盛り込まれていないとの民主党の批判を踏まえ、渡辺大臣は「定年の引き上げや幹部人事の一元管理による各省割拠主義の打破によって、天下りの背景になっている構造的問題を解決する」と説明している。この点もまた、今後の課題というところだ。
 政官の馴れ合いや政治家が業界の利益を図るなどと指摘されている、政治家と官僚の接触
「制限せず」とし、職員が議員と接した場合は記録を作成して、情報公開を徹底することになった。政治家自身が、疑惑を招かないよう襟を正すのが先決ということか。しかし、今さら政治家を信用しろというのは無理で無謀で無効な話…、これも今後、実効性を伴う厳密なルールをつくらなければならない。


 そして何よりの心配は、今後、基本法に基づいて、それぞれの府や省から権限を移す際「骨抜き」にされることだ。実際、総務省幹部は「制度設計の段階でいくらでも骨抜きにできる」と、とんでもないことを言っているとか。
 政治主導とは耳障りのよい言葉だが、今日までいかに政治が官僚によって貶められ、翻弄されてきたかを考えれば、政治家の無能さは今さら言うまでもない。
 基本法は、今後5年間の公務員制度改革の指標・行程を示したにすぎない。これだけで「霞が関の改革」がトントン拍子に進むわけはない。改革を具体化していくためには、個別法で一つ一つを規定して縛っていくと同時に、政治家任せにしないで、国民も改革の行方を厳しく監視していかねばならない。
 成立に意欲を燃やす担当大臣の身内である自民党と内閣から総スカンを食い、国民の声援と民主党の妥協によって誕生した、いわば鬼子とも言うべき法案である。国民が飽くことなく粘り強く改革の行方を見守らなければ、渡辺大臣の涙も、この国の将来も、蜃気楼のようにはかなく消え去ってしまうことだろう。





【154】 57歳母親を、二男が殺害 -問われる警察の責任-     2008.05.26

 
 23日午後0時40分ごろ新宿のマンション駐輪場で、派遣社員の長原陽子さん(57)が倒れているのを近所の住民が見つけ110番した。長原さんは後頭部から血を流し既に死亡していた。
 警視庁捜査1課が長原さんの次男(22)から事情を聴いたところ「マンション敷地内で母親を殴り殺害した」と認めたため24日未明、殺人容疑で逮捕した。
 調べでは、次男は以前長原さんと同居していた際、暴力をふるうことが多かった。最近は別々に暮らしており、長原さんは次男に、住んでいる場所を伝えないようにしていたという。現場のマンションには長原さんの長女が住んでおり、長原さんは22日夜に訪ねる予定だった。待ち伏せしていた次男に襲われたとみられる。次男は統合失調症だった。【毎日新聞抜粋】


 以上が、25日の毎日JPが伝えた事件のあらましだが、ここまでならば実母殺害というおぞましさながら、ひとつの事件として片付けられてしまう類(たぐい)のものだ。
 この事件には、新聞が伝えていない重大な問題点がある。すなわち「この母親は、次男に殺されるかもしれないと、今までに9回も警察に相談に行っていた」というのである。
 それでもなお、この母親の命を守れなかったというのは、警察の落ち度ではないのか。これに対する警察のコメントは、「適切に対応した」というものであった。被害者が相談を持ちかけたとおりの殺され方をしていて、それを阻止できなかった警察が「適切に対応した」などと、どこから出てくるセリフなのか。
 警察の職務とは、日本国民の生命・財産を守り、安全な社会を築くことである。犯罪を予防できない警察では、国民はどうして安全を守ればよいのか。警察がその責任を放棄するならば、国民はアメリカのように自己防衛の権利を掲げて、護衛武器の所有を主張するしかない。
 殺されないことには動かない警察を解体して、自らの職責を自覚し、鋭意努力して社会を守る警察を作り上げないことには(仕事をしない社保庁の解体につながる話だ)、悲劇はこれからも繰り返される。桶川ストーカー殺人事件で警察庁幹部が謝罪した教訓が、何ら生かされていないではないか。
 日本の官僚組織の衰退が指摘されているが、警察もまた検挙率の著しい低下が示しているように捜査能力は退化しているし、自らの保身と組織の利益ばかりに目が行き、国民の安全を保持するという責任感は脆弱化している。日本の省庁の改革とともに、警察組織の再生を図ることが強く求められる。


 この項を書いている横で、テレビが、「この母親を殺害した二男は七年前に父親も殺害していることがわかった」と伝えている。警察の不作為な過失が、第二の犯行を生んだということである。




【153】 山口2区衆院補選 民主の平岡秀夫氏が圧勝        2008.04.27
   

 午後8時1分、NHKが『平岡氏、当選確実』とテロップを流した。大河ドラマ「篤姫」のプロローグが始まったばかりで、まだ配役紹介の画面にも移らない段階での『当選確実』であった。
 開票1分での民主党候補の当選確実は、思い上がった自民党長期政権への鉄槌であり、反省の素振りもない道路族・厚生族など利権政治への決別であった。
 民意がどうであれ、自民党が崩壊しようとも、手にしている利権は手放さない…。死に物狂いの利権政治家に引きずられて、30日には「暫定税率法案」が衆議院で再可決される。法案の採決に造反する議員は出ないのか? 火種のくすぶる民主党の議員の動向と相まって政界再編の可能性を内包しながら、自民党政権の終焉が近づいている。
 

 結果を受けて、伊吹自民党幹事長は、完敗に対する反省の弁を述べるかと思いきや、「時間がなくて、国民が納得するまで十分に説明することが出来なかった」とコメントしている。何という政治オンチか。まだ、愚昧な政治に対する国民の心底からの怒りが理解できないとは…。




【152】 オリンピック聖火、長野を走る              2008.04.26


 平和の祭典「オリンピックの聖火」が、80人の警官に守られて、長野市を駆けている。沿道には圧倒的な五星紅旗の赤い波がうねり、怒号が飛び交う。見るに耐えない、聖火リレーの姿である。
 チベットは古代からの独立国であったが、清の支配を受けたものの、その後はまた独立国家としてダライ・ラマを活仏と仰ぎ、何千年もの静かな祈りと暮らしを続けてきた。1950年、そのチベット高原へ、武装した人民解放軍が軍靴の音を響かせ、武器を持たないチベット族の人々を力ずくで制圧していった。おびただしい破壊と虐殺が行われ、紅軍の機銃の的になって破壊されたチベット寺院は700箇所以上、命を失ったチベットの僧侶や市民は少なく見積もっても数万人と言われている。
 以来、チベットは中華人民共和国西方管理局の統治下におかれ、自治区とは名ばかりの管理統制が行われてきた。民生は抑圧され、東部の開発に比べてどこまでも貧困にあえぐ人々は、自治権の確立や中共からの独立を求めて、たびたび実力行使を行ってきた。1955年の騒乱では10数万人の難民が発生するなど、圧倒的な武力を持って鎮圧に乗り出す人民解放軍の前に、多くの人々が命を奪われ、祖国を追われてきた。
 1986年に起こった暴動を鎮圧したのは、当時西部管理局長としてチベット管理の責任者であった胡錦濤であり、鄧小平にその手際を認められた彼は、この事件を契機として中央政界への登竜門を開くこととなるのである。
 そして、今年3月、またもやチベットに自治・独立を掲げて市民や僧侶が蜂起した。武装警察、解放軍が出動しての鎮圧に、チベット側の発表では140人、中共側は14人が死亡したという。この死亡者の差の大きさが物語るように、中共は報道規制を敷いて、外国記者団の入国や自由な取材を認めていない。


 北京オリンピックの聖火は、アテネでの採火式会場に「チベットの人々の人権を守れ」を叫んで『国境なき記者団』のメンバーが乱入したのを皮切りに、ロンドン・パリ・ロスアンゼルスなどでの行進に、さまざまな抗議行動が繰り返されている。
 これらの抗議に対し、中共政府は「オリンピックを阻止しようとする、ダライ・ラマの指図による妨害」とコメントしているが、国民政府と中国共産党が政権を争った時代から、中華人民共和国の歴史は1600万人の処刑・粛清と語り継がれるように、血で血を洗う抗争の歴史であったことは内外に良く知られている事実である。よしんば、それは建国の痛みに伴う惨事であったと百歩を譲るとしても、民主化を求める人たちを戦車で踏み潰していった天安門事件、信仰の自由を認めない法輪功事件など、中共の人権弾圧は目に余るものがある。今も、地方の農民たちは理不尽な共産党独裁の元で金銭経済の自由は保障されず、ほとんど現金収入のない極貧状態で放置されたままであり、富を横領独占する地方役人(共産党幹部)を告訴しようとすれば、日本の江戸時代さながらの「直訴打ち首」のような裁きが待ち受けているのである。
 

 聖火リレーへの抗議・妨害は、中共が内在する前近代的な人権問題が顕在化したことを、素直に中共政府も認めて、しかるべき対応策をとるべきであろう。それを、「長野で聖火リレーが無事行われるかどうかは、ひとえに日本政府の対応にかかっているのであって、中共はこれを注意深く見守っている」などという傲慢なコメントを発していては、自力での解決は望めない。
 日本政府も、「中共の人権政策は間違っているから改めるべきだ。言論・報道の自由も保障して、外国メディアに開放して欲しい」と、欧米諸国と歩を一にして申し入れるべきである。協力すべきはして、言うことは断固言う…というのが、国際社会でのあるべき外交というものである。


 8月…、厳戒態勢の中で、真夏の祭典が開催される。参加する選手に何事もなく、平穏裡に推移することを望むものであるが、それには中共の抱える問題は余りにも大きすぎる。





【151】 国民を裏切り続けてきた政権と行政             2008.04.24
  - 解決しない年金・まやかしの暫定税率・姥捨て医療保険制度-


 洞爺湖サミットの警備訓練の様子が、テレビに映し出されていた。拳銃を持った犯人を機動隊員が制圧し、爆発物が入っていると想定されたカバンをロボットが吊り上げて戸外に運び、爆発物処理の係官が解体するという一幕であった。
 福田首相は訓練についての談話を求められ、「国民の協力でテロを防ぎ、サミットを成功させたい」と述べていたが、年金詐取・ガソリン値上げ・後期高齢者医療など、国民をないがしろにし、裏切り続けている政府に、いったい誰が協力すると思っているのだろうか。
 長期政権に胡坐をかいてきた自民党政権は、政治の要諦は民生の保護・安定にあることを忘れてしまっている。年金を満額支給されてこなかったためにどれほどの悲劇が生じているかを見ようともせず、本腰を入れて年金問題を解決しようとはしない。全面的な解明が不可能ならば、全員支給を断行するしか道はない。
 ガソリン代の値上げ…、すなわち国民の7割近くが反対している暫定税率の継続を、利権確保のために、禁じ手である衆議院の3分の2条項を使って成立させようとしている。政府民自党首脳は、再値上げを実現するために「税収が2兆6千億円不足して、地方は困り果てている」と繰り返しているが、不足している額を代替する手段を探ろうともしていない。それこそが無策…職務怠慢…無能というものだろう。明日、関東大地震級の大災害が起こっても、この政府は「財源がなく復旧作業は不可能」と手をこまねくしかないということか。
 そして後期高齢者医療制度は、人間の尊厳をなおざりにした、政治・行政の驕(おご)りというもので、この国の発展に寄与し、この国を支えてきた方々を、その最晩年に余計物扱いにする制度は、お年寄りに対する敬愛の念の微塵も感じられない、自民党政治と厚生行政の象徴のような仕組みである。そもそもこの国は、水俣病や…の公害に対する責任の取り方にしても、原爆病や中国残留孤児の救済にしても、祖国とは何だと疑わなくてはならない仕打ちを繰り返してきている。その延長線上にあるのが、この医療制度であろう。
 政治に血が通わなくなってきている。政治家のモラルが地に堕ちているからだろう。党利党略、私利私欲に走り、我が身を捨てて国や国民のために尽くすという政治家は見当たらない。政治家や省庁の癒着・利権を一層すめためにも政権交代が急がれる。




【150】  山口2区衆院補選告示  民主の大勝は必至       2008.04.19


 山口県の衆議院2区で補欠選挙が行われている。自民党の山本繁太郎(元国交省)と民主党の平岡秀夫(衆議院比例区議員)との争いで、福田政権下の初めての国政選挙として、支持率が低迷する内閣としては上昇のきっかけとしたいところだろうが、勝ち目のない戦いである。
 古賀 誠選対委員長にとっても、当然初の国政選挙で、その力量が問われていることを考えれば、無残な負け方はしたくないところだろうけれども、残念ながらなすすべもないボロ負けは目に見えている。
 全ては政府与党の日頃の無為無策政治…、いや、なすこと全てが国民の本意を裏切る政治を繰り返してきた結果であり、長年の利権政治のなれの果てであろう。
 何が何でも59兆円分の道路はつくるンじゃい…なんて、全国の土建屋とそれに連なる道路族議員のフトコロを最優先した政策を、いつまでも唯々諾々と受け入れている日本国民ではないことに、まだ気づかないのか。
 その財源に、ガソリンの値上げはいたしかたない…なんて、せっかく下がったものを衆議院の3分の2条項なんて禁じ手を使ってまで無理やり上げようとする傲慢ぶりは、自らの首を絞めていることになるのに…。『それなら代替の財源案を出せ。地方はお金が回ってこなくて困っている』なんて、人質をとって開き直る暇があったら、政府自民党だろうが、2兆6千億円ぐらいのお金ぐらい、自分で探せと言いたい。もちろん、僕にその権限を与えてくれれば、霞ヶ関を一回りでその代替金は見つけてくるけどなぁ。
 この政府与党は、国民の怒りがホントに解ってはいないのだろう。この程度の政治センスで、これまで日本の政治を担ってこれたのかと思うと、国民がよほど素晴らしかったのだと思わざるを得ないけれど、その国民を怒らせたのだから、自民党の山口2区の勝利は絶対にない! 





【149】 役人が不正を働くのは、政治がだらしないから       2008.03.07


 道路特定財源の私費的流用…、出てきましたねぇ、国土交通省所管の財団法人「公共用地補償機構」が、2003~07年度の5年間に職員旅行の費用をほぼ丸抱えし、総額約2080万円を支出していたとか。
 1回につき1泊2日9万円の研修旅行ですよ。この「公共用地補償機構」は、ガソリン税などの道路特定財源から 事業収入の大半を得ています。ガソリン税として庶民から巻き上げた税金を、彼らは自分たちのために使うことを何とも思っていない…どころか、当然だと思っている。コメントを求められて、『法律に違反しているとは思わない』と言っている。


 官僚が好き勝手なことをするのは、政治がだらしないからですね。不正や横領まがいの、今回のような税金の私的流用にしても、それを規制したり罰したりする法律を整備しようとしない。
 それはなぜかというと、政治家自身の金銭が後ろめたいから…。結局、官僚と政治家は、お互いの痛いところを隠しあう、持ちつ持たれつの関係で甘い汁を吸っている。一例として、国会議員の給与以外に支給される文書交通費は、月額100万円です。(地方議員の政務調査費は、県会議員で30~60万円、市会議員で5~55万円ほど。)


 それでは、国会議員の給与(および現物供与)はというと、国会法第35条で、「議員は、一般の国家公務員の最高の給料額よりも、少なくない歳費を受け取る」と定められている。つまり、特別職の公務員(内閣総理大臣・最高裁長官・宮内庁長官など)は別として、最も給料の高い一般公務員と同じかそれ以上の給料を受け取ることになっている。(しかも、3月31日に当選すれば、3月分をまるまる受給する。)
 実際の額はというと、月額137万5千円+ボーナス(期末手当)718万円=2368万円。そして、文書交通費が毎月100万円だから、年間1200万円。1円からの領収書提示はどうなってんだ?
 さらに 国会議員には、JRや航空会社から特殊乗車券・航空券の供与や、公務出張の場合は交通実費が支給される。夏休みに大挙して海外視察に出かけるのは、この制度を利用してであり、現地大使館はその受け入れに奔走する。もちろん、その経費は全て税金である。
 さらに、国会議員の所属する会派には、一人あたり月額65万円(年額780万円)の立法調査費と名づけられた金銭が支給される。ここまでを合計して、国会議員ひとりに対して税金から支給される額は、年間4348万円+現物供与・外遊などである。
 さらにさらに、国会議員は3人の公設秘書を公費で抱えることが出来る。3人の給与の総額はざっと2000万円、これをネコババしていた議員もいたのだから、その欲も計り知れない。とにかく、国会議員ひとりにつき6500万円ほどの税金が支給されているのである。


 さらにさらにさらに、平成6年にはリクルート事件やゼネコン汚職など頻発した国会議員の汚職事件を防ぐために、政党助成法という、何ともお手盛りな法律が制定された。企業や団体などからのひも付き献金をなくし、税金で政党活動を保障しようというのである。赤ちゃんからお年寄りまで、国民1人当たり250円を負担する計算から成り、年間317億円余の税金が、共産党を除く各政党に、議員数に応じて振り分けられるが、その使い道もほとんど制限はない。これを政界用語で、『つかみ金』と言うのだそうな。
 

 こんなお手盛り政治家たちが、公務員の乱脈振りを規制できるわけがない。役人が不正を働くのは、政治がだらしないから…。
 我が家のチビ猫の夜遊びを、僕が叱れないようなもの…(苦笑)。「アンタは どうなのさ」と言われたら、返す言葉がない(大笑)。




【148】 ガンバレ 民主党  -ガソリン値下げを巡る攻防-    2008.02.03


 3月末に期限切れとなる揮発油(ガソリン)税の暫定税率の存廃問題で、継続を図る与党と廃止を主張する野党が激突して国会審議は空転…。与野党は30日午後、「年度内に一定の結論を得るものとする」との河野洋平衆院議長と江田五月参院議長の斡旋を受け入れることで合意した。
 与党は、両院議長が30日午後、国会内で与野党6党の幹事長・書記局長に示したあっせん案の「総予算及び歳入法案の審査に当たっては徹底した審議を行ったうえで、年度内に一定の結論を得るものとする」という裁定内容について、河野議長が口頭で「従来の審査の慣例に従う趣旨」と説明。与党はこの発言で租税特措法改正案の年度内採決は約束されたと判断、あっせんを受け入れた。年度内に参院で採決されれば、仮に否決でも衆院で3分の2の多数で再可決し暫定税率は維持できるためだ。
 これに対して、民主党の鳩山幹事長は「まだ、ガソリンの値下げが行われないということではない」と説明しているが、野党各党の足並みは、社民党が「環境税に変える」などと主張して、微妙にずれている。
 各党によって議長斡旋の解釈はまちまちで、「一定の結論」のつけ方は不透明である。


 そもそも「つなぎ法案」は、揮発油等暫定税率延長法案が参議院での可決成立が行われないことを前提として提出されたもので、参議院の存在を無視した邪道・奇策である。こんなことがまかり通るのならば、全ての法案は衆議院の3分の2による再議決を前提とすればよいのであって、参議院は要らない。
 この「つなぎ法案」の撤回と国会審議の年度内決着(どのような決着かは別にして)を天秤にかけて、民主党などが議長斡旋を呑んだのは、政府・与党の策にはまったと言わねばならない。民主党は法案を取り下げさせたと胸を張るが、「つなぎ法案」はもともとなかったものである。民主党が国会審議を進める材料は「揮発油等暫定税率延長法案」の廃止・修正であって、これを前提として「年度内決着を図る」とするべきだろう。


 日本経済が閉塞状態にあえぎ、日用品の値上げラッシュに音をあげている国民生活を顧みれば、ここでのガソリン価格の引き下げは、喫緊の政治課題である。地方は四苦八苦、中小企業の倒産件数は相変わらず多く、歴然とした格差社会が顕在化してきていて、庶民の生活は疲弊しているのだ。
 長年の間、政権の座に胡坐(あぐら)をかいてきた政府・自民党には、ここでガソリン価格を引き下げるといった政治センスはもはやない。半世紀以上も政権を保ち続け、国費をほしいままに垂れ流してきた面々の耳には、全国民の4分の3が暫定税率の廃止を求めているのに、その声は届かず、それを聞こうとする姿勢さえ失われている。
 政府・与党が、国民の圧倒的な反対を押し切ってまで、暫定法案を10年延長などという暴挙に出て、死守しようというのは、道路利権に関係する族議員・国交省・地方自治体・建設業界の強い要請以外の何ものでもない。自民党道路部会で建設への絵を描き、国交省は建設発注の権限と予算を握り、地方はそのおこぼれに預かり、業界へは多額の工事費が落とされて、その何割かが政界にキックバックされていくといういつもの仕組みだ。その利権集団に、総裁選で借りがあり、手足を操られている福田首相は、暫定税率延長へ恥も外聞もなく邁進しなければならないという図式である。
 しかし、道路特定財源を一般会計へ組み入れていくことは、小泉・安倍内閣ですでに決定していたことではないか。今さら、道路建設だけに使うと縛りをかけるなど、時代を逆行させる愚行だと非難されてしかるべきであろう。


 社保庁の例を挙げるまでもなく、公費・税金・国費の動くところ利権が絡む。自民党長期政権の澱みに溜まったヘドロなのだろうが、今回問題になっている道路特定財源にも、目的外に流用したり、職員の福利厚生に名を借りた私的ともいえる散財が行われている。この無駄遣いについては、ここで説明するより、年金問題追求で知られる天木直人氏のブログのこのページに綴られているので、参照いただきたい。
 それを見ると、金の動くところ必ず利権がついて回っていること、官僚たちの巧妙なこと、全省庁で同じことが行われていることが判るというもの…。よくぞこれだけ、悪知恵が回るものだ。しかも、罰則が極めてあいまい。これでは、悪いことをするなと言うほうが無理というものか。官僚の乱れを糺すものは、政治の姿勢である。政治が襟を正すことを、強く求めたい。


 世論調査の結果、全国民の73%…4分の3が望んでいることを見ても、民主党は『ガソリン値下げ』のスローガンを、断固掲げて国民の先頭に立つことである。
 「目先の利益誘導と取られかねない」とか、「国会運営は民主党にも責任がある」などと、せっかく正面突破の好材料を持ちながら、自分のほうから無用の物分りのよさを発揮して躊躇・後退していては、国民の支持を雲散霧消させてしまう。
 全国の自治体の長(知事・市長村長)が暫定税率廃止には反対と口を揃えるのは当然で、ここで賛成と言えば、国からの交付金は削減、あるいは停止されてしまうし、地元へも道路利権を誘導できないから、口が裂けても反対とは言えないわけだ。しかし、自治体の長としては、ひも付きでない一般から、「何に使ってもよろしい」と交付金を受け取るのが一番ありがたいのではないか。それが、地方自治というものである。


 民主党に提言したい。①現在、建設予定に登っている全国の道路を、必要度に応じて「建設」・「予定」・「暫定」の3段階に分け、 ②それぞれを建設したときの試算を行い、 ③そのための金額を提示すべきである。民主党が発表した「道路特定財源の改革ビジョン」に、明確な数字をつけて欲しいと思う。
 そして、④政府・省庁のムダを具体的に示し、それによって削減できる金額を計算して提示することである。1月28日の委員会質疑で、細野豪志衆院議員は特別会計の積立などの余剰金(いわゆる霞ヶ関埋蔵金)は96兆円に上ると福田首相に迫り、政府は「余剰金を返納させる」ことを検討すると発表した。消費税の1%が2,5兆円だから、その40年分である。
 現在の国政には不正やムダが無数にあることを、しっかりと国民にアピールすべきである。例えば、今回 政府が見直しを決めた独立法人の内部保留も、毎年余ったお金を国に返さずに、自分たちの金庫に溜め込んできたもの。また、国土交通省の随意契約は99,9%の金額で成立しているというから、納入業者の利益は莫大で、当然その裏側では内部保留・還流・汚職…が行われている。
 国交省だけでなく、日本の官庁は地方も含めてどこでもこの体質だから、民主党政権が実現したらこれを根本的に改革すると宣言し、政治から利権とムダを排除すれば、消費税を上げず、赤字国債の発行をしなくても歳費はまかなえると宣言するべきであろう。


 今回の暫定税率の継続に賛成する人は、『財源不足に陥る』という政府の脅しを真に受けているのだろう。この国は、政府・与党と中央官庁が組んで、平気で国民を騙す国だということに、まだ気がつかないのだろうか。私が以前に書いた「消費税10%は国民を欺く大増税」をもう一度読んで欲しい。
 ガソリン価格を下げて2,5兆円が入ってこないとなると、政府は大騒ぎして、地方への交付金をストップする暴挙に出るかもしれない。しかし、その2,5兆円が景気後退の税収減で生じたものであれば、当然その手当てを講じることだろう。2,5兆円の手当てなど、国費にしてみればいかようにでもなる金額である。得意の打ち出の小槌を振って、赤字国債をちょっぴり上乗せするか、特別会計から抜き出してくるか。この政府・与党では、節約で捻出することは毛頭考えないだろうから…。


 今から考えれば、民主党の取るべき道はただひとつ…、「つなぎ法案」を自民党に衆議院3分の2で再議決させ、そして、暫定税率10年延長も再議決させるべきであった。その間に、道路特定財源(をはじめとする税金・国費)がいかに無駄遣いされてきているかを丁寧に白日の下にさらしていけば、国民の怒りは爆発…。そこへ、数字を入れた説得力のある民主党案を提示すれば、流れは一挙に民主党へであった。
 それを、議長斡旋などという自民党の筋書きに乗せられて「和解」してしまったのは、一種の国民への裏切り…。
 これで、ガソリン代は下がらず、暫定税率10年延長が確定してしまったら、民主党に対する信頼は一挙に幻影であったことが露呈してしまう。やっぱりこんな連中には、政権は任せられないと…。
 これからは、なぜそうしなければならないかという理由を国民に詳しく説明しながら、参議院での審議を引き伸ばし、暫定税率10年延長を衆議院で再決議させることだ。
 国民は、「和解」に応じてガソリンの値下げを実現できなかったとしたら、その民主党を『国民への裏切り者』と断じるだろうが、暫定税率の矛盾を指摘して参議院決議を断固拒否し、期限切れに追い込む民主党を、『国会審議(議長調停)への裏切り者』とは決して呼ばない。




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