2月4日(木) 朝青龍 引退
品行方正の朝青龍なんて、誰も見たくないだろう。時間いっぱいになると、研ぎ澄まされた闘争心をあからさまにして相手を圧倒し、どこまでも攻め続けて獲物をしとめるという、そのスタイルこそが朝青龍の真骨頂であったはずである。
彼が、闘争の権化となって勝ち続けなければ、コロコロ負ける弱い横綱で相撲人気は維持できただろうか。「相撲は日本の国技なんだから」なんて、誰が決めたんだ。所詮は興行…、面白くてナンボのものである。だから力士のごっつあん体質も許されてきたのだ。その角界に、今さら心技体…とか、相撲道…とかを求めたところで、八百長が横行し、たかり体質できた世界が、世間の模範になるわけがない。引退するなら、相撲協会の理事全員だろう。
2月4日(木) 小沢幹事長 不起訴 −筋書き通りの落しどころ−
東京地検特捜部は、今日、小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る事件で、政治資金規正法違反(虚偽記入)で告発されていた小沢氏を、予想通り、嫌疑不十分で不起訴とすることを発表した。筋書き通りの落としどころに落ち着いたということだ。
検察としては、対決姿勢を示した小沢一郎に、そのまま不問にしては沽券に関わり、国民にもその弱腰を言い訳することができない状況であった。そこで、陸山会の事務担当者だった石川知裕衆院議員、大久保隆規第1秘書、石川容疑者の後任の事務担当者だった池田光智元私設秘書を逮捕し、国民の納得を取り付ける形で小沢一郎の近辺に迫った。
しかし、筋書きはここまで…。検察はいつでもあなたの巨悪を挙げることができるのですよ…と小沢一郎に知らしめて、取調べの可視化をはじめとして検察改革を進めようとする動きを牽制し、参考人尋問で引っ張ってその対決姿勢を牽制したうえで、小沢本人については石川らとの共謀が十分に立証できていないとして、嫌疑不十分で不起訴としたのである。
『特捜部は、同会が04年10月に東京都世田谷区深沢の土地代に充てた4億円について、小沢氏からの「借入金」だったと認定。石川容疑者が取り調べの中で、この4億円について、同会の04年分の政治資金収支報告書に記載しないことを小沢氏に報告し、了承を得たと供述した。
このため特捜部は、小沢氏が虚偽記入に関与している疑いがあるとみて捜査したが、起訴しなかった。佐久間達哉特捜部長は記者会見で「有罪を得るだけの証拠が足りなかった」と説明した』(2/4 読売新聞) この説明で、納得するものはいないだろう。明らかに、小沢一郎は了承し関与しているではないか。
しかも、具体的な供述も得られている水谷建設などからの献金について、検察は一言も触れていない。これも、西松献金と同じで、逮捕されるのは秘書までか。
検察は常に正義の代弁者であるはずだったが、「
告発! 検察の裏ガネ作り」に指摘されている通り、この組織も官僚集団以外の何者でもない。田中角栄元首相を逮捕したのは、当時の首相が三木武夫で、そのGOサインを得たからこそできたことであった。鳩山政権下での小沢一郎の逮捕は、夢のまた夢である。
これで、小沢一郎の無罪は検察が保障してくれたことになった。そして、民主党政権は『小沢疑惑』という不発弾を質に取られていて、検察のふところへは手を突っ込まない。
2月3日(水) ユリウス・カエサル その女と金
今、塩野七生著による「ローマ人の物語」を読んでいる。単行本は分厚いものが何巻かあって、興味は津々ながら、ちょっと重すぎる感じがして手に取るのをためらっていた。文庫本になってから、各巻はコンパクトにまとめられていて、1巻は1〜2日ほどで読んでしまうことができる。現在、第8巻「ユリウス・カエサル ルビコン以前 上」まで読んだところだ。
筆者自身、古今の人物の中で最も魅力ある男と書いているが、カエサルについては文庫本で第8巻から13巻まで全6冊を充てている。39才という、当時としては異例に遅くローマ政界に登場したカエサルという男の魅力について、『彼について調べ始める古今の史家や研究家は、一様にカエサルに魅了されてしまう』とも書いている。
その人間像を浮かび上がらせるために挙げているのが、「
カエサルはなぜあれほども女にモテ、しかもその女たちの誰一人からも恨まれなかったのか」ということと、「借金を苦にする生真面目な性格のカテリーナ(「借金帳消し」を公約に掲げて執政官に立候補するも落選し、のちにクーデターを画策したとして死刑になった元老院議員)ならば、クーデターを百回は起こさなければならなかったろう天文学的な借金の額」だ。
カエサルの女たらしは有名で、そのお相手は「元老院議員で彼のパトロンでもあった
クラッススの妻テウトリア。オリエントで戦争を指揮している将軍の留守宅を守らねばならないはずの、ポンペイウス夫人のムチア。ボンベイウスの副将だから同じく出征中の、ガビニウスの妻のロリア。…などなど、元老院議員の三分の一が、カエサルに『寝取られた』という史家もいる。そして、カエサルの愛人たちの中でも最も有名なのは、後年のクレオパトラを別にすれば、セルヴイーリア」であろう。後にカエサル暗殺の首謀者になるブルータスの母セルヴイーリアは、再婚話を断わってまで、カエサルの愛人でいるほうを選んだのであった。
これらの女たちは、いずれもローマの上流社会に属するわけだから、言ってみれば、美容院やブティックで始終顔を合わせる仲である。それなのに、嫉妬もなくつかみ合いもなく、列をつくつて自分の順番がくるのを待つかのように、おとなしく次々と愛人になったのだから、カエサルの実力には驚嘆させられる。カエサル自身も、それを隠そうとはせず、彼女たちとの仲は半ば公然で、その父親や夫たちも当然知っている関係であった。
さらに、
モテるだけならば、当時も剣闘士だって俳優だってモテたのだから、カエサルの人間像を物語る材料としては希薄だけれど、後世の史家や研究者が敬意と羨望をもって彼を評するのは、カエサルが女たちの誰一人からも恨まれなかったという一事であろう。
醜聞(スキャンダル)は、女が怒ったときに生まれる。では、なぜ女は怒るのか。それに対処するにはどうすればよいのか。…、それを知るには、この「ローマ人の物語」を読まなくてはならない。ここで安易に解決方法を明かしては、筆者に叱られてしまう(笑)。
莫大な借金は、幾らぐらいあったのか。なぜあれほども莫大な額の借金をしたのかよりも、なぜあれほども莫大な額の借金ができたのかも、興味深いことだろう。
カエサルがセルヴイーリアに贈ったという大粒の真珠は、パラティーノの丘に立つ豪邸が2つは買える金額だったと噂されている。しかし、カエサル自らが『内乱記』で書いている箇所を見ると、「そこで私は、大隊長や百人隊長たちから金を借り、それを兵士たち全員にボーナスとして与えた。これは、一石二鳥の効果をもたらした。指揮官たちは自分の金が無に帰さないためにもよく働いたし、総司令官の気前の良さに感激した兵士たちは仝精神を投入して敢闘したからである」とある。
女たちへの贈物など、所詮は豪邸何軒分ぐらいかの、たいした額ではない。たいした額になった理由は、彼が街道の修復や剣闘試合の主催や選挙運動などに、私費を使ったからである。だが、それには大盤振舞いしたカエサルも、自分の資産を増やすことには使っていない。最高神祇官となって公邸が与えられるまでは、住まいは生まれた下町の手狭な家のままだったし、自分の墓にさえ関心がなかったようである。事実、彼の墓はない。
どこから、そんな莫大な借金を引き出してきたのか…。ローマ最大の資産家クラッスス(彼の財産は国家予算の半分ほどあった)が、カエサルのパトロンであったのだ。なぜ、それほどの金を貸したのか。ある時期を過ぎたら、貸した金の額が多すぎて、クラッススはカエサルを潰すわけにはいかなくなってしまったからである。
締めくくりを、塩野七生はこう書いている。「後世の研究者も書いている。ユリウス・カエサルは、他人の金で革命をやってのけた…と。
債権者に首根っ子を押さえられて、返せ返せと言われているようでは、国家大改造を最終日標にした権力への驀進などはやれるものではないのである」と。
2月1日(月) シルクロード(絲綢之路)
1980年からNHKと中国中央電視台の共同制作で放映された「NHK特集 シルクロード」のビデオを引っ張り出してきて見ている。ビデオからDVDにダビングしながら…。
喜多郎の音楽、石坂浩二のナレーションで進行していく映像は、30年を経ている現在でも、全く色褪せていない。2005年に「新シルクロード」として、新しい企画の映像が放映されているが、その25年前に製作された第1作目のほうが、より興味深く見ることができるのは、製作者の意気込みの問題だろうか。2作目は、やはり二番煎じなのか。
当時の僕は真剣に、中国の長安(西安)からローマまで、車で走ってやろうと考えていた。故障や燃料の補給の必要があるから、少なくとも2台以上で行かなくてはならない。治安の良くない地域もあるので、それなりの準備も必要だし…などと考えていたのだが、現在、この道は、中国西域(新疆ウイグル地区)の暴動やアフガニスタンの政情不安などの問題が勃発して、とても個人が観光気分で走り抜けることのできる道ではなくなっている。
それでも、2000年も前に、若き衛青とその甥の霍去病の両将軍が百万の漢の兵士を率いて匈奴を追い、李広利が大宛(現/中央アジアのフェルガナ地方)を征服して汗血馬を獲得したこの土地は、ロマンがいっぱい…。唐代にはマルコ・ポーロがここを旅して「東方見聞録」を著わしているし、玄奘三蔵が仏典を求めて西への道をたどったのも、この道である。
『 … 文明の十字路・熱砂のオアシス・流砂の道・さまよえる湖ロプノール 』…、何かが呼んでいるような、不思議な魅力に溢れた地域である。インターネットにはウズベキスタンやトルクメニスタンへ旅行した人のブログもたくさん掲載されているから、全線を走り抜けるのは無理でも、それなりの旅はできそうである。
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