【132】 
「カラマーゾフの兄弟」 第3巻   
       (ドフトエフスキー、亀山郁夫訳、光文社文庫)        2008.02.11


 第3巻は「起承転結」の転…。物語は一転して大事件勃発…、すなわちカラマーゾフ家の父親フョードルが殺害される。さて、その犯人は…? 物語は、いよいよクライマックスへと向かう。


 『グルーシェニカへの愛を全うし、新しい生活を築くために、ミーチャ(カラマーゾフ家の長男)はまとまった金が必要であった。グルーシェニカへ邪まな恋心を抱く父親フョードルの家を見張っていたミーチャは、出会いがしらに下男のグリゴーリーに大怪我を負わせてしまうが、グルーシェニカがここには居ないことを知り、塀を越えて彼女のもとへと急いだ。
 モークロエの村でグルーシェニカと会ったミーシャの手には、なぜか大金が握られていた。ミーシャへの愛に目覚めたグルーシェニカは、「私を連れて行って、どこか遠くに。… 私はもうあなたの恋人なんかにならない、あなたに忠実な女になるの、あんたの奴隷になるの。」(と、ドストエフスキーは泣かせるセリフを吐かせる。)
 そこへ、警察署長、検事、予審判事がやってくる。「あなたの父君フョールドさんが殺害された姿で発見されました。お家の下男のグリゴーリーがあなたの姿を見ていますし、一昨日には無一文で金策に走っていたあなたは、今日、大金を手にしてここに現れています」。
 ミーシャはそのまま拘束され、拘置所へ護送されていく。その背中にグルーシェニカが叫ぶ、「私はあんたのものって言ったわね。これからもあんたのものよ、一生あんたについていくわ、どこに送られることになっても」。(と、また泣かす。… ちょっと男の側から見た名セリフばかりを取り上げすぎかな… 苦笑。) 』


 活字だけを追うだけにしておけばいいのに、中身の一つ一つに首を突っ込んでしまう、僕の性癖は如何ともしがたい(苦笑)。
 例えば、「信仰とは何ぞや」と問う「大審問官の章」では、『獣にまたがり、両手に神秘を握り締めている女』とは、『黙示録』第17章以下に登場する大淫婦バビロンを指している…と書かれていると、「黙示録」・「大淫婦バビロン」を調べずにはおれない。
 結果、「ヨハネの黙示録」の中に、「大淫婦バビロン」…堕落しきった女性として暗喩されているものの正体は、キリスト教を迫害したローマ帝国であり、彼女が乗る7つの首の獣はローマ帝国の7人の皇帝を示している…ことが解った。
 40年前に読んだときには見過ごしてきたことが、今は素通りできないのは、進歩なのだろうか、人生が深まったのか。それとも、何にでもこだわる頑固さが、歳とともに嵩じたのか(苦笑)。


 夕方、ひろちゃんから、「 『ドストエフスキーを亀山郁夫が読み解く』という放送があったよ。番組名は、「知るを楽しむ この人この世界 -亀山郁夫 悲劇のロシア-私が見たのはNHK教育3で、昨日の日曜日の朝10時から10時25分まででしたが、調べたら本放送はNHK教育2で月曜…、だから今日の夜10:25〜10:50分まで。今夜は2回目の「白痴」だよ。」とのメールが届いた。
 早速ビデオに録って、先刻見た。
「白痴」は、純真な若い公爵レフ・ムイシュキンと暗い情熱を秘めた大資産家ロゴージン、そして謎の生い立ちを持つ美女ナターシャの三角関係の物語。亀山郁夫は放送の中で、「この小説は、愛を性的なものと捉えれば、入り口も出口もない物語となるが、精神的なものだとすれば、無限の広がりを持つ」のだと説いていた。ムイシュキンに魅(ひ)かれながら、自らの過去や屈折した感情のままにロゴージンに身を任せるナターシャ。それでもムイシュキンとの結婚に漕ぎ着けるのだが…。
 重いなぁ、ドストエフスキーは。40年前に「カラマーゾフの兄弟」を読んだときは、ややこしい小説だと思ったけれど、今は重くて仕方がない、人生とは何ぞや…と。


 と、いいながら、第4巻へいくわけだけれど、1〜3巻は500ページぐらいなのに、第4巻はなんと700ページもある。もう一度、気合いを入れ直そう。


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