【84】黒部・立山アルペンルート  その2             2005.07.17


 黒部16℃  立山(室堂)11.5℃  −雲上の別天地−   その1  


7月17日(日)    黒部 〜 立山(室堂)〜 松本市内


 ホテル … 扇沢駐車場 … (トロリーバス) … 黒部ダム … (ケーブルカー)
 … 黒部平 … (ロープウェイ) … 大観峰 … (トロリーバス) … 室堂平


 いつもは朝まるで弱い章くんだけれど、旅先ではなぜか早起大町アルペンルート。黒部の山々が見えてきました。きだ。この日も、7時起床(別に早くないって…?)。
 朝から、異郷の地で納得のいくモーニングサービスの店を探すのは至難の業であろうという配慮のもと、ホテルに朝食だけは頼んでおいた。素泊まり8500円、朝食付き9600円だから、1100円が朝食代だ。創作料理と銘打った朝食は、地場産物や新鮮な魚介類など素材にまでこだわった自信の逸品というだけあって、美味しくいただけたが、パン党の章くんには、和食であったことだけが残念…。
 宿をあとにしたのが、午前8時。アートロードを北にとり、大町温泉郷を横手に見て大町アルペンラインに入る。眼前に頭を雲に隠した、黒部の山々が迫る。      【拡大】
大混雑の扇沢駐車場 約45分ほど走って、扇沢駐車場に着いた。長野県側から黒部へ入るものは皆、ここへ車を置いてトロリーバスに乗りかえるのだ。まだ朝の9時前だから第3駐車場が空いていて、章くんは階段を1つ上がっただけでトロリーバスの駅に出たが、車をロックして歩き出したときにはこの駐車場は満車になり、あとの車は100mほど下の駐車場へ回されていた。


 ここ扇沢駅の出札窓口で、立山室堂までの往復乗車券を買う。窓口の女の子に、「今日はたいへん混み合っていますので、下りの乗り物がたいへん込み合います。待ち時間がかなり生じると思いますので、まず室堂平まで登ってしまって、あと下りながら乗り物の時間を見て各ポイントを見物してください」とご注意をいただいた。その章くんの関電トンネル内を走るトロリーバスルート(および発着時刻)と運賃は、「扇沢駅(9:30)…(トンネル内トロリーバス、16分)…(9:46)黒部ダム駅(10:10)…(ケーブルカー、5分)…(10:15)黒部平駅(10:30)…(ロープウェイ、7分)…(10:37)大観峰駅(10:45)…(トンネル内トロリーバス、10分)…(10:55)立山室堂駅」の往復で、8500円である。
 午前9時30分発のトロリーバスに乗って出発、全長5.4Kmの地下トンネルを15分で抜けて黒部ダム駅に着く。この全線地下トンネル方式のバス道は、黒四ダム建設の際の工事用資材搬送のため、関西電力が社運を賭けてと形容される決意を持って掘削した隧道である。トンネル工事は困難を極め、のちに製作された「黒部の太陽」にもあったように、黒部大破砕帯といわれる難所に遭遇したときには、80mを掘り進むのに7ヶ月の歳月を要する難工事であったという。到着した駅も、もちろん地中駅…。太陽にさらされることのない黒部の地下の空気は、ひんやりと肌に冷たい。
黒部ダム駅。地下駅である トンネル内で右へ進むと、約100段の階段を上り下りして、ダムの壁面を目の前にする展望台に出るとか。しかし、先を急ぐようにと言われて冷気に満ちたトンネルを抜けるとダムの上。眼前にダム湖が広がる。いる章くんは左へ折れて、平坦なトンネル内の道を進むと、やがて前が開けて、アーチ型ダムの上面に出た.       【拡大】

 目の前に後立山連峰の雄姿が広がっている。頂は、雲の中に隠れているが、今日の黒部の天気予報は「曇りのち晴れ」。到着する頃には、お山も晴れるさ…と、章くんは相変わらず楽観的である。山肌に深く刻まれた幾筋もの山襞には、溶けきらない雪が白く光る。ダムの堤を対岸へ渡れば、黒部平へ登るケーブルカーの乗り場だ。黒部湖。正面にケーブルの駅が見える。 【拡大】
 湖面を黒部湖の遊覧船「ガルベ」が行く。『目の前に迫る北アルプスを見あげながら、雄大に広がる黒部の大自然を気軽に満喫…。平均標高1448mの黒部湖を30分かけ一周するガルベは、日本で最も高所を航行する遊覧船。黒部湖を奥へ進むにつれ、右舷には屏風のように連なる立山連峰が、左舷には天を衝くスバリ岳や針ノ木岳の雄姿が、また正面から赤牛岳が迫り寄り、深く大きい黒部峡谷のまん中にいる自分が実感できる。美しく移ろう四季の湖畔の原生林を眺めながらの遊覧船体験は、まさに心地よいアルペンクルーズです』と、パンフレットにある。
 今日も満々とコバルトブルーの水を湛えている黒部湖は、先日来の大雨のせいか、たくさん観光放水をするダムの流木を浮かべている。たくさんの見物客を迎えて、大壁面からは盛んに観光放水が行われていた。轟音を立てて流れ落ちる水流の先端は砕け、飛沫が陽光を受けて虹色に輝いている。

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 遊覧船上で結婚式を挙げるカップルがいた。純白のタキシードとウエディングドレスに身を包んだ新郎新結婚式を挙げるカップル婦は、まさに黒部の夏に涼やかさをもたらす雪か…咲き匂う白百合か…といった装いである。山で知り合ったカップルなのだろうか…と、二人に馳せる思いもどこかロマンティックである。永久(とわ)の幸せを願いつつ、章くんはケーブルカーの駅へ急いだ。


 ここ黒部湖駅(1450m…多分)からは、ケーブルカーで黒部平(1850m…多分)まで400mを5分で登る。
黒部湖〜黒部平のトロッコ
 たいへんな人出で、ケーブルカーに乗るのにも2回待ちである。プァ〜ンと警笛を鳴らして、可愛い電車が人々が待ち構えるホームへ入ってきた。最大斜度45度(多分)もある急傾斜を、こんなにたくさんの人を乗せてはたして登るのだろうか。【拡大】
 それが登った。20分間隔運行を正しく守って、きっちり5分で400mの高低差を往復している。可愛くても偉い!
黒部平から立山を見上げる

 黒部平から見上げる、後立山連峰は雄大だ。深く刻み込まれた山ひだの間に、今なお大きな雪渓が残り、眼前に迫ってくる。      【拡大】
 黒部湖からここまでのケーブルカーは、可愛いけれど合計130人ほどの人々を一度に運ぶ。ここから立山のほぼ8合目にあたる大観峰(2350m…多分)までへと登るロープウェイの定員は70人。
 当然、ここで待ち時間が生じる。黒部湖駅でケーブルに乗るときに番号券を渡されていて、ロープウェイの順番が来るとその番号を呼んでくれるのだ。
黒部平のニッコウキスゲ 待ち時間の間に、展望台から周囲のパノラマを眺め、茶店で山菜おこわの小むすびをバクついたあと、あたりを歩いてみた。ニッコウキスゲの淡い黄色の花が満開で、足元に揺れていた。
 やがてテレビモニターに章くんたちの整理券番号が映し出され、係りのおじさんがマイクで呼んでいる。待つことしばし…、まだ10時過ぎのこの時間は、下って来る客はほと黒部平〜大観峰のゴンドラんどいない。乗務員だけを乗せた箱が、ホームに近づくと急にスピードを落とし、慎重すぎるほどのゆっくりしたスピードでホームに着いた。
 このゴンドラは、立山の東壁を背に大観峰と黒部平を7分で結ぶ、延長1700m、標高差 500mのロープウェイ。途中に1本の支柱もない、日本最長のワンスパーン・ロープウェイで、箱の中から眺める眺望は素晴らしく、まさに「動く展望台」だ。 




  ↑ 大観峰ロープウェイの駅から 黒部平・黒部ダム・ダム湖方面を望む。
    左の高峰は鹿島槍岳2670m、正面は赤沢岳2675m、右の高峰は鉢の木岳2821m


 
 大観峰駅は立山の東側斜面に穿(うが)たれた、立山登山のための一穴である。切り立った斜面に立つ駅の展望台からの眺望は雄大だ。眼下にコバルト色の黒部湖が輝き、その彼方には今なお厳冬期には人が踏み入れることを許さない、鉢の木・赤沢・鹿島槍などの高峰が聳立している。立山トロリーバス
 ここからは、立山主峰の雄山の真下を通って室堂平へ抜けるトンネルが掘られていて、地中を無公害トロリーバスが走る。日本最高箇所を走るこのバスは、立山の表と裏を10分で結ぶ。
 その日の人出を計算して台数を用意するのだろうか、バスは一度に7〜8台が連なってくる。ロープウェイから降りた客は、このバスに乗れないということはない。座れるか、立ったままの地下行となるかどうかは、そのときの運次第ということになるが、運が悪くても10分である。
 トンネルの半ばで道が広がっている箇所があり、上り下りのバスはここで対向する。窓の外に黄色の行燈灯があって、「立山直下」と書いてある。立山の主峰雄山(3003m)の真下ということなのだろう。とすると、ここは地下500mということになる。
 黒部立山アルペンルートと呼ばれるこのルートは、その全線が中部山岳国立公園内にあるため、環境保全に万全の(?)配慮がなされているという。だから、このトンネルも山肌を削る工事は避けて、地中を貫徹する形になった。このトンネル工事も、いわゆる立山破水帯といわれる難所に遭遇し、溢れる出水との戦いであったとか。


 その3へつづく


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