その3
ラスベガス・ゴルフ紀行
11月16日(日) 岩山と大豪邸 リオ・セコGC
リオ・セコ 6番 雑誌などによく登場するホールだ
 6時30分、目覚ましの音で転がり起きて、夢遊病者のように朝食を済ませ、7時10分、タクシーに乗った。
 今日のコースは、ラスベガスの市街から至近の「リオ・セコGC」。タクシーで20分、25j+チップ5j。クラブハウスはスペイン風のかわいい白とピンクのツートンだ。
 今日の同伴者はシアトルの近くのエベレッテという町から来たというカーティスさん兄弟、45歳前後か。2人とも、なかなかにゴルフは上手い。「冬はスキーばかりやっている。ゴルフよりもスキーの方が得意なんだ」とか。「家族で来ていて、カミさんと子どもたちはホテル見物やプールで遊んでいる」。でも、今朝は10℃ぐらい。昼間でも20℃そこそこだろうから、プールって寒いんじゃないの? 「じゃぁ、適当にやってるだろう。ラスベガスまで来て、女房・子どもの面倒を見てられっか」と、亭主のカガミのようなことを言っていた。
 周囲を大豪邸が取り巻くこのコースは、最近までハイローラー(金づかいの荒い人.金にあかせたぜいたくな生活をする人)ゲスト向けの超高級ゴルフコースとされていたとのことだが、近年、周辺にゴルフ場が増えて、系列ホテルの宿泊者以外でもプレイできるようになった。でも、日曜日のこの日は、プレーフィが200ドル。まぁ、ここは世界から観光客が集まるリゾート地で、今はハイシーズン。日本でいえば、秋の箱根か。そういえば、太平洋クラブ御殿場コースは、平日でプレーフィ28000円、キャディフィ5000円だったなぁ。日本の方が悪どいぞ。でも、今晩、カジノで返してもらうから、よしとしよう!
 アメリカゴルフ界における伝説の設計者ロバート・トレント・ジョーンズの次男リース・ジョーンズが、このリオセコのデザイナーで、バックティからの距離7337Yパー72、コースレートは75.4。翔くんたちが回った青マークからは6946Y、レート74.0だ。
 ブッチハーモンのゴルフスクールがこのコースの脇にあり、タイガー・ウッズもトーナメントの合間にしばしばここにやって来るとか。コースレコードの64はタイガーの記録だ。
 1番は358Y(青)パー4。広くて真っ直ぐなホールだが、章くん、ちょっとビビッて3オン2パットのボギーでスタート。睡眠不足リオ・セコ 2番 強烈な打ち下ろしの長〜いミドルがたたっているのか。
 2番は435Y、長くてティショットは強烈な打ち下ろし。右へ曲がっていて、フェアウエイに対して斜めに打ち出していくから飛距離と方向を合わさなくてはならない。コースの左右は荒地で、フェアウエイまで届かなかったり、飛びすぎて突き抜ければアンプレアブルだ。章くん、またまたビビッてスライス。ボールはフェアウエイに届かない。アンプレアブルの打ち直しでトリプルボギー。難関コースの牙にかまれた。リオ・セッコ 3番 岩山と豪邸
 3番は打ち上げの188Yパー3。左は急斜面だから、右手の丘の上にある大豪邸へ向いて、大きめに2アイアンで打ったら、右奥のバンカーへ。ここからは、急な左足下がりのショットを強いられ、ヒビッている章くんはバンカー内で2回叩いた。3オン2パットのダボ。  
 アウトは広大な岩場越えのショットや断崖絶壁からの打ち下ろしなど、壮絶かつ厳しいホールの連続で、睡眠不足でヨレヨレの章くんは49。カーティス兄43、弟41。コテンパにやられて、この惨敗ぶりは日本の名折れだ。
リオ・セッコ 9番のフェアウエイからラはスベガスの市街がよく見える
← 9番のフェアウエイからは、大豪邸の向こうに、ラスベガスの市街が望める

 このままでは一体どうなるんだろう、18番までもつのかなと心配しつつインへ入ると、10番以降は比較的なだらかでゆったりしたホールが続き、フェアウエイの外側もラフが広がっていて、すぐに岩山という厳しさではなかったリオ・セッコ 16番 池越えのパー3
 それでも10番446Y、11番460Y、18番450Yといったパー4はセカンドが届かない。
リオ・セッコ 18番 砂漠の中に浮かぶグリーン
  16番199Y.大きな池越えのパー3→

← 18番450Yパー4。セカンドは210Yほど残り、グリーンは荒野にポツリと浮かんでいる。乗るわけがない。

 日本を背負っての9ホールであったが、ヘナヘナの章くんは45。トータル94で、カーティス兄の87、弟の82に完敗! 近いうちにシアトルへ仇を討ちにいかなくてはならない。
 12時過ぎにプレーを終えて、カーティス兄弟のメールアドレスを聞き、日米再選を約す固い握手を交わしたのち、章くんはリオ・セコGCをあとにした。

 ホテルへ戻り、シャワーを浴びたあとベッドで休憩。何せ昨晩は2時間と少々しか寝ていないのだから、ぐっすりと寝込んで、目を覚ましたのが3時半。少し寝すぎたか。でも、もう明日の飛行機まで寝ないぞ!
 顔を洗ったあとはラウンジへ降りて、ケーキとコーヒー。夕食をちょっと豪華にしようという魂胆で、ここは簡単なものを腹に詰めて、いざ出発。
 フラミンゴの中庭を抜けて、表通りへ。庭の一角にある野生動物園には、ホテルのマスコットのフラミンゴと10数羽のペンギンがいた。
フラミンゴのプール
← フラミンゴ自慢のプール。3000本のパームツリーが植えられ、その間に2つのオリンピックサイズプールと、子供用プール、ジャグジー、滝が水音を響かせて落ちるラグーンなどがある。さすがに、泳いでいる人影はなかった。

 まずはダウンタウンへ出かけてみようと思い、フラミンゴホテルの前からCATバスに乗る。運賃は2ドル、24時間営業で、10〜20分間隔で走っているストリップとダウンタウンを巡回するCATバス
 章くんが乗った♯302バスは快速で、ダウンタウンまで3箇所しか停まらない。目的地は終点だから、「ノンストップでも構わない。停まらずに走れ走れ〜」と思っていたところ、このバスは循環していて、終点のはずのダウンタウン・トランスポーテーション・センター前で、また客が乗り込んでくる。章くんは、おわてて飛び降りた。
 今でこそ、ラスベガス観光の中心地は巨大なホテルが並ぶストリップ沿いになっているが、市庁舎や郵便局などの公共施設が並び、掛け金も安く遊べて庶民的なカジノがたくさんあるダウンタウンは、地元の人々が集まるラスベガス発祥の地である。
 夜空に光の洪水が溢れるフリーモント・ストリートの角にあるホテルをのぞいてみた。ゴールデン・ゲイト・ホテルは名前の通りサンフランシスコをテーマにしているし、その向かいのラスベガス・クラブはスポーツをテーマにしたホテルである。
 ブラックジャックのテーブルに座って、グラスを片手にカードをめくり、「もう一丁来い」(…っと、これではオイチョカブか。英語でナントカカントカと言っていたのでよく解らなかったけれど、バクチは洋の東西を問わず同じような用語だと思う)と、酔っ払ったおじさんが上機嫌でデーラーと勝負をしている。掛け金は1ドルチップ。ダウンタウンには、安くて、気楽で、愉快なカジノが軒を並べているのだ。
 おじいさんとおばあさんがペァで、ヒゲのディラーに挑戦している光景にも出くわした。負けると「あんた、しっかりしなさいよ」とおばあさんが言い、「だまっとれ、お前がやかましいので集中できんわ」とおじいさんが怒鳴る。怒鳴られたおばあさんは、ヒゲに、「もっと良いカード、配りなさいよ」と文句をつけるが、ヒゲは動じずに、連勝した。1ドルチップが行き交う勝負だが、双方とも真剣だ。
 ダウンタウンには、古き良き時代のほのぼのとしたラスベガスの面影がある。ハイローラーはいないけれど、地元のおじさん・おばさんやアメリカのおのぼりさんが1ドルチップを握り締めて、勝負を楽しんでいる。根っからのカジノ好きはダウンタウンに宿を取るというのも、うなずける話である。
 午後5時を少し回った、お腹がペコペコ。お目当ては、食事をしながらフリーモントストリートのエクスペアレンス(電飾アーケード)が楽しめる「センターステージ・ドーム」。予約の電話では満席と言われても、行ってみると案外座れると聞いていて、予約もせずに行ったところ、この人気スポットはやっぱり混んでいて、ウエイティングリストに名前を書かされ、「少し待って、6番目」と言われたが、20分も待つと、「ミスター、イ〜ィダァ〜」と呼んでくれて、席に案内してくれた。
 午後6時、輝く渓谷と異名をとるフリーモント通りの明かフリーモントストーリーのエクスペリエンスりが暗くなって、空一面が鮮やかな電飾に彩られる。アーケードの天井に取り付けた200万個の電球をコンピュータで制御し、さまざまな模様や動画を映し出す「エクスペアレンス(電飾アーケード)」の始まりだ。

 センターステージの窓から望む、フリーモントストリートの「エクスペアレンス(電飾アーケード)」。
 天井一面に、鮮やかな模様や動画が描かれる  →

プライムリブ 食事をしながらこのショーを楽しめることが、この店の最大の呼び物だが、値段の安いことも感動ものである。
 イタリア語のメニューやデザートにテラミスがあったりしたので、初めはイタリア料理店かと思ったのだが、この店は純然たるアメリカ料理店(ステーキ & アメリカン・コンチネンタル)。となれば、シーフードよりもやはり肉料理を中心のオーダーにするべきだろう。
 章くんが頼んだプライムリブは霜降りで、「レア」とオーダーして焼いてもらった肉はとろけるような食感だ。軽く味がついていたが、「Soy Sauce, please」と醤油を持ってきてもらってかけてみると、和風ステーキの味である。これで14.95j。この価格には、パンはもちろんのこと、サラダ、スープそして野菜スティック、ポテトなどが含まれている。これを激安といわずに何と言おうか。
 翔くんは、肉だけでは何か味気ないように思って、ロブスターもあわせて頼んだ。「あんた、一人でしょう。大丈夫?」と心配するウエイトレスのおばさんに、「マイ ストマック イズ ベリー ラージ(僕の胃袋は大きいんだ)」とおばさんを納得させて持ってきてもらった。ロブスター丸ごと一匹、縦に二つに割った頭部周辺に蟹をベースにしたペースト状のスタッフが入っている。これが21.95j。
 おばさんに心配をかけた手前、残すわけにはいかないので、がんばって食べてきた。でも、ロブスターにもついてきた「オマケ」は食べきれず。飲み物などとあわせて合計41.55jの勘定。章くんはチップと一緒に50ドル札を、残したサラダとポテトの間の小皿の中に置き、おばちゃんにウインクして店をあとにした。


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その1