その4
タイ・ゴルフ紀行
 その1


第3日目 2月18日(火曜日)   パンヤ・パーク ゴルフ コース



 午前7時、キャディバッグを担いで、ホテルの1階ロビーに降りる。6時に起きて朝食を済ませたから、準備は万端だ。部屋の電気も、いつのまにか直っていた。
 ツアーの皆さんは、今日は何とか公園で象乗りの体験と水上マーケットの見物だとか。章くんはツアーを抜けて、パンヤパークGCでタイゴルフ第1戦である。
 今日のゴルフを案内してくれる、タイ在住の天野賢二氏と、7時10分の待ち合わせ。ロビーを見回したところ、それらしい人天野さんの車影はない。『約束の時間には、まだ5分少々あるから』と椅子に腰を下ろしたとたん、玄関をあちこちと見渡しながら入ってきた人影があった。
 半袖の柄シャツに白いズボン、色の黒さはタダモノではない。この旅でたいへんお世話になる天野さんとの出会いの瞬間であった。「お待たせしました」と天野さんも一目でそれと判ったらしく近づいてきて、「玄関に車を回しますから、前でお待ち下さい」とテキパキ。天野さんの車は5ドアのセダン。うしろの荷台へバッグを積み込んで出発だ。
 天野さんは、もと日航関係の仕事をしていたとか。5年前にタイへ赴任して、この国に魅せられ、永住を希望して独立し、ゴルフをはじめとして観光やホテルの手配など、日本からこの国を訪れる人たちの便宜を図ってくれている。
 例えば、章くんは今回ゴルフの手配を頼んだのだが、一人でも面倒がらずに手配してくれる。タイの名門中の名門タイ・カントリークラブの場合、手配・送迎を含めて一人のときは5500バーツ。二人ならば各3500バーツである。タイ・カントリーのプレーフィは1300バーツで、差額が天野さんの経費ということになるが、エントリーから送迎までしてもらうのだから、決して高いものではない。(もっとも、タイ・カントリーはメンバーでないとエントリーはできない。) しかも、1人で回るのは面白くないだろうと、今日のパンヤ・パークと明後日のタイ・カントリーとも、一緒にプレーしてくれるという、ナイスガイである。朝の渋滞 オートバイが多い
 今日は平日、バンコクの朝の渋滞にぶつかった。普通ならば20分で行く距離を1時間から2時間かかるというのだから、その凄まじさが判る。車のほかにオートバイや三輪車、オートバイの前にリヤカーをつないだ車?など、いろいろなものが道路を走っている。
 信号の変わり目はすさオートバイ運搬車がメイン道路を走るまじい。右折のために少しでも交差点に入っている車は、とにかく曲がってしまうまで進んでいく。交差方向から青信号になって発進してきた車とグチャグチャになりながら突っ込み合い、双方とも相手をグイグイーッと掻き分けて進む。よくぞ接触や衝突をしないものだと思うが、その点は直進する車も心得たもので、適当に減速したり、ぶつからない程度に止まったりしている。この呼吸を会得しないと、バンコクで車は乗れないと朝の渋滞 トラックの荷台に人が鈴なり、天野さんは言う。
 タイは車の値段が高い。日本で200万円のホンダ車が、タイでは450万円もする。「タイの人は見栄っ張りだから、それでも車を買おうとする」と言うのは天野さんの説だが、タイの人たちはプライドが高い。これも天野さんの話だが、「日本企業の管理者が、就業状態の悪いタイ人を見せしめのためにみんなの前で叱ったら、大衆の面前で辱められた怒ってと、刺された」と言う。タイの人は、自分の名誉を大切にするのだ幹線道路の脇には 立て看板が並ぶ
 前を行く2トントラックの荷台には、10人ぐらい人がひしめき合っている。渋滞する車の間を走り抜けていくのは、オートバイだ。車の値段が高いので、若者はみんなオートバイで走る。若い女の子も、黒髪をなびかせて走っていく。
 市内を抜けて、郊外へ出た。バンコク郊外を走る道路は、片側3〜4車線でどこまでも真っ直ぐ伸びている。国際協力事業で整備されたそうで、ラオス・カンボジア・バングラデシュなどの国境まで続く。郊外へ延びる道路は素晴らしい。 国際協力事業で整備された。
 天野さんの車は140q/時ほどの猛スピードで走っているが、その右側を、次々と車が抜いていく。「タイは、スピード制限はないの?」と聞くと、「ないですねぇ」とこともなげに天野さんは言う。さらに、「走っている車の何割かは無免許ですよ。オートバイなんか、半分ぐらいは無免許でしょう、小学生ぐらいの子どもも乗っていますよ」とその話はますます衝撃的だ。

 
 ホテルを出てから1時間10分。パンヤ・パークGCへ到着した。ここはバンコクの東北東に位置し、渋滞がなければ市内から50分ぐらいの所要時間。全ホールに池が絡む、戦略性の高い難コースであり、タイには珍しいメンテナンスのよいゴルフ場であるという。天野さんによれば、タイのコースは維持に金をかけないらしい。もっと手を入れれば素晴らしいコースはたくさんあるのだけれど、タイ人のオーナーは経費をかけることを嫌う傾向があると言う。
 その中で、このコースは米国資本が参加していて、メンテナンスがしっかりしていると、天野さんの評価は高い。パンヤ・パークGC 全ホール池がからむ戦略的なコース
 玄関へ車をつけてキャディバッグを下ろすと、キャディさんが取りに来て、バッグ置き場へ運んでくれる。天野さんが駐車場へ車を置きに行っている間、章くんはプロショップをのぞいてみた。ゴルフ用品は、ウェアを含めて、それほど安いという感じはない。アシュワースの半そでシャツが2200バーツだから、日本で買うよりははるかに安いが、カリフォルニアやカナダとあまり変わらない。
 フロントでプレーフィーを払い込んで、プレーOKのタグを貰い、いよいよスタートである。練習はしないのかなと思ったのだけれど、天野さんは「エンジョイ、タイ・ゴルフ」と言っていたから、スタート前の練習などどうでもよいということか。
 章くんは常用カートを借りた。600バーツ要る。コースを味わうためには歩くに限ると言う天野さんは、章くんがカートを借りたことにちょっと不満みたいであった。「明後日のタイ・カントリーは超一流のコースですから、できれば歩いて、その良さを確認してください」と念を押したことからも、カートのゴルフをよしとしていないことがうかがキャディのサイちゃんとい知れる。
 そんなことには無頓着な章くんは、カートで「お先ーッ」と走りまくる。キャディはサイちゃんという名前の20才ぐらいの女の子。大きな帽子をかぶり、上着の襟を立てて、袖の長い服を着ている。「日焼けをしないようにかい?」というと、「ハイ」と答えたが、彼女は何といってもタイの女の子だから、すでに十分に色が黒い。もう日焼けを気にする必要はないように思ったが、そこは女心なのであろう。日本もタイも、同じなのだ。
 パンヤ・パークGCは、ABCの3コース27ホールあって、今日、章くんたちはB・Cコースを回る。
 Bの1番415Yパー4、ドライバーショットはまずまずの当たりながら右ラフへ。残り190ヤードを狙った3アイアンはトップで、60ヤードほど転がっただけ。第3打、8番の打球はグリーン手前へ乗って、奥のピンまで3パット。いきなり「6」。スコアはキャディのサイちゃんがつけてくれる。「ダボね」と上手な茶店 3ホールごとにある日本語で念を押してくれた。
 旅の疲れと言い訳するつもりはないが、パーオンすると3パット、寄せてもパットが入らずと、アウトは5ボキー・2ダブルボギーの「45」。
 もちろんハーフの休憩はなしで、そのままインの10番へ入る。3ホールごとにレストハウス(茶店)があって、飲み物と軽食が置いてある。
 Cコースへ入る頃には日差しも強くなって、ジリジリした暑さである。しかし乾燥していて、木陰や風が吹き過ぎると、結構さわやかだ。茶店の冷たいオシボリもありがたかった。おにぎりが置いてあって、「ウメボシ」とか「ノリ」とか、茶店の子が説明してくれる。「おかか」1個とバナナ1本、それにサイちゃんのアイスティをもらって、50バーツ。現金で支払い、10バーツをチップに置く。
 ドライバーも悪い当たりではないのだが、385Yのパー4でセカンドが170Yほど残る。ホールのレイアウトにもよ前の組のキャディさんたち 写真送ってねーと明るいるのだろうが、距離がきっちりとあるコースだ。各ホールとも、アイアンのキャリーを正しく打っていくことが必要であると自分に言い聞かせると、Cコースは距離感があってきたが、相変わらずパットが悪い。C2番321Yパー4では、2オン4パットの6。「またダボね」とサイちゃんに念を押された。
 インは3ボギー・1ダボの41。遠征ゴルフの出だしとしては、トータル「86」は上出来としておこう。
 クラブハウスへの入り口まで送ってくれたサイちゃんに、220バーツのチップを渡し、「写真送るね」と約束して、ロッカーへ戻る。靴をロッカー係りの男の子に頼むと、20バーツのチップでシャワーを浴びている間にきれいに磨いてくれる。着替えを抱えてシャワー室へ。ドライヤーをかけて、着替えをすると、さっぱりと爽快な心持だ。
 レストランで昼食を摂ることにした。池や石組みを配したクラブハウスの造りも立派であるが、このレストランもまた豪華である。「ここは、コースとレストランの経営が別会社なので、結構いけますよ」という天野さんの言葉の通り、豚のホホ肉炒め、にらニンニク、玉子焼き、焼き飯と取った料理は、どれも空きっ腹に滲みる美味しさであった。コーラ2杯を入れて465バーツ。



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