クアラルンプール(マレーシア)・ゴルフ紀行 1

   2014年09月11日~09月22日      その1  

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 マレーシアを拠点とする格安航空会社「エア・アジア」が名古屋-クアラルンプール線を再開するので、その記念価格切符を発売すると聞いた。
 再開と書いたのは少々入り組んだ訳があって、「エア・アジア」は2001年にわずか25セントで買い取った企業を、トニー・フェルナンデスCEO(最高経営責任者)が10年ほどの間に世界的な航空会社へと育て上げた航空会社だ。同社は2011年にANAホールディングスとの合弁で旧エアアジア・ジャパン(現バニラエア)を設立したが、運営方針をめぐって両社の対立が深まり、2013年6月に提携を解消。一時的に日本の国内線から撤退した。

 僕(章くん)はその当時にソウルまでの搭乗券を往復888円で買っていたところ解散騒動に遭ったのだが、ANAがフォローしてアシアナ航空に振替て旅したという経緯がある【参照】。今回は楽天などと提携しての日本市場進出だ。記念価格でクアラルンプール往復758円ぐらいかなと期待したのだが、今回はさすがに地に着いた経営というべきか往きは5800円、帰りは8800円ほどの値段であった。まぁ、これでも十分に安いというべきか。
 こうして訪問したクアラルンプール、その旅行記は別項に譲るとして、今日はゴルフその1、9月14日(日)の「テンプラパークG&CC」のプレーをを中心に、その日の一日の様子を報告しよう。


テンプラパーク GC

 午前6時、夜の闇をつんざくような雷鳴が轟いた。赤道にほど近い位置にあるここクアラルンプールでは夜明けが遅く、6時では外はまだ空の白みさえもうかがえない。ようやくあたりが明るくなるのは、7時になろうかというころである。
 激しい雨音にホテルの窓のカーテンを開けて外を見ると、向かいの家の屋根に打ち付ける雨の飛沫(しぶき)が、街灯の光の中で飛び散っている。
 そういえば、昨日の明け方も激しい雨音で目が覚めた。雨季のクアラルンプールでは一日に一度スコールが通り過ぎるとは聞いていたが、この雨の激しさは実際に目(ま)の当たりにしないとわからない。「体に石鹸をぬって外に立っていれば、風呂に入らなくてもいいんだ」と昔に聞いた冗談話も、この激しい雨ならばホントに風呂替わりになるのだろうと思った。

 今日は日曜日だけれど、ゴルフの予定だ。扶美ちゃんが、日本の連休を利用して12日(金)に到着、13(土)・14(日)と居て、15日(月、敬老の日)帰国の行程で来ているので、土日のゴルフしか予定がとれないのだ。
 クアラルンプールでも、ウイークデイズ(平日)料金とウイークエンド(土日)料金があって、土日の料金は平日の5割増ぐらいになる。
 今回プレーした「テンプラパークGC」では、ゴルフ斡旋業者によると、2名の場合、送迎付で平日16500円、土日22000円(いずれもキャディ代、カート代を含む)。業者もいろいろで悪徳(?)というか高い業者になると平日23200円、土日25200円といったものもある。
 『こりゃァちょっと高いんじゃないかい』と思った章くんは、出発前の8月末に日本からテンプラパークに電話を入れてみた。
 「ハロー(こんにちわ)、アイアム ジャパニーズ(僕、日本人やけど)。キャンユー スピーク ジヤパニーズ(日本語話せる)?」
 「*▲〜△α●※○■。…booking?」
 bookingか…と聞いてきたので「イエス(そうだ)」と言うと、「ジャストモーメント」と言って担当と代った。
 「アイ ウッド ライク トウ プレイ ゴルフ、アット14 セプテンバー(9月14日プレーしたいんだけど)」
 「アフターヌーン オーケー?」
 「オウ イエス、ホワット イズ マイ ティタイム?(スタート時間は?)」
 「14、September、アフターヌーン、ワン サーティ、プリーズ(9月14日 午後1時30分でどうですか?)」
 といった調子だ。
 「オウ、アイ シー。ハウマッチ イズ マイ プレーフィ? (プレー代はいくら)」
 と尋ねると、
 「ハウ メニー プレーヤーズ アー ユー?(何人ですか)」と聞いてくるので
 「ウイ アー トゥ(2人で)」と答えると、
 「サンデー、2プレーヤーズ(日曜日、2人だね)。… エイトハンドレッド フォーティ エイト(848RMだよ)」と言う。
 848RMならば約28000円、往復のタクシー代が150RMとしても日曜日の相場としては2人で33000円だから、業者の44000円よりは10000円ほど安い。10000円というとマレーシアでは結構な大金で、今回利用した安ホテルの2泊分である。

 ※ RMはマレーシアの通貨の単位でリンギット。1RMはこの2014年9月の為替相場で
  33円。クアラルンプールの両替所では37〜39円と2割近く得な所もあった。


 マレーシアのゴルフのプレーフィは、メンバーと飛び込みで行くビジターとの間に、メンバー紹介によるゲストという種類がある。ビジターフィよりも安いから、メンバーに紹介してもらう方法を見つけるといい。他にも賢い方法がありそうだから、また研究してみよう。


 今回利用したホテル
   
Le Apple Boutique Hotel Bukit Bintang」→

   1泊141RM(約4653円)、昨年建設されたと
  いう新しいホテルで清潔だった。部屋はもちろん、内玄
  関やエレベーターもカードキーで管理されていてセキュ
  リティは万全、しかもガードマンが24時間玄関に立っ
  ている。滞在していた章くんは、ガードマンくんたちと
  顔なじみになり、ホテルカード不要の顔パスだ(笑)。


 少し弱くなった雨音を聞きながらウトウトしていたら、半開きにしたカーテンの間から差し込む光に目覚めて、時計を見ると8時30分。空はどんよりしているけれど、もう雨の心配はなさそうである。
 顔を洗って9時過ぎ、朝食に出かけた。ホテルはクアラルンプール随一の繁華街ブキッ(ト)・ビンタン地区にあるから、朝食はホテルを一歩出ればどんなものでもお好みの朝食が揃う。昨日まで、お粥やナシレマといった屋台飯やファーストフード店で朝食を済ませていたのだが、今朝はちょっと洋風朝食が恋しくなってコーヒーとパンの店へ向かった。

  ※ クアラルンプール随一の繁華街「ブキッ(ト)・ビンタン」の呼称について
   ここの地区名は、日本語では「ブキッ・ビンタン」と書いてあったり、「「ブキット・
  ビンタン」と書いてあったりする。の英語表記は Bukit Bintang である。t は発音され
  ない、いわゆるサイレントtなのか。まぁ、聞く方の問題だからどちらでも通用すればよ
  いのだが、ここでは言いやすい「ブキット・ビンタン」とする。
   ちなみにマレー語(インドネシア語も)でブキットは「丘、山」、ビンタンは「星」を
  意味するから、ブキット・ビンタンとは「星ヶ丘」といった意味である。
   一帯は開発されているから、さほど丘陵といった感じはしないが、歩き回ってみると
  アップダウンはそれなりにあるから、やはり地名の通り丘だったのだろう。

店内風景
パンは焼きたて
 このレジで勘定を払う

 ホテルから右へ歩くとすぐにスルタンスマイル通りに出る。左へ折れて100mも行けばブキットビンタン通りとの交差点だ。その北東角にパン屋がある。名前は……わからない。
 パン屋といっても、焼きたてのパンに、注文すればブレックファーストとして野菜やソーセージなどを合わせたものを数種類用意して、客の朝食に供している。
 客は、店内に並べられたパンや飲み物をトレイに取り、レジに持っていく。レジで「ブレックファーストの1」などと注文して、奥の厨房で調理したメニューを皿に盛ってもらうこともできる。勘定を済ませたら、これを店内のテーブルで食べる。もちろん、お持ち帰りもOKだ。
 僕はパンを2個とオレンジジュース、コーヒーを買ったのだが、これで勘定は30RM(約990円)と日本での料金と変わらない。
 確かにクアラルンプールの食事は日本と同じかむしろ高いものもあるが、お粥(60円)やナシレマ(蒸しご飯、30円)あたりと副食物をちょっとつまむ程度ならば、150〜300円ほどで済ませることができる。

 朝食を済ませたのが午前10時、ゴルフのスタートは午後1時30分だからホテルを12時に出発すればよい。それまでまだ2時間ほどあるから、クアラルンプールのランドマーク「KLタワー」へ行ってみることにした。

 クアラルンプール市内のどこからでも見える「KLタワー」→

 通りを歩いていくと、僕の顔には『タクシーに用がある』と書いてあるのか、運転手くんが声をかけてくる。若いのや太ったエネルギッシュな運転手くんは、やる気満々に料金をふっかけてくる。料金交渉に、ファイトを燃やしているのか、面倒だ。ちょっと歳をくって、くたびれたっぽいおじさんは、無謀な提示はしてこなくて良心的である。
 この朝は、洗いざらしのカッターを羽織った50ぐらいの小柄なおじさんが声をかけてきた。しかも前歯が1本かけているのも理想的だ。
 「タクシーどう?」と言うのに、「KLタワー、ハウマッチ」と聞く。ブキット・ビンタンからKLタワーまでは約5分、料金は10RMで十分だろうが、「10RM(330円)」ではちょっと気の毒かなという気がして、運転手くんが「20」と言うのに「OK」とすんなり交渉が成立した。
 往きの5分間ほどの間に、運転手くんは運転しながらクアラルンプール近郊の観光地の写真やパンフレットを出してきて、「ここに行かないか?」と営業をかけてくる。「今日は午後からゴルフだ」と言うと「明日でも、明後日でも…。電話してくれれば迎えに来るよ」と電話番号を手書きしたパンフを出してくる。でも、「another time(またの機会に)」と言うと、それ以上は勧めて来ない。

← ほどなくタワーの上り口に着いた。

 右上に見えている白い大きな円柱がタワーの根元だ。


   入場料を支払う →


 受付の男の子が「ジャパニーズ?」と聞いてきた。「Oh Yes」と答えると、「Over 55?」と重ねての質問だ。「ジヤパニーズのシニアには入場料がディスカウントされる」と言って、通常48RMだったかのところを半額ほどにしてくれた。
 ジャパニーズのシニアだから割引というわけでなく、世界各国どこの国の人でも適用されるシニア割引なのだろうが、「ジャパニーズのシニアは割引だ」とわざわざ言うところに、親日のお国柄が現れているようだ。
 
 チケットを買うと、ガードマンくんがエレベーターの乗り場まで案内してくれて、ここで待てと立ち位置まで指示してくれる。これって、案内する間に観察して客の不審度をチエックしているのだろうか。KLタワーは世界第4位の高さ(421m)を誇る、マレーシアのシンボルだ。爆弾なんか持ち込まれて、途中でポキッと折られたりしたら大事件だ。

 展望台があるのは地上276mの球状の一帯、ここは6階構造になっていて、1階が展望台だ。

← エレペーターを降りると、いきなり眼下にクアラルンプールの市街が広がっています。

       北方を見ると「ツインタワー」が ↓





 章くんが展望台でエレベーターを降りたのに、まだ乗っている人がいた。『まだ上にも行けるのか?』と思ったのだが、聞いてみると2階には回転レストランがあって、ビュッフェ形式でのランチ、ディナーを食べさせるという。食事は先ほど済ませたところだから、今日はいいかな。


← 後日のデナー時の夜景です。

 さらに3階はメガビュー・バンケットデッキ(宴会場)。そして、このタワーは電波塔なのだから、その上の4〜6階は電波関係の会社や技術関係者が詰めている

  東方を見ると→

      赤丸のところが章くんのホテルの位置だ。

 あとで聞いたのだが、タワーの見物客には専用のイヤホンが無料で借りられ、日本語、英語など自国語でのガイドを聴きながら、展望台内を一周できるとか。
 教えてくれなきゃ…。ジャパニーズ・シニアに対する配慮が、ちょっと欠けていたんじゃないかい。

← 展望台の壁には世界の通信塔が高さ順に紹介されていて、東京スカイツーが一番に並んでいました。

 KLタワーは、目の前に見えるペトロナスツインタワー(452m)に対して、標高94mの丘ブキッナナス (Bukit Nanas) の頂上に建てられているため、ツインタワーより実際には高く見える。
 1991年に着工し、1994年にマハティール・ビン・モハマド元首相が式典で最上部のアンテナを立てて、421mの塔ができあがった。内装工事も含めて1996年5月に完成し、7月から一般公開が開始された。


 足元にモノレールの「ブキット・ナナス駅」が見えています

 帰りはモノレールに乗って帰るつもりだったのだが、生憎大粒の雨がパラついてきたので、傘も持たずに来た章くんは、駅までの300mが歩けない。

← 1階に降りていくと、入口を出たところにカウンターを置いて、「タクシーいかがですか」と呼んでいる。

 「ブキット・ビンタンまで、いくらだ」と聞くと「30RM」と不埒な事を言う。
 「20RMだろう」と言うと、「いや、ここからは初乗り30RMと決まっている。私は公式なタクシー係員だ」とかなんとか言いながら、胸から下げている身分証を見せてくる。
 東南アジアの国の身分証ほど当てにならないものはないことを、章くんはタイでの経験でよく知っている。「公式係員」なんて、所詮は自称なのである。
 20年ほど前にタイでトクトク(3輪タクシー)に乗った時、王宮からシェラトンまで運ちゃんが「100バーツ」だと言う。相場がよくわからなかった当時の章くんが考えていると、白い制服に星2つの肩章を付けたおじさんがやって来て、胸の「セキュレタリー(secretary)」と記したワッペンを見せながら「ああ、順当な値段だね。あと、土産物屋なんかへも案内してもらうといいよ」と助言してくれた。が…、後から考えてみると、このおっさんも観光客を騙す役者の一人だったのだ。王宮からシェラトンまでなら、トクトクの相場は50バーツといったところらしい。
 まぁ、トクトクの運ちゃん、「宝石店へ行こう、見るだけOK…」「土産物屋へ行こう」「洋服屋へ行こう」と誘ってくるので、どうせ暇だった章くんは「行こう、行こう」とみんな付き合って、何も買わなかった。2時間ほどあちこちと案内して、1バーツのリベートも入らなかった運ちゃんは「あと100バーツくれ」と言い出した。「何言ってんだ、こんな時間まで無駄足させたくせに」と腕時計を示しながら日本語でまくしたてると、『こいつ、怒ってるな』という雰囲気を察したのか、ホテルの前で章くんを下ろして、何も言わずに走り去っていった。
 運ちゃんにはむしろ気の毒なことだったと思うほどだが、許せないのは「セキュレタリー」のおっさんである。いかにも公式な係員だという顔をして、観光客をカモろうとする。
 だから、章くんはこのKLタワーの入口に座っている自称公式係員も信用してはいない。「来る時も20RMだった。20RMでしか乗らない」と言って、客を送ってきたタクシーを捕まえようとしたら、ここで一般タクシーに乗り込まれては困るのか、「20RMでいい」と言って横に止まっていたタクシーに手招きした。
 

       KLタワーからの帰り道。
         タクシーの窓からパチリ、結構な雨です。→


 11時20分、ホテルに戻り、ゴルフの準備をする。

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