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第5日 9月19日(火)  
大事件発生!
バンフ・スプリングスのクラブハウス


 9時06分のスタートだったのを、10時と間違えていて、クラブハウスに着いたのが9時10分。5分ほど遅れてしまって、「あとは12時まで空きはなく、スタートできましェ〜ン」。
 でも、この日は朝から寒くて、外は霙まじりの氷雨。クラブハウスの中央にしつらえられた特大のストーブには赤々と薪が燃やされ、日本人の家族連れが、「寒くって、途中で引き返してきました」と帰ってきた。午後からは晴れてきたので、遅刻したのがかえって幸いしたようである。もちろん隊長は、「空模様を見て、わざと遅れたんや。俺も、苦労しとるんさ」といつもの調子。…その深謀遠慮には一同敬服! ヨッ、隊長! 
バンフ・スプリングス
 午後、雨もやんでスタート。このバンフ・スプリングス・ゴルフコースは、ゴルフダイジェスト社の世界ベストコース100選にも入っている名コースである。ホテルを見上げる森林の中に延びる27ホールは、マリリンモンローの「帰らざる川」のロケが行われたボー川が横を流れ、エルク(大鹿)やビッグホーンシープ、マウンティン・ゴート、鹿などが姿を見せる、野趣あふれるコースであった。


 14番をホールアウトして15番へ向かう道は、公道をカートで走る。ボウ滝を右手に見て、ホテルの裏側に通じる坂道をひたすら登っていくと、道の左手に、目も眩むばかりに豪快な打ち下ろしの15番、480ヤードパー4のティグラウンドがある。高所恐怖症の章くんは、すこしお尻がこそばゆい。
 目をつむってティショットを打ち、セカンド地点へ行くとビックリ。グリーン近くのフェアウエイを、20頭ほどのエルクの集団が、立派な角を持った大きな雄を中心にハーレムをつくって占拠しているではないか。
 ここで大事件発生!。グリーンまで残り220ヤード。バッフィで打った章くんのボールは少しトップ気味のライナーで、何かの気配を感じたのか、ボールのほうを振り返った一頭の雌のエルクの鼻柱を直撃してしまったのである。
 「ブヒヒヒ〜ン(痛いわぁ)」と悲鳴をあげるか、走り回るかと思いきや、ボールが当たった彼女は、章くんのほうに、「フンッ、下手くそッ」というような一瞥をくれただけで、何事もなかったように歩いて、この場を去っていってしまった。
 大きな雄を先頭に他のエルクが仕返しに来るかと、章くんはいつでも逃げ出せる用意をしながら、フェアウエイに落ちているボールのところへ歩み寄る。しかし、人間との共生をモットーとするエルクの皆んなは、非暴力的抵抗…シカト!。しかし、その目は「エルクの敵」に向かって、ピカリと光っていた。

エルクのお父さん
         お前さんかい、うちのかあちゃんにボール当てたン!

                     と怒るエルクのお父さん →フェアウエイにたむろしているエルクの群れ










←「この人よ、エルリンちゃんの
 美貌を台無しにしたの」
 
と、皆んな冷たい視線を浴びせる





 ショック冷めやらぬ章くんは、このホール「7」。次のホール「8」…。「これで平気な顔をしとったら、人間やないわなぁ。心が痛むか、章くんも人間やったのォ」と誉めて(?)もらって、このラウンド『100』。エルクのお父さんの怒りに触れて、またやってしまった100叩き!


 ボールの当たった地点へ行ったときには、もう相手のエルクちゃんは居なかったので、住所も名前も聞けず、お見舞いを届けるわけにもいかなかった。それを章くんはサルファー山からの展望気に病みながら、「今度来るときは、奈良で『鹿せんべい』を買って来よう」と心に決めて、プレーのあと、サルファー山の展望台へ登った。
 展望台からの眺望は、まさに、バンフ一望。ゆうべ泊まったスプリングスホテルも、先ほどプレーしたゴルフコースも眼下に収め、バンフの町並みの遥か先には、ロッキー山脈の名峰が連なっている。この大きさ、この広さ、この荒々しさ…、カナダの風景はホントにデッカイぞ〜!。あまりの爽快さに、鹿せんべいのことをついつい忘れそう。でも、忘れてはいない。


   展望台より カスケート山とバンフの街を望む  →


 やがて章くんたちは、バンフのお城の形のキャッスルマウンテン町に別れを告げて、カナディアンハイウエイ1号線を北上し、今日の宿泊地レイク・ルイーズへと向かう。途中の道の両側に次々と現れる山々の見事さ…、お城の形はキャッスルマウンテン…。「ここには50個分のスイスがある」といわれる雄大な自然…。この道は、間違いなく世界で最も壮観なハイウエイだ。


← カナディアン・ハイウエイ1号線のすぐ脇にそびえるキャッスルマウンテン。2776m。氷河が両側を削って残ったレーア・ケーキ。


 今夜のお宿は、地球の歩き方のガイドを見て飛び込んだ「レイク・ルイーズ・イン」。大きな部屋が空いていて、4人1部屋で16000円。ベッドが7つとトイレが2つ。バス、キッチンも…冷蔵庫も電子レンジも食器も、みんなついている。
 夕食は、もとカナディアン鉄道の駅舎だった、 「レイク・ルイーズ・ステーション」 へ出かけた。20世紀当初の駅だったログハウスと現役を引退した列車車両がレストランになっている。車両レストランは予約が必要で、章くんたちはもと駅舎だったログハウスへ。こちらも、アンティークな内装で古い暖炉に薪がくべられ、雰囲気は抜群。シェフ特選のスープ、シーフード、アルバータ・ステーキ、アイスクリーム、コーヒー、とっても美味しかった。


 今夜も熟睡。明日は、珍しくゴルフの予定のない、観光オンリーの一日である。




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カナディアン・ロッキー・ゴルフ紀行 その2