カナディアン・ロッキー・ゴルフ紀行 その4
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第7日 9月21日(木) カモが群れ飛ぶジャスパーGC
  


 朝、停めておいた車のワイパーや窓枠に小雪が残っている。寒い!。章くんたちは、絶好のゴルフシーズンの日本から、その日本でいえば真冬の寒さの土地へゴルフに来ているのだ。ジャスパーGC 1番
 セーターの上にベストを重ね着してスタート。1番ティーではトーテムポールが送り出してくれる。カナダも、もともとはインディアンの土地なのだ。カナナスキス、ヨーホー、サンワプタ、クートニーなど、古くから変わらない地名には、先住民族が呼び習わしていた呼称の名残りがある。


 ジャスパーGC 1番
  トーテムポールが送り出してくれる。インディアンの土地だ。→


                  

 とにかくカモの多いコースであった。フェアウエイにも、ティグラウンドにも、もちろん随所の池にも、カモが居る。ボールを打ち込んでも、1〜2歩横へチョンと動くだけで、逃げようともしない。「そんなへなちょこボールに当たっているようでは、カナダでカモやってらんないわよ」とばかり、近づいても知らん振りをしている。


↑ フェアウエイにいるのはカモの集団。「おーい、打つぞぉ」と声を掛けても、打ち込んでさえ、逃げようともしない。バンフでエルクにぶち当てた、章くんの実力を知らんのか!


 あまりの寒さに、章くんは『95』を叩いてカモにされてしまった。国際ゴルファーになるためには、寒さもカモも気にしない鈍感さを修得せねばならない。
 ホールアウト後、歩行用電動カートを操ってプレーしてきたお年よりに会った。「ゴルフは歩きや」と日頃から主張している隊長は、早速「これはあなたのか。調子はどうか。どこで買った」などを聞き出し、製造元のアメリカのメーカーを教えてもらっていた。日本に帰ってからインターネットで注文し、今、ホームコースでのラウンドに使っている。操作技術の修練も肝要である。山坂の多いコースでは、時々ゴロンとひっくり返る。


 ジャスパーGC、午後3時30分終了。次の目的地カムループスを目指して、遥か435km、カナディアン・ハイウエイ5号線をひた走る。
 道の両側はどこまでも続く針葉樹の林、木々の間から遠くロッキーの峰々がその雄姿をあらわす。両脇のカラマツは色づき黄金の道。435kmの道中に集落は3つか4つの町があるだけで、山と森林の中をどこまでも道マウント・ロブソンは続く。
 途中、マウント・ロブソン・パークで食事を兼ねての休憩をとる。レストランの裏手に聳えるマウント・ロブソンは、カナディアン・ロッキーの最高峰、3954m。見上げるものの頭上に覆い被さるように迫ってくる、恐ろしいほど垂直に切り立った岩山であった。


← カナディアン・ロッキー最高峰 
   マウント・ロブソン【3954m】
 この南壁は3000メートルの垂直な一枚岩だ



 夕刻、カムループスに到着。2軒ほど満室ですと断られたあと、一行は「ホスピタリティ・イン」なる看板を見つけ、名前がいいじゃんと惚れ込んで、「部屋、空いてますか」と飛び込んだ。名前からして、看護婦姿の受付嬢が応対してくれるのではないかという期待もあったのだけれども、「あいてるわよ」とにこやかに出迎えてくれたのは、47・8才の婦長さんタイプのおかあさん。普通のワンピースを着ていた。
 夕食に町へ出る。「ビューポイント」というこれも名前に惹かれて入ったレストランは、名前の通り、窓から暮れてゆくカムループスの夜景が見下ろせる絶景レストラン。料理の味も美味しく、ウエイトレスも美人…。思わずチップをはずんでしまった。



第8日 9月22日(金)  自家用カーの競演

 

 朝、今日の舞台「リバーショワーGC」へ向かう途中、前を走っていく車が何かおかしい。スピードも遅いし小さい。よく見ると、後ろにキャディ自分のカートでゴルフ場へ来るおじさんバッグを立てている。乗用のゴルフカートではないか。このおじさん、自宅からこのカートでやって来るのだ。駐車場へ入る章くんたちを尻目に、コースのほうへスイーと曲がっていった。


             リバーショワーGCの近くの道で。
              このおじさん自宅からカートで来る。→



 カムループスは、ロッキーの山間地に住むインディアンたちが冬場に寒さをしのぐために移住していたという避寒地である。だから比較的温暖な地だけれども、一帯は乾燥地帯で、近年になってから灌漑施設が整えられ、町が開かれたという。このノース・トンプソン川沿いに広がるリバーショワーGCも、コースは芝生が厚くよく整備されているが、周囲には赤茶けた乾燥地帯特有の山地が広がっている。
 アウトは新興住宅地の間を縫うように造られていて、各家々の庭先をプレーしていく。リバーショァGCでのショット 村上隊長の5番パー5のティショットは目の覚めるような当りだったのだが電線に当たってしまい、打ち直した球はスライスして住宅の庭に飛び込んでしまった。
 コースとの間を隔てる塀や垣根などは何もなく、庭先の芝生を少し削るけれども、十分に打てる状態にある。でも、住宅との境界には白杭が打たれていてOB。「こんなコースは、芝生代を払うから打たせてくれと家主と交渉して、OKが得られればセーフにしておけばええんや」と隊長は口惜しがる。 


← リバーショワーGC  向こうの山は赤茶けていて、この地帯が乾燥地帯であることを示している


 コースで、個人用カートに乗ったおじさんおばさんにたくさん会った。それぞれにペンツ仕様とかポルシェ型にチューンしている。「いいですね」と言ったら、おばさんたち、得意そうに笑っていた。ヘッドライトまでついている。それもそのはず、朝に会ったおじさんのように、これで公道を走って家まで帰るのだろうから、暗くなったらライトをつけなくては帰れない。章くんは、この日45・41の「86」。


 午後3時、クラブハウスで食事を済ませ、カナダ最後の目的地バンクーバーまでの410kmに出発である。道はまた、遥かに続く森林地帯の中を縫って、どこまでも続くハイウエイ。もう、この辺りに来ると、山の形はなだらかになって、あのカナディアン・ロッキーの荒々しさは見られない。

 片側3車線。対向車線とは中央の10mほどのグリーンベルトで完全にセパレートされている快適なハイウエイに、隊長のハンドルさばきも軽い。
 と、大事件発生。緩やかに右へカーブしている下り坂を下っていくと、道路の右側で手を振る男が居る。黄色いコートを着ていて、背中に「POLICE」と書いてあるではないか。スピードガンで、ネズミ捕りをやっていたのだ。
 鼻の下に髭を蓄えた25・6才ぐらいの警官が、表示された数字を示して、「OK?」と了解を求める。『英語が解からない振りをしたら』とも言ったのだが、「139km/時。スピード・オーバー、OK」と言うだけだから解からない振りも難しい。


           大事件発生!
           
  隊長がスピード違反で捕まった。→




 それに友達の話では、以前、スピード違反でロサンゼルスのパトカーに捕まったとき、ピストルを突きつけられ、『英語が解からん』と言ったら手錠まで出してきて、『サインするか、逮捕か』と迫られたと言っていたのも思い出した。ここは隊長、おとなしくサインをして、髭の兄ちゃん警官と握手までしていた。罰金の払込用紙は、日本の自宅に郵送すると言う。
 日本へ帰ってから知り合いのお巡りさんに、「金払いに行かんかったら、日本の警察から来るのか」と聞いたら、「国際警察機構の要請で、即、お邪魔させていただきます」との返事だったとのこと。村上隊長、すぐに払いに行ったって!。
 「ところで、幾らやった」と聞いたら、139km/h…40〜50kmほどオーバーかな…で14500円。カナダは安っすいジャン!
 
 あと、バンクーバーまで270km。ショックのあとは、何〜んにも考えていない極楽トンボ、章くんの運転。さらに飛ばしまくって、午後7時30分、夕焼けに染まるバンクーバーに到着した。


 ここ何日間か、山と森ばっかり見てきた一行にとって、トロント、モントリオールに次ぐカナダ第三の都市バンクーバーは大都会であった。バンクーバー市街
 林立する高層ビル、あふれる車の波、赤や青のネオンのまばゆさ…。人は豊かな自然にも、また、文明の喧騒にも、同様の感動を覚えるものらしい。
 今夜の宿は、隊長が予約を入れてくれていた「サンセット・イン」。「インターネットで申し込み入れといたから、返事は来てないけれど、大丈夫やろ」と相変わらず豪気である。
 探し当てたサンセット・インは繁華街の一本裏手の通りにある6階建てのホテル。フロントで、「インターネット。ジャパニーズ。ムラカミ。OK?」とやったら、「OK、OK!」。
 今夜の食事は、登くんが焼肉を食べたいというので、韓国焼肉レストランを探す。肉料理の店はたくさんあるのだけど、自分で焼いて食べる式の店はなかなか見つからない。道行く人に片っ端から尋ねたりして、やっと焼肉レストランを見つけた。凄い人気である。店内は広くて、100人ほどが座ることができる机の数だが、待っている客が20人ほど外にあふれていた。
 15分ほど待って案内された席には、4人掛けのテーブルの真ン中にコンロがあって、正真正銘(韓国式という意味)の焼肉屋である。しかもメニューに寿司まであるではないか。カルビ4人前、ロース2人前、ナントカの肉4人前、寿司2人前、海鮮サラダ2皿、ビール2本、地のワイン1本、ウーロン茶2本で、しめて8200円。安っす〜い!。
 総じてカナダの物価は安い。飲食物もこの通りだけれど、衣料品もトレーナーなどは2〜3000円、ゴルフシャツも日本では15000円ほどのものが、7〜8000円である。生活者に優しい社会の仕組みが整えられた国であるというべきだろうか。移住希望者が多いというのも、このあたりに理由がありそうである。
 


第8日 9月23日(土)  カナダ戦も完敗! 


 カナダ最終戦は、バンクーバー郊外の「ノースビューGC」。ここもだだっ広い野原の中に、池や小山を造ったといった36ホールのコース。で池に泳ぐカモも、そのほとんどに池がからみ、戦略的なたたずまいの難しそうなコースである。私たちが訪れる4週間ほど前にこのコースでカナディアンオープンが行われていた。
 このコースにも、カモがたくさんいた。気をつけなくてはいけない。


      
ノースビューGC ここも池にはカモの大群→


 2番426Y右ドッグレッグのパー4は、セカンド地点がブラインドになっていて、ティグラウンドから見えない。ティショットを終えてセカンド地点へ行くと、カート道の横にカランカランと鳴らす鐘が吊るしてある。その横に英語の看板とともに、日本語で、「第2打を打ち終わったら、この鐘を鳴らして後ろの組に知らせてください」と書いた紙がぶら下げてあった。今日は章くんたちが来るので、特にこの紙をぶら下げてくれたのだろうか。いや、日本人の客がそれほど多いということなのだろう。

 章くんはこのカナダ戦、ここまでNR・92・87・100・93・86と惨憺たる成績。そしてこの日もアウトは45。
 やって来ました18番561Yパー5、ティショットをショートカットに成功して、残りは池越えの225ヤード。この遠征の集大成を賭けて、2オンを狙う。全身全霊を振り絞って放った、乾坤一擲のショットはトップ。あえなく池ポチャ!。池の淵から打った第4打も、また池…ノースビューGC 18番。このホール10で、インは47、この日92。


← 18番パー5。第2打地点から、池越えのグリーンを望む。2オンの夢は、あえなく池に消える!




 1ヶ月ほど前にこのコースで開催された今年のカナディアン・オープンでは、田中秀道は決勝ラウンドに残ったとのことであったが、丸山茂樹は予選落ち…。「オイラでも92も叩くンやから、丸ちゃんでは葉が立たんわのぉ」と章くんはうそぶく。
 …カナダ戦平均「91.6」。今年も惨敗!。


 ゴルフのあと一行はバンクーバーのレストランにて、連戦終了の乾杯。そして何事もなくオヤスミ。



第9日 9月24日(日) さらばカナダ!   バンクーバー空港の朝焼け


 午前3時30分、起床。4時30分、バンクーバー空港に着きレンタカーを返そうとするが営業所が閉まっている。入り口の横に置いてあった袋にキーを入れて、扉の小窓から投げ入れグッドバイ。このあたりは高等テクニックだけれど、隊長の超法規的判断といったところだ。
 7時00分、さらばカナダ!。朝焼けがきれい。

 サンフランシスコ着 9時20分。 乗り換え、13時00分発。



第10日 9月25日(月)  帰国


 午後4時15分、関西空港着。暑いぞー、大阪! 
 

 カナディアン・ロッキー見て、人生観変わったかって?
  もともとチャランポランな人生なんだから、変わり様もないけれど、
  まぁ筋金が入ったかな!






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