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【166】 麻生内閣スタート  - 自民党の人材不足を露呈 -    2008.09.24


 麻生内閣がスタートした。新内閣の印象は、小泉・阿倍流の、派閥によらない、首相の意向が伝わりやすい大統領型の内閣を目指したのだろうが、自民党の人材不足を露呈したような内閣だと思う。


 景気対策が最大の課題のこの内閣にあって、財務相兼金融担当相に盟友である中川昭一を起用したのはOKとしても、あと、経済財政担当相に財政再建・消費税導入論者の与謝野 馨を再任、課題の農水相には石場 茂…、他に任せられる人はいないのかと思ってしまう。
 厚労相の桝添要一はボロボロでもう気の毒…。以前の「僕は国民の味方。厚労省の悪人どもをなぎ倒せ」というヒーローは、もはや演じ切れない。説明もしどろもどろになってきた。
 少子化対策担当相に34歳の小渕優子は、目玉起用でも、狙いが見えすぎていて、ビックリするよりも失笑してしまう。無理無理に当てはめているから、なるほど…という納得感もない。


 自民党の人材不足は 二世・三世議員の多さが その最大の理由である。彼らは、自ら志を立て人を集い、政治理念を掲げて一から地盤を築き、幾多の権力闘争を制して今日あるという政治家ではない。周囲の人たちの思惑や利権の上に乗って、父親や親族の遺産を継ぎ、担がれて今がある身だから、信念の強靭さや言葉の重み、そして存在感が違う。
 世襲・二世・三世議員を規制しないと、政党の闘争力は低下する。政策の実行力も、官僚統制も、情報発信力も、そして政党としての魅力もなくなっていくということだ。
 例えば、利権のカタマリのような男だけれど二階俊博と、まだまだ清新なイメージの石原伸晃とを並べたら、戦う前に二階俊博の勝ちだろう。二階は、福田前首相が「道路特定財源の一般化」を独自判断で発表したとき、「言ってるだけ。やれるものならやってみなさい」と記者団にコメントしている。石原伸晃では、逆立ちしても言えない(大笑)。
 今回の内閣は、18人中11人が二・三世議員とか。麻生自身も含めて、身内が総理大臣だったものが3人…。果たして二・三世議員に、海千山千の世界の政治家を相手に、一歩も引かずに日本の主張を通していく胆力はあるか。権謀術策を駆使して、相手をねじ伏せ、突破していく覚悟はあるのか。彼らは、どう転んでも息の根を止められることはない、国内では強いんだけれど…。


 麻生新首相のスローガン『日本を明るく強い国に』というのも、どこか漫画チックだ。普通は、そのためにどうするかと3~5つぐらいの具体策を説明するものだし、そうしないと聞いているほうも納得しないことは理解できると思うのだが、しかし、麻生新首相は説明しない。
 言葉は大丈夫か…と言うことは、思考は大丈夫かということである。ごたごた説明しなくても、絵を見ればわかるというのは漫画の世界であって、論理の世界ではない。漫画の世界には勢いはあるが、足元が崩れると脆弱だ。慎重に、緻密に、論理と現実を積み上げて、日本を明るく強い国にしてほしい。


 麻生新首相は今日9月24日に就任したが、衆議院選が11月2日の投票日に投開票して政権交代が実現すれば、3日に臨時国会の首班指名で小沢一郎総理が誕生する。通算40日間の内閣総理大臣在任期間となって、最短内閣記録を更新する。
 はたして、記録更新を阻止することはできるか。極めて厳しい総選挙に向かって、麻生太郎の戦いが始まった。




【166】 自民党第23代総裁に麻生太郎氏  - 焦点は衆院選へ -   2008.09.22


 自民党総裁選は茶番だという声が多いけれど、さまざまな政治的な発言もあって、それなりの成果を挙げた12日間であったと思う。5人の候補者それぞれの個性も出ていたし、例えば、一貫して「自衛隊の海外派遣を!」と訴えていた石破 茂の姿は、初めから総理に就くことはないことを前提にした発言だとはしても、ぶれない政治家としての評価を得たことだろう。少なくとも、政治に人々目を向けたという効果は否定できない。
 麻生太郎 351票、与謝野 馨 66票、小池 百合子 46票、石原伸晃 37票、石破 茂 25票も、それぞれに納得のいく得票数であった。
 与謝野 馨は立候補したことの論功行賞として66票を貰いお家安泰…、もっとも次の総選挙は自力で勝利しなくてはならないけれども。小池 百合子の第2位46票もなかなか妙味のある象徴的な数字で、小泉元総理・中川元幹事長の存在を否定することなく、かつ小泉チルドレンの半数以上は巣立っていることをうかがわせる得票だ。石原伸晃37票は将来の総理候補としての可能性を残したし、石破 茂25票は推薦人として彼と一蓮托生の道を選んだ中の誰ひとりとして、彼を裏切らなかったことを示している。
 さて、麻生太郎の351票を多いと見るか少ないと見るかは、それぞれに見方の分かれるところだが、僕はこれも妥当な得票であると思う。麻生以外の得票数の合計が174で、麻生支持対非麻生が2対1ということは、自民党が極めてバランス感覚に富んだ政党であるという印象を与えるし、反面、党内の3分の2の支持を得ているということは、今後の政治基盤を強固なものにしたという印象も同時に与えることができた。
 

 22日中に党内役員人事を決め、秋分の日を挟んで24日に組閣を行う運びだが、細田幹事長の任命を見ても、麻生太郎の性格がよく出ている。細田という有能で実務型をえらんだことと、もうひとつ、新聞辞令をことごとく外して見せたことである。
 新聞各紙は、総裁選の半ばぐらいから麻生内閣人事に取り組み、幹事長に町村・石原…ら(朝日の一部に細田昇格の記事)、官房長官に大島…と書き、解散期日まで10月26日/11月2日などと決めていたが、細田幹事長に続き、官房もこれまで新聞には登場しなかった河村健夫がほぼ固まっている。
 麻生内閣が誕生すると、解散はいつか…が政局の焦点になる。麻生新総裁は総裁選で「補正予算の成立を無視して解散はしない」と明言していたから、10月26日の冒頭解散はない。24日の臨時国会召集から数えるとして、早々の解散は、「政権交代」という大激震を経験するこの内閣が史上最短内閣としての記録を更新することになる解散だから、注目に値するだろう。
 歴代内閣の在任日数を短い順に並べてみると、最短は終戦直後の東久邇稔彦内閣で54日。以下、羽田孜内閣64日、石橋湛山内閣の65日、宇野宗佑内閣の69日、芦田均内閣の220日、幣原喜重郎内閣の226日、細川護熙内閣の263日、片山哲内閣の292日。そして、昨年9月26日に発足した福田康夫内閣は24日に総辞職すると364日。安倍晋三内閣は366日で、2日間及ばない。
 政権交代を賭けて、いよいよ天下分け目の衆議院選が行われることになるが、国民生活の安心のためを掲げて補正予算の成立を図って解散を先延ばししたことが、吉とでるか凶と出るか。総裁選最中に開かれた、たった1日の休会中審査で太田誠一農水大臣の首が飛んだように、国会審議では「事故米、消された年金、金融不安、不況…」と与党にとって有利な材料は何もない。ジリ貧の止むを得ず解散となって、この戦いで麻生内閣が史上最短内閣の記録を樹立することはほぼ間違いがない。たった一つ、恥も外聞もかなぐり捨てて政権にしがみついき、とにかく解散を先延ばしにする道を選べば、最短記録は免れるが…。


 一方の小沢劇場を公演中の小沢一郎民主党代表だが、長崎2区で福田衣里子さんの擁立を決めるなど、着々と名演技を披露している。
 僕は前のこの項に、民主党の必勝作戦は『全国の注目選挙区へ、話題を集める新人議員を擁立していくこと』と書いたが、これはある意味で選挙の王道でもある。どれほどインパクトのある候補を擁立できるかが問われるところだ。
 そして、もうひとつは自身のお国替えだが、これも【雑記帳9/16】に書いたように、太田公明党党首との対決は、公明党とも話がついている現時点での話題づくりだけのことで、将来は連携しなければならないかもしれない相手の党首に、ガチンコ勝負を挑むわけがない。
 かといって、絶対に勝てる選挙区を選ぶ必要もあり、民主党支持者から見ればちょっと高慢ちきな、そして自民党の一面の顔になりつつもある小池百合子との対決が、舞台としては最も盛り上がるのではないだろうか。
 お互い負けるわけには行かない戦い…、でも、ここで敗れては政治生命が絶たれる小沢一郎が、民主党の名誉を賭けた総力戦で、かろうじて戦いを制す。硝煙のくすぶる中、『諸君、日本の夜明けだぁ』と拳をあげる小沢…。駆け寄る、民主の若者たち…。
 敗れた小池は、やさしく迎えてくれる「兵庫6区」へと都落ちして捲土重来を期す。
「カァ~」とカラスが鳴いて幕…、チョ~ン!  


 近年の劇場型選挙では、名優を演じたものが当選するのが必定である。岩手の権六が、九州の無法松や東京10区の揚巻を蹴散らすことができるか。


 いざ………いざ……いざ…いざ、いざ、いざッ!




【165】 自民党総裁選は麻生で決まり! 注目は衆院選以降に…。  2008.09.11
       - 政権交代、政界再編への戦い -


 きょう、自民党総裁選が告示された。そして、新総裁は麻生太郎で決まり…。でも、自民党関係者も言っているように、セレモニーとして展開される5人の候補者による総裁選挙という結果の判っているレースは、自民党に活力を与え、毎日のテレビ画面を賑わして話題をさらい、その次に控える衆議院総選挙への弾みになることは確かだろう。
 単なる儀式に過ぎない自民党総裁選だが、これを鳩山幹事長が「乱立レースは(福田から麻生への禅譲)密約を隠すための茶番劇」などとコメントしているようでは、民主党も自民党の目論見にはまってしまうと言わねばならない。民主党も総選挙に備える派手なパフォーマンスを展開して、存在を示すことが今は何よりも肝要だろう。


 総裁レースを争うというよりも、仲良く手をつないで選挙カーの上で横一列に並び手を振る5人は、自民党の起死回生のマスコットボーイ&ガールである。
 それぞれの印象を一言ずつ…。
 麻生太郎…。誰を総裁に担げば次に控える衆議院選に勝てるか、それが総裁選びの唯一のキーなのだから、麻生の選出は揺るがない。安倍・福田と2代の総理に連続して引導を渡す役割を演じた彼が、政権から引導を渡される自民党の最後の総裁を演じるのは漫画チックだけれども…。でも、その役割が回ってきたというのは、今の彼の存在の大きさを証明しているということなのだ。
 与謝野馨は、ネットの総裁選ではビリだったけれど、本番では第2位だろう。総裁選レースを演出しなければならない自民党の台所事情から擁立された候補だから、それなりの背景は揃っていて、政治生命を失わない程度の票も用意されている。麻生との政策論争が楽しみだ。
 小池百合子…。政治の脇役として華を添える彼女は好きなのだが、表舞台に出てくるとなんと嫌味な女かと思ってしまう。まぁ今度の場合も、政界再編を視野に入れて、派閥の分割の核としての役割を演じているわけで、舞台の回し役ではあるけれど…。
 石原伸晃…。言葉が軽い。「一点の私心もありません」をメインにするなんて、原稿に書いてある言葉そのままでしかない。だから、何を話していたか、ひとつも覚えていない。心に残こらないのだ。自分の言葉で話さないと、永久に親父を越えられない。
 石破 茂は「自衛隊を軍隊に!」なんてカッコいいけれど、その目がイヤッ。それに、噛み締めながら話すような口調が、かえって信用できない。一昔前の大平さんを連想させる政治家といった玄人好みの印象だが、今風じゃないなぁ。脱皮しないと、次がないよ。


 政局の焦点は、すでに衆議院選挙に移っている。自民党は総裁選の盛り上がりをそのまま衆議院へとつなげて、10月末には解散総選挙の日程を描いていることだろうが、この場合、民主党の作戦は難しい。あまりに見事な作戦を立てて、民主党絶対有利となれば、麻生新政権は解散を先に延ばすだろうし、かといって手を拱(こまね)いていれば、自民党総裁選に埋没してしまって、政権交代に届かずに終わってしまうかもしれない。 


 それらを前提として、これからの民主党の作戦を考えてみよう。

 まず、自民党総裁選と並行して、候補者擁立で話題づくりを進めることである。太田昭宏公明党代表の東京12区や福田首相の群馬4区へ有力な議員を比例区と並立して…、また、小池百合子、佐藤ゆかりといった地元定着度の浅い選挙区、さらには全国の注目選挙区へ、話題を集める新人議員を擁立していくことである。「民主党は政権をとる。そのためにはあなたの力が必要だ」という殺し文句を引っさげて、人気と見識のある新人候補者を発掘することだ。
 選挙戦のキャッチフレーズは『日本再生の鍵、政権交代!』。その説明は、「巨額な国費のムダ遣いや国の借金など、自民党政治は行き詰まっています。社保庁や農水省に代表される官僚の不祥事、企業の不正など、自民党長期政権は日本の政治・官庁・企業に癒着を生み、馴れ合い、利権、談合などの風習を蔓延させてきました。こうした、世の中の至るところに溜まっている、社会のチリや澱(よど)みは、一度、政権が変わらないと掃除することはできません。政権交代で日本に溜まったホコリやヘドロを掃除して、日本の風通しを良くし、活力を取り戻しましょう」といったところか。


 ただ、政権をとった民主党が、本当に国民の望む政治ができるかどうか、そのへんが悩ましい問題だ。国民は、緩やかな変化を望んでいる。そして同時に、目に見える変化も期待している。だから、全体的にはゆるやかで、ある部分では象徴的に劇的な改革を行っていかなくてはならないという、交代した政権ゆえの課題がある。そして何よりの懸念材料は、民主党は支持母体の多くの部分に、組合連合を持っているということである。
 連合勢力の強い三重県(私の地元なので何かと目に付く)を見ていると、組合民主主義がはびこり、決して公務員の活性化や意識改革は推進されているとは言えず、北川県政時代よりもむしろ後退し、先日の全国学力テストの結果に見るように、教育は低迷している。
 民主党の政治が、連合・自治労・企業組合などの支持から脱皮できず、組合官僚主義に偏るようなことがあったら、国民はすぐに民主党を見限り、もう二度と連合勢力が推す政党に政権を預けることはしないだろう。
 政権交代が実現したとしても、そこからが小沢一郎にとってはイバラの道で、横路・鉢呂・赤松といった古くからの労働組合上がりの議員が反小沢のノロシを上げて路線決定に異論を唱えるとき、果たして妥協せずに新生日本を築くための民主党路線を貫くことができるか。そこでこそ、民主党の真価(正体かナ?)が問われる。


 僅差の政権交代…、あるいは民主党も自民党も過半数に達しなかった場合、政界は雪崩をうって再編の嵐へと突入することとなる。長くなるので、このことはまた改めて…。





【164】 NHK とことん話そう税金のこと()  9月6日の放送を見て


 9月6日(土)の放送当日は所用でテレビを見られなかったのだが、ビデオに録って昨日拝見した。感想を結論から言えば、番組に意見を書いて送ったものとして多少厳しい見方をしていることとは思うが、出席者の主張の羅列に終始し、何の方向性も納得も見出せない3時間半であった。出席者それぞれの発言はテーマから逸脱しているし、言いっぱなしで広がらないレベルの低さであった。ゲストの伊吹文明財政相、竹中平蔵慶応大教授(歳出削減・構造改革)、森永卓郎独協大教授(減税・景気浮揚)、土井丈朗慶応大准教授(増税・国庫安定)の話へも、突っ込み不足で議論が深まらない。「しっかりしろ、NHK」というところだ。


 番組を、放映された順に見ていこう。
  ( ●は、番組の中での発言とそれに直接関係する記述。その他は僕の感想 )


 ① 次の何を優先すべきか。 (数字は、視聴者からのアンケート)
  1.減税・景気対策 25%、 2.歳出削減・改革 65%、 3.増税・安定 10%


 圧倒的に「歳出削減・構造改革」が支持されたというのは、年金問題、遅々として進まない公務員改革に対する、国民の怒りの表れであろう。国のムダ遣いは明々白々、それに頬かむりして税金云々なんて、議論するのもアホくさいといったところか。


 今日、興味深い数字を見たので参考までに…。 「08年度公益法人白書


・ 日本の公益法人は、明治29年の民法制定とともに始まりました(第34条)が、新しい制度が平成20年12月1日から施行されます。

・ 公益法人の数 … 昨年 3049法人、→ 今年 3054法人 (+5) 増えている!
・ 天下り理事の人数 … 去年 8054人、→ 今年 7584人 (470人減)

   国土交通省 2230人(昨年より-2人)、厚生労働省 1325人(+121人)

・ 天下り常勤役員の年間報酬
  400万~ 800万円  578法人、   800万~1200万円  483法人
 1200万~1600万円  448法人、  1600万~2000万円  198法人
 2000万円以上       10法人、  報酬総額は 明らかにできないとしている。
・ 補助金の総額 3524億円


・ 事業発注・補助金交付 12兆6047億円(06年度)  【日本の財団法人一覧】 


 これら3000超の公益法人の全てがムダとは言わないけれど、ほとんどはなくても困らない。あったほうがいいというところが多いのかもしれないが、あったほうがいいということは なくても困らないということである。後期高齢者の医療費に自己負担の増額をお願いしなければならない状況の中で、無理して残さなければならないところはまずない。




 ② 消費税率を上げることについてどう思いますか。
  1.やむをえない  35%     2.反 対  65%

 
 ● この中の議論で、息吹文明財政相は、「現在、歳出は社会福祉費に21兆円を使っていますが、消費税は総額で12.5兆円。その中から地方へ渡す金額など5.5兆円が支出されるので、国は消費税から7兆円しか使っていない。だから、『消費税は福祉関係に使うと言ったんじゃないか。なのに使われていない』という議論はあたらない」と言っている。
 ン?、息吹財政相自身が上の発言の中で、『地方などへも渡している』と言っている。そう説明しておいて、『だから、使われていないという議論はあたらない』と言い切る論理構造はどうなっているのか。混乱・自己矛盾以外の何ものでもない。


 ● また、大企業に多額の消費税の還付金が払われているという指摘にも、「企業は原材料に、仕入れの消費税分を上乗せしたものを仕入れて使っているのだから、消費税分が還付されて当然。大企業であろうと中小企業であろうと、公平に還付される」と説明している。
 私が先の回答書のQ5で指摘した問題である。輸出した商品には消費税は取れず、仕入れ分の還付だけが行われて、国庫を圧迫する結果になっている。輸出関連企業に対してのみ適用される税制で、決して公正なものではない。国の財布から言えば、売ってもらわないほうがいいわけで、税制を改定しなければならない問題だろう。


 ● 定番のように、「国の借金が財政を苦しめていて、日本の財政は青息吐息…。だから消費税率のアップを…」といった危機をあおる議論が相変わらず堂々と述べられている。でも、Q4-1に記したように、世界のどこを探しても、日本が財政危機だという議論はない。早く国の借金を返さないと日本は破滅だというのは、増税を実現を目的とするウソである。


 私としては、回答書のQ1に書いたように、近代国家として福祉を充実させることは責務であると思う。そのための財源として(消費税18%程度)の増税はやむをえないと思う。




 ③ 法人税は、昭和61年には43.3%だったのが、平成11年に30%に引き下げられ、以降そのままである。
 また、高額所得者の所得税は、昭和61年には88%だったのが、平成11年に50%に引き下げられ、法人税同様その後は変わっていない。
 この、引き下げられたままの法人税・高額所得者の所得税をどう思いますか。


 タバコ、酒などの税率引き上げ、配偶者控除控除の廃止、定率減税の廃止など、庶民の財布からは絞り上げるばかりである一方、法人税や高額所得者の所得税は引き下げられたままである。景気は低迷し、生活が苦しくなっていると答えた世帯が57%に及ぶ現今、法人税や高額所得者の所得税が引き下げられたままであるのは、納得しがたいことであろう。
 しかし、後進国の追い上げ、市場の拡大、国際的競争の激化など、クローバーリズムの波の押し寄せる中で、企業競争力の強化は至上命令である。回答書Q4-2に書いたように、税収のアップは好調な企業活動による収益をベースにするべきであって、それには景気回復を図り、企業の活動を支援していくことが必要である。もちろん何が何でも企業を助けろというわけではないが、現状の法人税30%は安すぎるからもっと引き上げろということにはならないと思う。
 日本市場の低迷は、諸規制の多い日本を外国企業が嫌ったこともあるが、法人税30%が高すぎるとして外国へ移ったということも多いに関係している。香港の法人税は18%、多くの企業が東京から逃げ出し香港へと逃げ出していて、東京株式市場の低迷と香港市場の活況は鮮やかな対比を描いている。




 ④ 高齢者が社会保障費を負担することは、どう思いますか。
  1.やむをえない 56%、   2.反対 44% 


 今のお年寄りたちは、戦前戦後の日本を支え、焼け跡からの復興を遂げて、私たちが暮らす今日の繁栄を築き上げるためにひとかたならぬ努力を積み重ねていただいた方々である。また、その資産は、現役の頃には一生懸命に働き、貯蓄に励み、また当時には相応の税金を払って来られたのである。
 その世代の方々を若者が支えるのは、当然の話であろう。が、政治家がだらしなかったからだとしても、苦しい国の台所事情に、少子高齢化社会を迎える日本の現状を見ると、暮らしに余裕のあるお年寄りに、社会保障費負担のお手伝いをお願いすることは、許されるのではないだろうか。
 

 ● 息吹財政相が、「公平という言葉は人によってみんな違う。簡単に「公平」という言葉を使わないようにしたい」と意図の解らない発言を繰り返していた。世の中の共通項を集約していくのが政治というものであり、その政治家が「公平」を口にするなと言う真意が解らない。自分たちの政治が公平でなかったということ証か。今の政策を進めていくと、公平感が著しく損なわれるから、公平という言葉を使うことを牽制したのか。


 ● 最後に、「政治が悪いと言ってしまったら、何も解決しない」と言った息吹財政相と、竹中氏が、「政治の結果は、民主主義という体制のもと、政治家を選んだ国民の責任」と言っていた。それも確かなのだろうが、これまた 何も解決しない言葉ではないか。
 それとも、近々に予定されている総選挙で、「道路を造れ」と叫び続けて族議員と呼ばれ 一部団体の利益を代表している、古賀とか二階とかいった議員を選ぶなと言っていたのだろうか。


 3時間30分の番組を見終わった感想は、何も残こらないという疲労感だけであった。不特定多数からアトランダムに(多分)人員を集めてスタジオに招き、自由に議論させるだから、まとまりのある話をしろと言うほうが無理なのかもしれないが、それにしてもテンデンバラバラでやかましいだけの印象であった。
 それでも、消費税を含めて、増税には強い嫌悪感を持つ人が多いことがうかがえた。高福祉社会を実現しようとするのに、もう少し理解があるかと思っていたけれど、やり放題の公務員の姿を見せられて、税金のムダ遣いに怒っている国民は、おいそれと増税を許しはしないということだ。
 景気浮揚、財政再建、高福祉高負担社会の構築を目指さねばならないこれからの政治は、よほどの覚悟で公務員改革を初めとする、目に見えるムダの排除に取り組まなければ、国民の納得と協力は得られないということである。





【163】 日弁連、司法試験合格者定員増に待った!        2008.09.11
    - 弁護士の 正体見たり 自己弁護 -


 今日、法務省の司法試験委員会は、法科大学院(2004年発足)の修了者を対象とした、3回目の新司法試験の合格者を発表した。合格者数は2065人(男性1501人、女性564人)。合格率は33%で初めて3割台に落ち込み、委員会が今年の目安とした2300~2500人を下回った。(毎日新聞)
 それでも、2001年6月の司法制度審議会の最終報告を基に、政府は2002年に3000人増員の方針を閣議決定して法科大学院を開設し、合格者数は06年に1558人、07年には2099人と、かつての500人に比べて急増してきている。


 裁判期間の長さ、弁護士費用の高さ、裁判所の行政寄りのスタンス、ひとりで何十件もの案件を抱える裁判官や弁護士など、国民に十分な法的解決を供給していないと批判されてきた法曹界が、2009年5月にスタートする裁判員制度などをにらみながら、広範な司法制度改革の実施に踏み切り、司法制度改革審議会を設置したのが1999年であった。
 2000年11月、弁護士増員(3千人計画案)への対応を迫られた日弁連は、臨時総会で8時間以上の大激論の末に、賛成7437人、反対3425人で推進する決議を採択し、弁護士の数を毎年3000人増やすことを政府に提言している。
 これらを受けて2004年、全国に法科大学院が設置され、修了した者の50%程度が司法試験に合格することを目標とした。実際には30%程度が合格しているが、それでも3000人には届かず、今年の合格者は2000人を少し越えた程度…。でも、旧制度では年間500人であったものが2000人に増えたのである。


 しかし、法科大学院の標準修業年限(3年)を経た卒業生が巣立った2007年10月12日、中国地方弁護士会連合会はブロック大会で「司法試験合格者を適正水準まで削減するように求める議題」を賛成多数で採択している。その理由として、3000人の根拠が不明、弁護士の就職が厳しい状況にある、弁護士の質が低下する、過当競争で弁護士が営利獲得に走る…などを挙げている。続いて、中部弁護士会連合会も10月19日に同趣旨の決議を採択、仙台、干葉県両弁護士会は「弁護士増員問題対策本部」の設置を決めた。
 司法改革を主導しているはずの鳩山前法相からは、「受験勉強に偏らない法曹教育」「司法を身近に」といった改革の理念とは相いれない発言が続いた。的外れな発言を頻発する鳩山邦夫だが、ある法務省幹部は「司法制度改革審議会が開かれた当時の熱気も経緯も知らないから、言いたくても言ってはいけない『本音』を口にできたのだろう」と冷ややかな感想を述べている。


 こうした情勢のもと、今年(2008年)2月8日、全国に約2万5千人いる弁護士の団体「日本弁護士連合会」の会長選投票が行われ、東京弁護士会所属の高山俊吉氏(67)を破って、大阪弁護士会元会長の宮崎 誠氏(63)が選任された(任期は4月1日から2年間)。
 この選挙の焦点は、司法試験合格者を2010年までに年間3000人にするという政府計画と、09年春から始まる裁判員制度への対応だった。増員反対の高山氏に対して改革推進派の宮崎氏という構図で、宮崎氏が当選したことは、前執行部が進めてきた定員増・裁判員制度実現へ、会員の賛成が得られたということになりそうなのだが、選挙戦の途中に政府計画案の見直しが発表されたり、宮崎氏も改革見直しを口にするなどして、改革推進があいまいになってしまった。
 こうしたいきさつを経て宮崎新会長は決まったのだが、弁護士会の役員人事など実はどうでもいいことで、ここで問題にしたいのは、司法試験の年間合格者定員増に対して、日本弁護士連合会(日弁連)が待ったをかけたことだ。
 宮崎新会長の会長選最中の変節振りからも推測はされたものの、その就任の弁で、「『法曹人口が急拡大するなかで、弁護士のニーズは拡大していない』という会員の不満が表れたことは謙虚に受け止めたい」とコメントし、「日弁連」の司法改革への取り組みは危ういものになってしまったのである。
 さらに今年7月18日、3000人合格の政府目標について「日弁連」は行動を起こし、「法曹人口の急激な増大は司法制度の健全な発展をゆがめる」として、合格者増加のペースを落とすよう求める緊急提言をまとめた。理由は、司法修習生の終了試験(考試)で大量の不合格者が出ていること、弁護士事務所への就職が困難になっていて先輩弁護士から指導を受ける機会が少ないこと、よって法律家の質が低下する恐れがあること…などを繰り返している。
 検察官のバッチの「秋霜烈日」に対して、弁護士バッチ(正しくは弁護士記章と言う)は、表面を十六弁のひまわりの花とし、その中心部に秤一台を配している。ひまわりは正義と自由を、秤は公正と平等を意味しており、弁護士は自由と正義、公正と平等を追い求めることを表しているといわれるが、果たして自らの弁護士記章に照らして我が行いは恥じるところはないだろうか。


 アメリカの総人口が2006年に3億人を突破(世界第3位)しているが、弁護士数は約100万人。弁護士1人当たりの国民は300人である。同じく日本は総人口1億3000万人で、弁護士数は2万5千人だから、弁護士1人当たりの国民は5200人となり、アメリカのレベルに至るにはまだ17倍の弁護士が必要である。
 もちろん訴訟社会のアメリカとは国情も違うから、同じ割合の弁護士数を揃えろとは言わないけれど、現在のように地方自治体の主催する相談会にはホンの2~3時間で50000円の報酬を受け取り、庶民レベルでは弁護士費用が賄い切れないから裁判に掛けることもできないといった高みに自らを置いて、弁護士の数を増やすなと言うのは、世の中の納得を得られる話ではない。遅々として進まない裁判や、司法が身近なものにならないことも含めて、司法が高嶺の花であるのは、みんな法曹関係者の絶対数が少ないからである。だから3000人は到達点ではなく、増やすことはあっても減らす必要はない数字だ。
 加えて、やりたい放題の弁護士活動がまかり通っていることも、弁護士が稀少な存在だからだろう。弁護士は法律に照らして社会の正義を守る存在か…、とんでもない、自らの依頼人の利益を守る…、すなわち自らの利益を守る存在でしかない。
 社会正義に照らして、法律をもとに判断して、相手方が正しい場合であっても、知らないがゆえに相手が主張しなければ、相手の利益になるようなことを言うことはない。甲乙の仲介に立つ場合でも、どちらの側に立てば自らの利益になるのか…、更に言えば、甲乙のどちらに軍配を上げれば自分にとって稼ぎになるのか…、それが弁護士の判断基準なのである。
 それが弁護士の正義だ…という主張を否定する気もない。しかし、それならば、「弁護士の質が落ちる」ことを理由として、増員に反対するとは言語道断ではないか。社会的正義を判断せずに、自らの利益を判断基準にしているものに、質が落ちると言う資格はあるまい。
 今年の合格者2065人は、十分に自分の利益ぐらいは守る知恵を持っている。司法の手続きなどは修習の方法を工夫することで補うことが容易な、枝葉末節の問題である。可能性のある有為な人たちをひきつけ、それらを育て上げて将来に役立てていくことこそ、今の司法改革に求められている根本的な問題だろう。過疎地にも弁護士を送る日本司法支援センターの創設など、社会の隅々に法律の光を当て、官僚や地方政治家、悪徳業者の横行を許さないという、法治国家の大儀を実現することを基盤としての議論を進めるべきである。
 先にアメリカとの比較を示したが、アジアの周辺国でも、韓国では04年度に司法試験合格者が1000人になり、人口比ではすでに日本を抜いている。中国では06年の司法試験合格者は3万7千人という数字だ。法曹者を増やして社会の正義や秩序を守っていこうというのは、近代国家としての営みの必然なのである。


 今回の新司法試験は、初めて法科大学院全74校から受験者があり、総数は6261人。合格者の最高年齢は59歳、平均年齢は29歳であった。出身法科大学院別の合格者数は、東京大が200人でトップ。中央大196人、慶応大165人、早稲田大130人、京都大100人と続く。合格率のトップは一橋大(61.4%)…、現役弁護士と比べても、決してレベルを心配する必要はないだろう。


 来年の裁判員制度の施行を控え、いまだ、司法センター設立の目途はたたず、地方の弁護士不足などは解消されていない。


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