第5日 9月22日(火) 何の因果か「100叩きの刑」

 午前7時。可愛いピンクのチャペルが朝日に映える「ラ・プリシマGC」。「おはよう、マスター」とプロショップのおじさんに声を掛けスタート時間を確認すると、「今、スタートを待っているのは、君たちだけさ。いつでも好きなときにスタートしていいよ」。「バックティを使っていいかい」と聞くと、「勿論いいけど、このコースでバックティからはクレイジィだ」と言う。あとになって知ったのですが、7196ヤード パー72 コースレートは76.2で、カリフォルニアきっての至広大な ラ・プリシマGC難のコース。この2ヶ月ほど後に、カリフォルニアオープンが開催されていました。

 日本だったら、コースが5つは造れるのでは
ないかという広大な敷地に、ゆったりとレイア
ウトされた雄大なコースだ →



 「でも、いいスコアを出しても、フロントからじゃぁ 値打ちないもんなぁ」と言いつつ、第1組のジャンケンオナー章くんはバックティ(青マーク)から第一打をパッカーン!
 まずまずのショットをフェアウエイに放ってセカンド地点に行くと、ボールは朝露に濡れたベント芝に少し沈んでいて、何となく嫌な感じがしたもののフェアウエイからということでスプーンで打ったところ、手前の芝に噛んでしまってボールは2〜30ヤード転げただけ。「ゲッ、しまった」と打った第3打もやっぱりチョロ…。
 何が「いいスコアを出しても…」なものか、この粘り気のある芝生と長くタフなコースに、1番ロングは9、2番ミドルが右の池に入れてトリ、3番ラ・プリシマのブッシュショートをダボ…ときて、もう怖いものなし! 章くんはいつ以来か、少なくともこの10年間は記憶にないという100。
 「いっぺん70台を出さにゃぁ、日本に帰れやん」と言うと、スコアの悪かったみんなは「そんなもの帰れるかィ、帰化せい、帰化…」とつれない。 

← 茫然自失!  「ここから打てと、言うンかい」


 打ちのめされて傷心を抱きつつ、しかし章くんたちは宿命のツアーアマ。午後2時30分、101号線を海岸沿いに北上し、次の目的地モントレーへと向かいます。 
 やがて空一面を紅に染めるカリフォルニアの夕焼け。はるか太平洋の彼方に、黄金の夕日を包んで茜色のカーテンが沈むと、振り返る東の山々の稜線はコバルト色の縁取りに彩られ、いつしか瞬き始める金銀の星のきらめき…。
 

第6日 9月23日(水) 地獄の砂丘「スハニッシュベイGL」

 今日はいよいよカリフォルニアゴルフのメッカ、モントレー半島。ペプルビーチ(PB)は予約が取れなくて、私たちはもうひとつのPBと言われる「スパニッシュベイGL」でのプレーです。
 クラブハウスに向かう道はコースの中を横切って走っていて、ボールが車を直撃するのではないかと心配したのですが、開場以来このレイアウトなのでしょうから、そんな事故は起こらなかったのでしょう。道路から、打球音も聞こえますし、ショットの様子もよく見えますから、車の窓を開けていて、「ケッ、下手くそ!」などと言おうものなら聞こえてしまって、日米開戦です。
 コースに着いた章くんたちは、1番ティ横のテラスで、ミルクを飲みながらスタートの順番を待ちます。太平洋に面したこのコースは、この日も朝のうち海からの霧が垂れこめていましたが、スタートのころには上がって絶好のスパニッシュ・ベイGL 1番のティグラウンド横にあるカフェテラスゴルフ日和。「さぁいくぞ〜」、また青マークからパッカーン!

 1番ティグランド横のテラス。ここでコーヒーなどを飲みながらスタートの順番を待つのかと思いましたが、客は私たちだけ。みんな、ティグランドの横に並んで待っていました。アメリカのゴルファーは、余分なことに金は使わない。  →

 海岸沿いの砂丘にたっぷりと水を撒いて作ったこのコースは、やや粘り気のある芝生は厚く、ボールは少し沈み気味になりますが、ダウンブローに打ち込むと大きなターフが飛んでボールが舞い上がります。しかし、例えば1番のティショットは、少なくとも170ヤードほど打たなければフェアウエイに届かず、左右に曲げれば靴が隠れるラフか砂地です。
どこへ打ってもダメッ! スパニッシュ・ベイGL 9番 パー4← あそこのフェアウエイまで打たなければ、ボールは砂地かブッシュの中…。でも、力をいれて曲げれば、やっぱり同じ運命が待っています
 スライスは右に見えている砂山へ、引っ掛ければ左のブッシュ…! 助かりたければ、真ン中彼方のフェアウエイに打つしかないのです。

 このコースでプレーすると、バンカーやラフは救済施設であることがよくわかります。バンカーは粘るラフよりも易しいし、ラフはその外側の砂地やブッシュの中よりも、はるかに易しいからです。
 ラフの外の砂地…、その恐ろしさは思い出すのもおぞましい。バンカーは均らされた砂地ですが、ここの砂地は山あり谷ありの凸凹の砂地。ボールは全て谷の中へ止まり、打とうとしてもクラブヘッドは全て手前の山の部分に突き刺さってしまって、ボールに届きません。結果はチョロか空振り…、あるいははるか手前を叩いてボールは微動だにしないというのが普通です。脱出に何打を要するか保障がない。せっかくガマンに我慢を重ねてきても、ひとつのホールで8も10も叩いてしまって、あとはブッち切れ!。
 この日、ベストスコアが97、悪いのは117も叩いた面々は、「このままでは帰れやん!」。フロントの兄ちゃんに「明日、空いてる?」。12時のスタートを予約して帰りました。


第7日 9月24日(木) 返り討ち

 今日のスタートは12時。久しぶりに朝はゆっくり…。と、事件勃発! 隣の部屋がもぬけのカラなのです。
 聞けば、4人が6時に起きて、近くのパシフィックグローブGCへラウンドに行ったという。もう、どうかしてるんじゃないの…?
 まぁ、もともとどうかしているのばかりが集まってやって来たのだから、今さら言うほうが無理というもの。昼前に再挑戦のスパニッシュベィGLへ行って練習グリーンにいると、4人が息を切らせて帰ってきました。「13番で切り上げて帰って来たンや。せっかくニギリ…勝っとったんやけど」。途中で時間切れになるのは解かっているのに、それでもこの連中、ニギッて火花を散らしていたんだ。情けない!
スパニッシュ・ベイGL 17番
 で、改めてスパニッシュベィGL、再挑戦!。… そして、予想通りの惨敗。章くんは昨日97の今日99。完璧な返り討ちにあい、「僕はホントにハンディ5なんだろうか?」と、JGAハンディに重大な疑念を抱かざるを得ない事態でした。
 「明日もやるか?」と言ったのですが、さすがにみんなあきらめてモントレーをあとにし、サンフランシスコ近郊のシェアラインへと向かいました。



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カリフォルニア・ゴルフ紀行 その3

その1