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第3日  アシニボイン・ヘリコプター観光 〜 レイク・ルイーズ 
       〜 レイク・モレーン 〜 コロンビア・アイスフィールド 〜 バンフ



 ジリリリーンッと枕もとの電話のベルがなった、まだ4時過ぎじゃないか。「ちょっと窓の外を見てよ。すンごい朝焼け」。またまた少女に戻っている奈津子からの、感激キャンモアの朝焼けテレホン…。
 寝ぼけ眼で顔を出すと、東の空が燃えるような朝焼けだ。『やうやう白くなりゆく山ぎは … 紫だちたる雲の細くたなびきたる』とはこの風情か。カナダだから、茜色なんだな。ン、あれは春だったか…などと思案しながら、章くん、もう一度ふとんにもぐり込んだ。

                    
アシニボイン国立公園
6年前の絵葉書がこれ



 8時に起きて朝食を済ませ、9時前に出発。今日はまず、アシニボイン国立公園を空から観光するヘリコプターツアーだ。
 アシニボインは、章くん、6年前にロッキーを訪れたときに、そこへ入るには自動車やオートバイは禁止… 歩きか自転車かヘリコプターしかない…、それほど自然を守ることに慎重な一帯なのだと聞き、後日必ず訪れてみたいと思ってきた憧れの地である。
 アシニボインを訪れる人々は、公園内の山小屋(ロッジ)に泊って周辺を散策、3〜7日ほどのトレッキングを楽しむという。キャンモアからヘリで10分、歩くと5〜6時間…。章くん、ゴルフ場以外は歩けない。
 9時30分に、ヘリコプターセンターへ来るようにと言われている。ホテルからはものの10分…、9時過ぎに着いた。

キャンモアヘリセンターに並ぶヘリコプター
 ツアーに参加する人たちが、次々と集まってくる。みんな歩くのが苦手な人たちなのだろうか。
 簡単な説明があって、あとは搭乗の順番を待つ。

        
 
   待機中のヘリくんたち →




← 「私、ヘリコプターは初めてなんだけれど、大丈夫かな」
  と、ガラにもなくビビッている奈津子



                   
スリーシスターズを上から

 10時過ぎに名前を呼ばれてヘリへ。3点式のベルトをしっかりと装着して、さあ出発だ。
 キャンモアのシンボル、スリーシスターズの左側を旋回して、ヘリは高度を上げていく。


← スリーシスターズを上からパチリ




 飛行コースが定かでないので、左右に見える山々や眼下の渓谷や湖の名前が解らない。一帯にはおびただしい山々や湖が点在していて、地図には「Mt Rundle」「Middle Lake」「Haling Peak」「Grassi Lake」「Many Springs」…などの名前がびっしりと並んでいるが、チェックしたって、どうせすぐに忘れてしまう。ということで章くん、山や湖の名前を追うのを諦めた。


      渓谷も雄大だ → 

                     








← レイク・マーペルかな?


 大パノラマや名峰の数々が次々と現れては過ぎていく。少女奈津子は、もはや声もない。「生きてて良かった」なんて哲学的なことを口走っている。


                                  
これがロッキーのマッターホルン、アシニボインだ やがて眼前にアシニボイン(3618m)が見えてきた。周りの山々からひときわ抜き出て屹立するその形から、ロッキーのマッターホルンといわれている。   


    これがアシニボイン(右奥)だ →


 目の前をカナディアン・ロッキーの絶景が横切っていく。氷河が山肌を流れて、末端が崩れ落ちている。氷河から溶け出した水が、断崖から滝となって落下していく。

             
アシニボイン氷河の末端 ヘリは山頂近くの絶壁へドンドン近づき、「うわぁぶつかるぅ」というところでガクンと高度を上げて、山を向こう側へ越えた。
 「ギャ―ッ!」、章くん、心拍数200、『俺は高所恐怖症なんやぞ。物心ついてから、絶叫マシンとかに乗ったことァないんや』と日本語でブツブツ…。


← 氷河の端っこ 

ヘリコプターツアーの帰途
 飛び立ってからここまでで、あっという間の20分。ヘリは機首をめぐらせて帰途に就く。
 帰りは往きと違ったコースを飛んで帰るようだ。もちろん、ここにもロッキーの大景観…。
 やがてキャンモアの町が見えてきた。絶景ツアーの終わりである。章くんの6年越しの憧れは、30分の大パノラマとして、しっかりとまぶたの奥に焼き付けられた。
 奈津子は言葉もなく、昭ちゃんも「また、家族で来たいと思います」と言っていたから、大満足だったのだろう。


 ヘリツアーの帰り道に見た渓谷      →
  カナディアン・ロッキーが、氷河の侵食に
  よってできた地形であることが実感される。




 車に乗ったのが11時少し前。このあとは、カナディアン・ロッキーの定番、レイク・ルイーズ、レイク・モレーンから、できればコロンビア大氷原まで走るつもりである。
 キャンモアからレイク・ルイーズまでは、およそ70Km。バンフを通り抜けて、カナディアン・ハイウエイ1号線をひたすら北へと走る。
 この1号線は「トランス・カナダ・ハイウエイ」と呼ばれている、カナダを東西に横断する高速道路の一部であって、そのハイウエイは、西はブリティッシュ・コロンビア州の州都、太平洋に面したバンクーバー島の南端にあるビクトリアから、東は大西洋を望む町、ニューファンドランド州のセントジョーンズまで、約8000Kmも続いている。この距離は、東京〜バンクーバー間が7500Kmというから、太平洋を横断してしまう距離である。
 カナダはでっかい!
バーミリオン湖とランドル山




← バンフを過ぎてすぐの左手にある
  バーミリオン湖、【拡大】
  対岸にはランドル山がそびえている。



 この道、左右に、絶景…また絶景…が続く。





 バーミリオン湖を過ぎて間もなく、行く手にメガネのかたちをした橋が出てきた。上部がゆるやかに湾曲している。
 「何、あれ…?」といぶかる奈津子に、「陸橋や」と昭ちゃんが説明している。「上がデコボコだよ。誰が通るのさ?」「牛や馬や熊や鹿や狸や羊や猫や…」、「はいはい、分った分った。ン、猫ォ…?」アニマル・オーバー・パス
 この国道が4車線になってから、野生動物が交通事故に遭うことが多くなった。車道に出て来ないように柵を設けたところ、棲み分けが進んで生態系に異変が生じたという。そこで、このアニマルオーバーパスが渡されたのだ。


  動物専用の横断歩道            →
   野生動物くんたちは、この橋を通って 仕事に
   行ったり、恋人に逢いに行ったりしている。



 やがてレイクルイーズ・ジャンクション。左へ降りていくと、一帯はお店やさんやホテルが点在する観光客相手のエリヤである。ここから3〜4Km、坂道を登ったところに、カナディアン・ロッキーの宝石「レイクルイーズ」が、ひっそりとその姿を横たえている。
( グーグルの航空写真ページへのリンクです。) 

                  
カナディアン・ロッキーの秘宝 「レイク・ルイーズ」 もはや、この湖についての説明は不要だろう。季節によって、いや朝昼夕の時刻によっても、天候によっても、日々刻々とその表情を変えるという気まぐれなルイーズ王女さまは、この日はことのほか機嫌がよく、湖面はどこまでも穏やかであった。湖畔にて 【拡大】


 章くん、コートを羽織って
 いる。 少し日がかげると
 風は冷たく、肌寒いほど →



 ちょうどお昼時だったので、湖畔のホテル「シャトー・レイク・ルイーズ」で何か食べようかとも思ったのだけれど、時間が押しているし、レストランもティラウンジも昼間の営業はしていないというので、章くんたちはそのままこの奥15Kmほどの「レイク・モレーン」へ向かうことにした。
 上り坂を走ること20分、左手にテンピークスの峰々が見えてきた。

すれ違ったキャンピングカー
  すれ違ったキャンピングカーとテンピークス →
   キャンピングカーでロッキーを巡る人も多い。
   カナディアン・ロッキーではキャンピングカー
   をレンタカーのリストに並べている。
   世界でもレンタカーとしてキャンピングカーを
   貸し出しているところは、珍しいのではないか。



 ほどなく駐車場に着き、その横にあるレイク・モレーン・ロッジをのぞくと、それほど混んでもいない。
 「食事しますか?」と昭ちゃん。「コロンビアの氷河を見に行くならば、食べてる時間はないかな。ここらで食べられるものを買って、かじりながら走るか」と、章くん。
 章くんは6年前に行っているけれど、できればこのレイク・モレインのあと、コロンビア大氷原まで行って、昭ちゃんや奈津子に氷河の上を歩かせてやりたい。
「夕食に、ちょっといいものを食べさせるからな」となだめると、「ホントでしょうね」と言いながら奈津子もクッキーを買ってコーラで流し込んでいた。
 「10分でいいから、ボートに乗ろうよ」、奈津子の提案で行ってみると、ボートならぬカヌーである。「昭ちゃん、乗るか?」と聞くと「いいです」初めてのカヌーと言うので、章くんと奈津子で乗り込んだ。安定が悪い…、よく揺れるので奈津子は落ちそうになって、悲鳴を上げる。なかなか真っ直ぐに進まない。あの氷河の末端を見に行こうと言ったけれど、半分も行けずに同じところをグルグルと回っていて、27ドル。


 レイク・モレインをあとにした章くんたちは、やがて1号線に別れを告げて右折し、「アイスフィールド・パークウエイ(93号線)」を北へ向かう。世界で最も景色の良いハイウエイといわれるこの道、前後左右にカナディアン・ロッキーの峰々が続く。


 左側に、大きな湖が見えてきた。バンフ国立公園で3番目に大きいボウ湖だ。正面の奥に見える氷河はボウ氷河…、その融水を集めて湖水としている。ボウ湖
 この辺りは標高が2000mを越えていて、山肌が露出している山が目立つようになってきた。カナディアン・ロッキーの森林限界線… 2100〜2300mに近づいているのだ。
サンワプタ峠







  ↑ ボウ湖とボウ氷河
    この湖水がボウ川の流れとなる


 ここからコロンビア・アイスフィールドまでは110Km、1時間30分というところか。
 道は急な上り坂へとかかり、九十九折の道を上りきったところがサンワプタ峠。展望台からは、走ってきた道が眼下に一望される。大きな視界が開けた、絶景のビューポイントだけれどゆっくりしている時間はない。


 しばらく走り、緩やかな左曲がりのカーブを過ぎて山あいを抜けると、突然、左手の間近にに大きな氷河が現れた。コロンビア大氷原から流れ出してきている、アサバスカ氷河の末端部分(舌先)だ。奈津子は「キャッ」とのけぞっている。昭ちゃんは「すごいですねぇ」とその迫力に圧倒されている。
 コロンビア・アイスフィールド・センターから、直径1.5mほどのタイヤが6本もついている雪上車に乗り換えて20分ほど、アサバスカ氷河の上に立つ。


← この氷河の上流、彼方の雲の下に
 コロンビア大氷原が広がっている
【拡大】


 コロンビア大氷原は、325平方Kmの面積(名古屋市ぐらい)を持アサバスカ氷河の上にてつ、北半球最大の氷原だ。7億5千万年前から降り積もった雪が固まって氷となり、6つの氷河へ徐々に流れ出していく。それぞれの氷河から溶け出した水は、太平洋、大西洋、北極海の3つの海に流れ込むという、3大陸分水嶺である。


   アサバスカ氷河の上にて             →
    このあたりで、氷の厚さは300mほどあるという
 

  ↓ 6つのタイヤで走る雪上車
雪上車

 コロンビア大氷原から流れ出したアサバスカ氷河は、先端部で年間に約15m流れるという。ところが近年、20mほどずつ溶けていて、差し引き5mずつ後退しているとか。このまま地球の温暖化が進めば、やがてこれらの氷河はなくなってしまうかも知れない。


 「いゃぁ、興奮したわね」と、奈津子は感激冷めやらぬ面持ち…、「何万年も前に出来た氷に触れてきたというのは、不思議なカンジね」。「もっと上へ登って、大氷原を見てみたいなぁ」、「足元を削ってみたのだけれど、氷河の氷って神秘的な青色をしているのね」、「地球温暖化を阻止せなアカンなぁ」と、昭ちゃんも相槌を打ちながら感激を語り合っている。

バンフ A1
 時計を見ると、やがて5時になろうかというころ。今夜の宿泊地バンフを目指して帰途に就く。
 レイクルイーズからは、往きに走ってきたカナディアンハイウエイから南へ入って、A1(旧1号線)を走った。この道はカナディアン・ロッキーの開発を支えた道…、いたるところに古き良きカナダが今も息づいている。道端で見送ってくれるリスくん

 カナディアン・ハイウエイは制限速度が90Km/h、Bow Valley Parkwayと呼ばれているこの道は60Km/h…。熊が出てきてもぶつからないようにゆっくりと走る。ときどきうしろから車が来るが、路肩へ寄って先にやり過ごす。おっと、右側へ寄らなくてはいけない。
             
A1の途中にて 左右の景観は、相変わらず飽きない美しさだ。ここカナディアン・ロッキーは、最高峰のMt.ロブソンの3945mを筆頭に、3000m以上の山々が肩を並べている。一帯は4つの国立公園に分けられていて、その広さは2万平方Km以上、世界自然遺産に指定されている。
 カナディアン・ロッキーの素晴らしさを伝える言葉を捜すのは難しい。「実際に足を運んで、見る」…そう勧めるのが最も確実に感動を伝える方法だ。

                                          
フォード エクスプローラ  この旅を運んでくれた フォード エクスプローラ →


    4.6L 水冷V型8気筒  SOHCエンジン 
   4ドア ワゴン 6速 オートマチック車。北海道の
   ブリザードの中を平気で突っ走ったという。
   寒さに強く 冬の厳しいカナダでは大人気なのだ。



 バンフA1は、レイクルイーズからバンフまで、ゆっくり走り、途中で何度も車を止めて風景に見入って、約1時間30分ほど…。時間があれば、ぜひ走ってみたい、お勧めのドライブウエイである。
ジャスパー・パーク・ロッジ
バンフ・パーク・ロッジ


 バンフの町に着いたのは、午後7時を少し過ぎたころ。今夜の宿は「バンフ・パーク・ロッジ」だ。
 実は章くん、バンフのホテルといったらここという有名な「バンフ・スプリングス・ホテル(今は名前が変わって、フェアモント・バンフ・スプリングスというらしい)」に、奈津子と昭ちゃんを泊めてやりたいと予約を入れようとしたのだが、2室1泊13万2千円という値段を見て、急に気が変わった。
 あとで分かったことだが、JTBのホテルランキングでは、このバンフ・パーク・ロッジもフェアモント・バンフ・スプリングスも、同じAランクである。宿泊費は半分なのに…。
 シャワーに入って着替えてからレストランへ…。町へ出ようかとも言ったのだが、昭ちゃんの胃袋は町まで徒歩10分がもたないと言う。アルバータ牛のステーキ


← アルバータ牛のステーキ。 美味しかったよ!


 食事のあと、町に出かけた。奈津子が、「バンフ・スプリングス・ホテル」を見てみたいというので、途中の店をのぞきながらブラブラと歩いていバンフ・スプリングス・ホテルった。町は観光客で溢れている。


 フェアモント・バンフ・スプリングス・ホテルは、町の中心部から少し離れている。15分ほど歩いていくと、その威容が見えてきた。このホテルはヨーロッパの貴族の居城であってたものを、1888年、カナディアン・ロッキー観光の拠点にしようとパシフィック鉄道社が買い取って、ここへ移設したもの。見るからに中世のお城である。

 「ふう〜ん、これがバンフ・スプリングス・ホテルかぁ。へぇ〜、立派なものやねぇ。泊ってみたかったなぁ…」と、奈津子、絡み口調である。

 「章さんは前に泊ったンだよね」とまだ絡むので、章くん、「いやぁ、このホテルは有名だけれど、移設したのが120年前。建物はそれよりずっと以前のものだから、古くて、部屋の壁では虫くんが運動会をしているし、シャワーも突然水になったり熱湯になったりするンや」と口から出まかせの言い訳けをすると、「外国のホテルは有名なところでも、古いところはそういうところが多いと聞くわね」と、奈津子、意外にスンナリと納得している。
 「だから、こんなところはちょっとお茶でも飲んで、雰囲気を味わってくるのが一番いいんだ」ということで、豪華なラウンジでコーヒーを飲んできた。

夜のバンフ市内
 バンフの大通りの正面には、カスケート山がそびえている。写真で見るよりも実物はとても大きくて、存在感のある山だ。
 ダウンタウンから章くんたちのホテルまでは、ゆっくり歩いても10分とかからない。


 夜気が、頬にしみて冷たい。       【拡大】


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カナディアン・ロッキー・ゴルフ紀行 2006 P.2