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第4日  バンフ・スプリングスGC(The Fairmont Banff Springs Golf Course


 午前9時50分スタート。バンフ・スプリングス・ゴルフコースの僕もエルクくんも ちょっと緊張しています1番ホール414Yパー4、早速、エルク(へら鹿)ちゃんが出迎えてくれたのだが、遠くからじっとこちらをうかがっている。
 章くんは6年前にこのコースでプレーしたときに、雌のエルクの鼻っ柱にボールを当ててしまった。今日は、そのお詫びも兼ねて来ているのだが、顔見知り(?)なのに何かよそよそしい。
 奈津子、見つけたときは「ひゃぁ、鹿くんだわ」とはしゃいでいたが、近くへ寄っていくにつれてその大きさにビックリしていた。エルクは世界最大の鹿、肩高2mを越え、体重は500Kgに及ぶものもある。奈良の鹿とは、わけが違う。
 章くん、10日前にその奈良へ行ったけれど、そのときはまだカナダへ来るとは思って居なかったので、「鹿せんべい」を買ってこなかった。前回来たときボールを当てたエルリンちゃんに、今度来るときには「お見舞いを持ってくるからね」と約束していたのに…。
 それで、出発前にあわてて「ウエハース」を買ったのだが、カナダの法律では『野生動物にエサを与えることは厳禁』であると聞いた章くん、飛行機の中で食べてしまった。
 このエルクは、章くんがカナダに入ったという情報をキャッチして、様子を見に来たのだろうか。何も持っていない章くんを見て、「フン、口ばっかりの男だったわ」とよそよそしく冷たい視線を浴びせているのか。手ぶらで来たことの呵責に耐えられず、章くん、3オン3パットのダボスタートだ。

              
バンフ・スプリングス 4番パー3
 アウトで特筆すべきは、4番165Y、池越えのパー3で、Devil's caldron(悪魔の大釜)のニックネームがついている。「Golf course in CANADA」には「世界のバー3の中でも景観の美しさと手強さで指折りのホール」と紹介されているが、章くん、難なくパーだ。


← 4番165Y バー3


 1番のダボのあと、8ホールを5ボギーで上がって、このハーフは43。前回の47よりも好成績だけれど、やっぱり前回はバックティ(7083Y、74.4、パー71)から打っている。今日はレギュラー(6389Y、70.7、パー71)だ。


 前回、章くんはこのコースで47・53の100を叩いている。エルクちゃんに当ててしまった15番はトリプルボギーの7、そのショックを引き摺って16番は+4の8、17番ダボ、18番ボギーと崩れて、インは53だったのだ。10番 エルクが敵情視察
 そのイン、今日は慎重にいこう。まず10番204Y、コースの右側を流れるボウ川が切れ込んできていて、その上を打っていくパー3だ。    【拡大】
 ここにもエルクちゃんが1頭、様子を見に現れた。ちょっと緊張した章くんの3アイアンのティショットは、川の中で見ているエルクちゃんの頭の上を飛び越え、フックがかかって左のバンカーへ…。2オン2パットのボギー。
 エルクちゃん、「あんまり上達してないわね」と見届けたのか、間もなくどこかへ消えてしまった。
 11番389Yパー4、1パットのパー。12番416Yパー4、セカンドを4アイアンでナイスオン、パー。
 13番191Yパー3、前回は左手前のバンカーのアゴに捕まりトリを叩いた。今日は右へ打ち出したものの、フックがかかこれがバンカーだ!りすぎてやはり左のバンカーへ。ここバンフ・スプリングスのバンカーの砂は重くて、ヘッドを取られてしまう。かといって薄く取るとホームラン…、結構難しい。慎重に打って、乗っただけ…。2オン2パットのボギー。


← バンフ・スプリングスのバ14番のフェアウエイから、バンフ・スプリングス・ホテルを望むンカー
 見た目よりも
 ずっと 恐ろ
 しく 手強い。



 14番は川沿いの441Yパー4、このホールのフェアウエイからは、ホテルが正面に見える。3オン2パットのボギー。


   14番のフェアウエイから、
    バンフ・スプリングス・ホテルを望む→



 14番をホールアウトしてから15番のティグラウンドまでは、ゴルフカートで一般車と同じに、ボウ川沿いの公道を走っていく。15番ティグラウンドは途中で左へ折れて、バンフ・スプリングス・ホテルの裏手へ上っていく道の途中にあるのだが、実は左へ折れずに100mも行くと、ボウ滝がある。
 滝そのものは落差も数メートルぐらいのもので、イグアスとかナイアガラとは言わないまでも、日光の華厳の滝や熊野大社の那智の滝を見慣れている面々には、「何これ…滝?」てなものだが、マリリン・モンロー主演「帰らざる河」のいかだで濁流を下るシーン(だったと思う)の撮影現場として有名だ。実際にマリリン・モンローに下らせるわけはなく、モンローのアップは上半身のみで、あとは合成…。『ひと目で判る合成画面に苦笑した』とか書いていた記事を見た覚えがあるのだが、この記事を書いた人は『美女は何でも許される』ことを知らないのだろう。
 前の組はまだセカンド地点に行っていないし、後ろの組の姿は見えない。章くん、カートのアクセルを踏み込んで、そのままボウ滝へ直進…。いつも章くんが「最低のゴルフアーは、前を空ける輩(やから)」と言うのを聞いている奈津子は「プレーの途中に滝見物って、いいの?」とパニクッている。
 章くんは、前がどれだけ詰まっても、一緒の組の誰かがどれだけ叩こうとも、一向に気にならない。しかし、前のホールを空けていても、急ごうともしないプレーヤーは苦手だ。ゴルフは楽しいのが第一だけれど、自分だけが楽しければよいというのでは、ゴルフと違う…個室で一人でするプレーをしたほうがいいと思う。
 「ロストボールを捜しに行くのさ、だから5分間だよ。このあとプレーをテキパキして、次のホールで前に追いつかなきゃイカンぞ」と言いながら、章くん、写真をパチリ。


← うしろの段差がボウ滝


 ボウ川は、ここから様々に名前を変えながら延々と東へ7000キロを流れて、大西洋に注ぐ。


 「急げーッ」とやって来ました15番475Yパー4、エルリンちゃんの鼻っ柱にバッフィで打ったボールをぶち当てたホールだ。ここだけは以前と同じく、足がすくむような打ち下ろしのバックティから打たなくてはならないだろう。
 そのバックティはバンフ・スプリングス・ホテルの裏手へ登っていく坂道の途中、道のすぐ横手にあって、道を歩いバンフ・スプリングスGC 15番ている観光客が立ち止まって見ていく。
 今日はフェアウエイに、エルクの集団は居ない。物見のエルクちゃんが「あの危ない奴が来てるよ」と情報を流して、みんな避難したのだろうか。


       バンフ・スプリングスGC 15番475Y →
        6年前、右のバンカー近くのフェアウエイに
        居たエルリンちゃんに、ボールを当てた。



 ここのティショットはホントに強烈な打ち下ろし…。あまりの落差に、曲がりだしたらどこまでも曲がっていきそうで、思い切って振れない。当てただけのような章くんのティショットはちょっと右目、2段になっているフェアウエイの下の段だ。セカンドは、まだ230Yほど残っている。バッフィを取り出した章くん、アドレスに入ると、6年前の悪夢が頭をよぎった。
 エイッと打ったボールは、前回よりもひどいトップで、フェアウエイをゴロゴロと転がった。エルリンちゃんたちが居たら、今日も彼女たちの美脚にコーンと当てていたことだろう。
 まだ100Yほど残っている3打目を、AWでアプローチ…、ダフッたぁ。4オン2パットのダボ、でも前回よりも1打いい。
 16番385Yパー4、フェアウエイの左サイド200Y地点にこんもりした小山があり、バンカーが掘られている。ティショットでこの小山を越えなくては話にならない。バックティからは30Yうしろだからバンカーエルリンちゃんはプレッシャーだけれど、今日はレギュラーティから…。
 ところがそのとき、フェアウエイに1頭のエルクの影が見えた。待ち伏せか…。
 ヒビッた章くんのティショットは、フックがかかってそのバンカーへ転げ込んだ。前が見えないほど高くなっているバンカーだから、横へ出すしかない。
 3打目はまだ170Yほど残っている。5アイアンのショットはちょっと吹けて、またまた右手前のバンカーへ…。グリーンまでは40Yほどある。
 距離を出さねばならないバンカーショット、薄い目に砂を取ってと思ったら、クリーンに打ってしまってホームラン…。おいおい、5オン2バットのトリ。見送るエルクちゃんの口元は、心なしかほころんでいたようだ。
 17番337Yパー4、ラフの中にエルクちゃんたちの影がちらほらと見え隠れしていた。ヨレヨレの章くんに、安心して姿を現したのだろうか。何ということもない短いパー4なのに、ウエッジのセカンドを引っ掛けて乗らずのボギー。【拡大】

バンフ・スプリングス 18番
 18番、右ドッグレッグの578Y パー5 →


    ティグラウンド前はラフ? いや荒地。
   各ホールとも 結構ワイルドでタフな
   このコースの難しさが、ご理解いただけ
   るだろうか。
    右側に白い乗用車が見える。一般道を
   走る車だ。スライスを打つと、
   車に当たる。



 18番578Yパー5、力尽きてボギー。インは10オーバーの46。上がりの4ホールで7つもオーバーしては、スコアはまとまらない。
 トータル、43・46の89。前回100の借りは返せたのか…、何とも悩ましい結末であった。
 昭ちゃん、44・46の90。危ねぇ、昭ちゃんに負けるところだった。「ぐわぁ、1ストローク差かぁ。残念…」と口惜しがっている。メープルシロップ以上のカナダ土産を、昭ちゃんに持って帰らせるところだった。「カナダはいいぞ。章さんに勝ったからなぁ」と、会う人みんなに言って回られるものね。
 奈津子は、50・48で98、白マークからだから、章くんが6年前に100を打った、このタフなコースで健闘しているといわねばならない。

サルファー山展望台より
 ラウンド終了、午後3時。ラウンジで食事をしたあと、バンフを展望するサルファー山へ登った。
 ゴンドラが高度を上げていくにしたがって、足元にバンフの町並みが広がっていく。
 頂上に着くと360度のパノラマ、遠くのロッキーの山々が一望される。


   サルファー山展望台から   【拡大】
    バンフの町並みとカスケード山の写真は
    たくさん紹介されている(
一例)から、
    ここでは、バンフの町と反対側の風景 


                   
サルファー山の展望台にて 「キャー、何これ。キャー、すごい。キャー …」、少女奈津子は、この展望の素晴らしさにキャーを連発している。
 「おまえ、40を過ぎた女が、キャー以外に感動を表す言葉がないのか」とからかうと、
 「感動が窮まると、言葉は出ないのよ。『… 熱き思いに触れもせで 悲しからずや 道を説く君』…だわ」と、与謝野晶子を持ち出して撃退されてしまった。


 バンフをあとにして、再びキャンモアへと向かう。今夜の宿はキャンモアの「ミスティック・スプリングス・シャレー(MYSTIC SPRINGS CHALETS)」。カナディアン・ハイウェイをキャンモアで降りて市内方向へ5〜6分、町中を走る幹線道路のボウバレー・トレイルを左へ入った、森の中にある。
 なぜ、またキャンモアに戻って泊るのかというと、このホテルは、明日プレーするゴルフコース「シルバーチップ(SilverTip)GC」と、パッケージ料金が設定されているからだ。4つ星ホテルで、章くんたちの貧乏旅行にはちょっと贅沢だが、独立したベッドルームが2室あるから、少女奈津子がいても3人で1部屋でよい。1部屋の代金が445カナダj(1人148カナダjか)、ゴルフプレーフィは165カナダj、計313カナダjのところを283カナダjとある。

                                        
ミスティック・スプリングス・シャレー(MYSTIC SPRINGS CHALETS) このホテルは、プールを取り囲んで配された、2階建てのシャレータイプの独立したスイートとなっている。


   各部屋は、プールを囲んで コの字に配されている →

見取り図(パンフレットより)
← 1階が暖炉のあるリビング、ダイニング、キッチンなど、2階がベッドルーム2室ベッド3台、バス・トイレ2つがある。


← 章くんと昭ちゃんは左の部屋。奈津子はひとりで
 右の部屋のキングダブルに寝た。



 中央にあるプールには満々と水が張られていた。泊り客は、夕食前や就寝の前にひと泳ぎするという。「この寒いところで、誰が泳ぐんや」と家にプールのない、ウサギ小屋の住人章くんが言うと、「温水でしょ。いくらカナディアンでも、気温5℃の中で水には入らないよ」と奈津子が笑う。「じゃぁ、風呂みたいなもんか」「そこまで熱くないわよ」と言いながら、章くん、手を突っ込んでみると、ほんのり温かかった。「ホント、温水プールや!」

Murrieta1
 食事に町へ出かけた。ホテルで聞いたMurrieta'sというレストラン、キャンモアのメインストリートモールの2階にあるMurrietaの店内から


 階段を上っていくと、そこ
 には洒落た感じのバー →



 「ディナーを…3人…」と指を3本立てると、近くのテーブルに案内してくれた。


← 席から外の様子をパチリ
  8時過ぎだけれども、まだまだ明るい。



 シーフード・チャウダースープ、グリルゴート・サラダ、シーフードグリル、テンダーロインステーキ…、それぞれにとても美味しい。なかでもタイガープローン・パスタのカレー風味がとても香りがよく、馴染んだ味であった。、、「このままカナダに住みたいわ」と奈津子
 今日の宿「ミスティック・スプリングス・シャレー」にはレストランがなく、朝食もない。明日の朝に食べるサンドゥイッチを作ってもらって、持ち帰った。


 「なんちゅう大きなベッド…。どこまで転げてもベッドの中ね」と
  キングサイズのダブルベットを独り占めで ご機嫌の奈津子 →



 部屋のキッチンでコーヒーを入れた。「サンドイッチ食べる?」…、おいおいダメだろう。それを食べたら、明日は朝食抜きだぞ…。ということで、コンビニで買って来た、チョコレートやバームクーヘンをかじりながら、明日の作戦を練る。
 カナダも、明日いち日でお別れだ。



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カナディアン・ロッキー・ゴルフ紀行 2006 P.2