2004年1月27日(火)〜2月2日(月)


 その1        世界ゴルフ紀行トップへ 


第1日 1月27日

 ノースウエスト(NW)機でアメリカ合衆国の各都市へ行くには、みんな一旦デトロイトで降り、国内便に乗り換えて各地へ向かう。関西空港を13時25分の定刻に離陸したNW0070便は、一路デトロイトへ…。章くんは、そこで乗り換えて、マイアミへ飛ぶ。
 
デトロイト空港
デトロイト空港、
星条旗が飾られている。

 昨年のラスベガスに続いて、章くん、今回のマイアミ行きもまた一人旅。いつもの連中のうち、村上隊長は、今年、県庁に勤めている娘の美由紀ちゃんがロンドン駐在員になったので、章くんと海外ゴルフに出かけている暇はない。年間3〜4回、奥方と一緒にロンドン詣でをしなければならないからである。
 橋さんは社長になったので責任感のかたまりになって、『俺が1週間休んだら会社がなくなる』と言うし(章くんとしては、橋ッさんが居ないほうが会社は回ると思っている。息子がしっかりしているから)、葵銀行の支店長連中はみんな出向世代だから、長期の休みは取れない(全員、早く辞めて「アメリカ行こうか、明日…?」「OK」という態勢を整えればいいのに…と章くんは思う)。荒ちゃんなんか、音信不通だ。




 デトロイトまでは約11時間。ノースウエスト航空は、相変わらず機内食も不味いし、フライトアテンダントの接客も大雑把…。いつも、もうこの航空会社の飛行機には乗らないぞと思うのだが、アメリカの飛行機はどこの会社のものでもこんなものだろう。アジア系航空会社の、きめの細かいサービスと比べるからいけないのだ。
 この便はコンチネンタルとの共同運航、機内はほぼ満席、乗客は中国人が目立つ。暇つぶしにかけた映画も、字幕スーパーが中国語だ。関空発なのに日本語吹き替えもなく、字幕の漢字を追って日本語に理解し直すのも面倒すぎるし、映画の英語を聞いても何を言っているのか解らない。
章くんたちが乗ってきたノースウエスト機
章くんたちが乗ってきた
ノースウエスト機

デトロイト空港の案内板は、
日本語のふりがな(?)つき
 でも、章くんは、飛行機の中は本を読んだり書き物をしたりするのに集中できて、得意な空間だ。用意してきた「古代出雲の高層神殿」と「神武東征の謎」を取り出して読み始める。日本の古代史を究明しようという魂胆であったが、この2冊とも書き方が断定的でない。古代史はまだまだ明らかにされていない部分が多くて、推測の域を出ていない学問なのだと思った。
 やがてNW機は、古代史の真相を未究明のままにして、デトロイトに着いた。2時間待って、マイアミ行きNW422便に乗り換える。
 この搭乗検査がやけに厳しい。靴を脱ぎ、ベルトをはずして、検査機のゲートをくぐる。係官がいつでも中を開いて検査出来るようにか、スーツケースの鍵はかけずに開けたまま預けなければならない。まだ往きだから、使用済みのパンツはなかったけれど、帰りは全て不透明な袋に入れて「Dangerous object(危険物)」のタグをつけておくことにしよう。
 ン…、「Dangerous」なんて書いた物が出てきたら、逮捕されるかもしれない。やっぱり、使用済みのものを一番上に広げて「Don't touch!」とか、朱書しておくのが良さそうだ。
 従来の何倍もの強いX線を当てるので、カメラのフィルムなんて防御袋に入れておかなければ、全部真っ黒けになることだろう。


 デトロイトからマイアミまでは約3時間のフライト。午後6時30分過ぎ、マイアミ着陸。マイアミ空港はマイアミ・インターナショナル・エアポートというだけあって、想像していたよりも大きな空港でちょっと驚いた。明るくて、きれいな空港だ。やしの木が植えられたりしていて、南国の感じがする。
マイアミ空港
美しくて広〜い
マイアミ空港

 マイアミ国際空港の国際貨物取扱量は、95年にJFKを抜いて全米一となり、以来その地位を他に譲っていないという。香港が巨大市場を擁する中国への物流拠点であるのに似て、マイアミは中南米諸国へのゲートウエーとして機能しているといえる。アメリカの都市でありながら、中南米の首都と形容されるほどラテンの国々との結びつきが強いマイアミは、今、貿易と金融の要衝として発展を遂げてきている。中南米からの移民も多くて、空港内でも巻き舌のスペイン語が飛び交っていた。
 
ハーツ・レンタカー
 レンタカー会社は、空港ターミナルから一般道路へ出たところに並んでいる。日本から予約を入れておいた「ハーツ」のフロントへ行き、フォードの白いセダンを借りた。トランクにキャディバッグが入るかどうかが、車を選ぶ基準である。
 保険がどうのと言っているが、よく解らない。「OK、OK」と適当に返事をして、書類にサイン…。キーと道路地図をもらって、表の車に飛び乗りレッツゴー。


← ハーツ・レンタカーの受付窓口


 マイアミ空港の北側の道路を西へ走れば、10Kmほどでドラルリゾートエリアだ。ショッピングモールや新しい住宅が立ち並ぶ通りを、西へ走る。
 あたりはすでに暗く、周囲の景色が見えない。加えて、慣れない異国の右側通行なので、余計に神経を使う。こんなとき、一人旅は少し心細い。
 うしろの車の迷惑は遠い東洋の島国から来たのだからご容赦いただくことにして、これ以上ないぐらいの徐行運転…。空港から20分ほどで、道路の右手にゴルフ場らしい情景が明るい庭園灯に浮かび、瀟洒な建物が見えてきた。「ドラル・ゴルフリゾート&スパ ホテル」だ。


 マイアミで唯一の5つ星ホテルというだけあって、ヨーロッパ調の洒落た建物で、ロビーの天井は高く内装も豪華だ。もちろん値段も高くて、例年の貧乏旅行を知る面々からは、「頭、狂たんと違うか」と言われることだろう。ドラル・ゴルフリゾート&スパのホテル
 一泊料金は、ゴルフパッケージ(ゴルフ代込みで)384ドル。冷静な頭では泊れない料金というところだが、しかし狂った頭なりに計算してみると、今回の旅の目的「ドラルゴルフリゾート、ブルーコース(PGAツアーの「フォード・チャンピオンシップ」が開催される、いわゆるブルーモンスター)」のプレー代は、この冬場のハイシーズン225ドル(オフは175ドル)。また、フロリダのホテル代は高くて、アメリカの一般的なモーテルである「ベストウエスタン」すら、このシーズンのフロリダでは150ドルほどする(オフシーズンは85ドルぐらい)。だから、他の安モーテルへ泊ってブルーモンスターでゴルフをすると、225j(プレーフィ)+150j(ホテル代)=375jで、世界に名高いドラルリゾートの豪華ホテルに泊っても、それほど変わらない計算になる。
 このホテルの豪華さはどれほどかというと、パンフレットには『5つのチャンピョンシップ・ゴルフ
ドラールゴルフリゾート&スパ・ブルーコース
ドラル・ゴルフリゾート
(パンフレットより)
コースに囲まれた、マイアミのオアシスといわれるホテル。 ショッピングモールに近く、マイアミ国際空港も車ですぐ。…略… プライベート・バルコニー、テラス、豪華な浴室などを備える客室、行き届いたサービスは、訪れた全てのゲストの満足を得られることだろう。レストランは5つあり、美味しさとともに健康管理を考えたメニューが用意されている。青い入り江には、プールや小滝、ジャグジー、125フィートの青い巨大なウォータースライドがある。客室は599室…、ご予約は日本語で、1-805-955-0020(営業時間:アメリカ西海岸9:30-17:30』とある。
 今夜はホテル内で食事…。レストラン「Windors on the Green」は、昼ならば窓の向こうにプルーモンスターのフェアウエイが広がっているのだろうが、夜は庭園灯の光に緑の芝生が浮かぶばかりであった。ハマグリのスープ、玉子と海老の料理を注文する。もうひとつ、肉料理は…とも思ったのだが、一皿の量の多さを思い出しストップ。デザートにケーキ&クリームを頼んで、その大きさにビックリ…。半分ぐらいしか食べられずに、またまた反省…。


第2日 1月28日

朝、ランニングする
女の子

 「プルーモンスター」挑戦の朝が明けた。目の前で焼いて貰ったオムレツに舌鼓を打ち、豪華な朝食ビュッフェを終えて、いよいよゴルフコースへと足を踏み出す。目の前に広がる広大なゴルフエリアには、ブルー・レッド・ホワイト・ゴールド・シルバーの5つのコースがあるが、中でもモンスターと呼ばれるブルーコースは7125Y、パー72、コースレート74.5の難度を誇り、世界のゴルファーの挑戦を退ける。例年、PGAツアー「フォード・チャンピオンシップ」が開催されているが、昨03年はスコット・ホーク、一昨年の02年はアーニー・エルスが優勝している。
 9時46分のスタート。カナダのエドモントンから来たというボブとニック、50歳前後のおじさん2人と一緒だ。
 「エドモントンって、カナダのどこにあるの?」と聞くと、「ロッキー山脈の西、カルガリーの北」だと言う。「カナディアン・ロッキーは数年前に行ったよ。カルガリーへ降りて、バンブルーモンスター コースレイアウトフとかジャスパーに寄って、バンクーバーまで走った」と話したら、「カナダは広くていいところ。でも今のエドモントンは昼間は−5度、夜は−20度だ」と言っていた。
 2人は、当然のようにバックティに上がっていく。あとで聞くと、2人ともシングル・ハンディキャッパー。章くんも、近頃はちょっと息が上がってきているとはいうものの、押しも押されぬジャパニーズ・シングルである。バックティは望むところだ。



1番529Yパー5
コースガイドより

 1番529Yパー5 →、朝一番のティショットはちょっとトップ気味で、ゴロゴロと200Yほどのフェアウエイへ転がった。ティグラウンドでは、250〜300Y地点の左右にある4つのバンカーを警戒したのだが、全然届かず、第2打で入れないように警戒しなければならないことになった。
 バッフィで打ったセカンドはかろうじてバンカーを越えて、左のラフへもぐりこむ。このラフが厄介…、ボールが見えない。あわやロスというところを、ニックに見つけてもらって叩き出し、残り120Yほどをピッチングで打つもショート。5打目のアプローチも寄らずに、5オン2パットのダフルボギースタートだ。
 2番376Yパー4、3オン2パットのボギー。
3番409Yバー4


 ←3番409Yバー4、ティグラウンドに立つと足が震う。右にずっと池、左はバンカーとヘビーラフ、その左は池。ティショットが難しいホールだ。ヒビッている章くんのティショットは、極端なフックで左のラフ。出したボールが、まだ200Y残っている。池に行かないように7番で刻んで、残りが50Y。
 ところがこのホール、グリーンの形が細長く、左は長いバンカー、右は池だ。「ええいっ」と打ったサンドウエッジのコントロールショットが、60cmぐらいに止まって1パット、ナイスボギーだ。
4番236Yバー3

 4番236Yバー3→ 右がず−っと池で、236Yの彼方のグリーンは、ぐいっと右に突き出ている。池の上を打っていくわけだが、236Yをキャリーで打たなければならない。風は緩やかに左から吹いている。
 ドラールゴルフリゾート&スパ・ブルーコース章くん、一瞬、5番アイアンぐらいで刻もうかと思ったのだが、「アメリカまで来て、何考えとんのやぁ」と思い返し、ドライバーを抜き出してバシッ。ボールは、左のバンカーへ入り、池に向かってのバンカーショットは当然ショート。
 残り12mほどのパットが、ムチャクチャ速い。あわや、パットでOBかというぐらいオーバーして。3パットのダボ。4番までで、すでに6オーバーだ。
 5番394Yバー4。グリーンの手前を、ぐるりとバンカーが取り巻いている。残り170Y、5番アイアンのセカンドは、案の定バンカーに捕まり、3オン2パットのボギー。
 6番442Yバー4。長すぎー、2打で届かないー。やっとボギー。
 7番428Yバー4。奇跡の1パット。10mを放り込んで、3オン1パットのパー。初めてのパーだ。
8番528Yバー5
 8番528Yバー5→ あまりにも有名な、パー5のホールである。噴水の上がる池に向かって、首を伸ばしているグリーンへ向かって打つショットは、距離・方向ともに少しの狂いも許されない。そのためには、第1・2打で距離を稼ぎ、少しでも第3打を短いクラブで打ちたい。
 章くんのティショットはまずまずの当たりで、右バンカーの左へ転がった。残りは300Y…、150Yほど先のフェアウエイ右サイドにあるバンカーの向こうへ打ち出すのがベストショットだ。章くん、得意の4番アイアンを一閃、ボールは池の手前のブルーモンスター8番の噴水フェアウエイに止まった。
 グリーンまでは120Y。ここまで来たら、この名物ホールで、何としてもパーを取りたい。池越えのピッチングウエッジ、「とにかくクリーンに」とそれだけを考えて打ったショットは、クリーンに当たりすぎて、向こうのグリーンエッジだ。
 ここからのパットは、池に向かって速くて止まらない。グリーン奥からアプローチしたアメリカのプロたちが、池に落としていたのをビデオでチェック済みだ。慎重に打った10mのパットは、ビヒッたぁ〜、2mほどを残してしまった。血管が切れるぐらい狙って打ったパーパットは…、ショォ〜〜トォ! 我ながら、このパットのチキン振りにはあきれ返る。3パットのボギー。
9番169Yバー3
 ←9番169Yバー3。8番のショックを引き摺りながら、アゲインストなので手にした5番を、ちょっと大きいかなと思いつつコントロール気味に打ったら、フック…、左の池へ。打ち直しも乗らず、何かわからないうちに、4オン2パットの6…、トリプルボギーだ。


 かくして、アウトは12オーバーの「48」。ボブ51、ニック47、みんなチョボチョボ…。


 10番551Y、左はずーっと池の長いパー5。右を回りすぎて、途中ラフとバンカーに入れ、5オンながら1パットでボギー。
 11番363Yバー4→ 短いけれど、フェアウエイの真ん中に、デーンとバンカーが
11番363Yバー4
邪魔をしている。どれほどえげつないバンカーというのを解ってもらうために、コース図をお示ししよう(右の通り)。真ん中のバンカーは巧みに避けたけれど、章くん、グリーン右のガードバンカーに打ち込んでボギー。
 12番603Yバー4。サードショットを打つときに、まだ200Yも残っていたのはなぜだ。長すぎる〜。ボギー。
 13番245Yバー3。ドライバーで打ったのだけれど、届かない。2オン2パットのボギー。でも、ダボを叩かないから好調…と、ちょっと弱気になっている。
 14番443Yバー4。ティショットはフェアウエイ・バンカーまで届く心配がない。残り220Y、刻むつもりの5番アイアンが、ダフリ引っ掛けで、左の池へ打ち込み、4オン2パットのダボ。…ダボが居たぁ〜。
 15番175Yバー3。4番アイアンでナイスオン。2パットのパー。
 16番372Yバー4。左コーナーのバンカーの右へナイスドライバー。残り140Yを8番アイアンでオン。10mを2パットでパー。連続のパーである。いよいよ実力が出てきたのか。ちょっと手遅れか。
18番443Yバー4

 17番419Yバー4。3オン2パットのボギー。
 ここまで8オーバー、アウトは48だからすでに90超…、怖いものなど何もない。18番で、勝負するのみである。
 ←18番443Yバー4。フォード選手権でプロたちは、左のバンカーを越えてティショットを打っていた。バックティから章くんは、逆立ちしてもバンカーは越えない。しかし、バンカーの手前はフェアウエイが狭くて、ティショットが難しいのだ。
 逆立ちして越えないのなら、トンボ返りでもして打ってやろうかと、角兵衛獅子になったつもりでティグラウンドへ上がった章くんは、とにかく左の池だけは避けなければならないと、少し右を向いてアドレスに入った。
 バッカーン、ドライバーが炸裂した。右目に打ち出されたボールは、グィッと左に曲がって、いつものフックボールだ。「待て待てー」と声を掛ける章くん、甲斐あってか、ボールは左の池の淵のバンカーへ飛び込んで止まった。
 残りは200Y。池をキャリーさせて
ブルーモンスター18番 パンフレットより
ブルーモンスター 18番
(パンフレットより)
グリーンへ止まる3アイアンを打てるぐらいならば、ここまで20オーバーは打っていない。おとなしく7番アイアンで150Yを打ち、あと50Y…。バックスゥイングを腰まで上げるサンドウエッジのコントロールショットで、ピタリの距離だ。
 慎重にバックスイングを腰まで上げ、ビシッと打ったアプローチ…。ダッ、ダフッたぁー!
 距離の足らないボールは、グリーン手前の池にポチャ…。


 18番はいくつやったか…って?、知らん。 トータルスコア…? 忘れた!


 ホテルへ戻り、シャワーに入って着替えたあとは、腹ごしらえだ。パン好きの章くん、クラブハウス・サンドウィッチとグリル・チキンをミルクとダイエットコークで流し込み、仕上げにコーヒーを飲んで大満足である。時計を見ると、午後4時30分になろうかというところだ。
 マイアミ市内へ出かけようかとも思ったのだが、明後日には市内のホテルへ移るから、市内見物はそのときでフロリダの夕焼けいい。章くん、7番・ピッチングウエッジ・サンドウエッジとパターを持ち、ポケットにボールを5個ほど忍ばせて部屋を出た。練習をしようという魂胆である。
 練習場でボールを転がしてから、18番あたりは写真も撮らずに来たなと思い出して、18→17→16番と歩いてみた。
 やがて夕暮れ…、フェアウエイに木々の影が長く伸びて、フロリダの夕焼けが空を染めていく。


 夜、ホテルの中をほっつき歩いて、ステーキを食べ、ドラル・ロッジの第2夜は熟睡!


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その1
マイアミ・ゴルフ紀行