ハワイ         10


第2日目
  コナCC  


キンカメのモーニング・バイキング
 午前6時。枕もとの目覚ましを止めて、ベランダに出ると部屋の前の豪華客船、ハワイの空はまだ真っ暗。その暗闇の中、正面に色さまざまな電灯が点され、きらびやかな電気の館が聳えている。「ハワイにも、徹夜営業の店があるんだ。今晩行ってみよう」と思いながら顔を洗い、ようやく白んできた外をもう一度見てビックリ。目の前の海に、豪華客船が停泊していて、満艦飾の灯りはその船のものだった。クルーズの客は各所の港を巡り、昼間は上陸して遊覧見物、夜には船に戻って眠りながら、また次の港へ移動して行くのだ。
 6時55分、朝食に行こうと滋子さんの部屋へコールすると、「はい、今出ます」とさわやかなお返事。ヤスヱはどうだと掛けると、コール2回…、出た電話の向こうで「うわぁ、寝てたぁ。今 起きた−」とわめいている。それでも、「先に行っててよ。用意が出来次第行くから」と言うのは、殊勝な言い様だ。滋子さんのご判断を仰ぐと、「うッそー、… じゃあ先に行っていましょうか」とおっしゃるので、ヤスヱには「じゃあ、先に行くから」と連絡して、1階のメインダイニングへ。
 と、章くん、食事券を忘れた。朝食にありつくには、レストラン入り口でその券を受付へ渡し、席に案内してもらうのだ。部屋へ取って返して探したところ、確か机の上に置いたはずなのだが、さまざまな書類の中にまぎれていて、なかなか出てこない。4〜5分かかってやっと見つけ出したあと、念のためにヤスヱにコールすると、「用意できたよ。今 行くわ」と出てきた。「旅先では、寝られやんのと違うのか?」と水を向けると、「全然寝られずに、明け方まで起きていたの。それから寝たので、寝過ごした」と言う。やっぱり、ヤスヱのほキンカメのバイキング朝食うが一枚上手だ。
 モーニング・バイキングは、ハム2種類・卵2種類・ヨーグルト3種類・野菜2種類・果物3種類・飲み物3種類といったところだ。色つきのヨーグルトなんかは、何か甘すぎて口に合わない。左の写真は果物が多いが、これは3日目のもの。1日目、2日目といろいろなものを食べてみて、結局は果物が間違いがないということが判り、3日目からは果物ばかり食べていた。プラス味付け海苔!


迷 走
 今日のコナCCは、このキンカメがコナ・コーストにあるのだから、すぐ近く(のはず)だ。だから8時46分のスタートに、8時丁度にホテルを出た。
 一路南へ…。地図では、海岸沿いのアリロード沿い、15分も走れば着く予定。20分ほど走ると、地名がコナでなくなってきた。コナから出ちまったと引き返したが、コナリゾートホテルまで引き返しても、ゴルフ場らしいものは道路の左右にない。「私、聞いてくる」と、ヤスヱが持ち前の行動力を発揮して、コナリゾートホテルへ飛び込んでいった。
 はじめ、玄関へ停めて待っている車の中からもよく見えるフロントで、何か話をしていたが、そのうち奥のほうへ行ってしまって、10分ほど経っても戻ってこない。待っている章くん、「あいつ、コーヒー飲んどるのと違いますか」と焦れると、「まさかぁ」と滋子さんが笑う。「いやぁ、やりかねませんよ、あの女…」と言っていたら、息を切らしてヤスヱが走ってきた。「フロントで聞こうとしたら客が居て、この人が先だから、終わるまで待てと言うの。奥へ走っていったら、そこでも従業員同士が話していて、終わるまで待てと言う…。さらに奥へ行って、やっと聞いてきたわ」と説明しながら、「コナCCは、もうちょっと向こうよ」と、貰ってきた地図を広げた。
 この時点で8時50分。すでにスタート時間に遅れている。コナCCへ着いたのは、9時少し過ぎた頃。ここはまた、ヤスヱの出番だ。
 「私らは遠〜い日本から来たのよ。だから、途中で何箇所か迷って遅くなったの。すぐにスタートさせて!」と言ったのかどうかは知らないが、章くんが駐車場へ車を置いてクラブハウスの裏手へ回ると、今日もヤスヱがもうカートのエンジンを吹かせて待っていた。
コナGC

コナCC http://www.konagolf.com/


 コナCCは、ケアウホウ・リゾートの中核をなす36ホールのゴルフコース。今日は、そのうちのオーシャンコース(プルー6873Y)を回る。ヤスヱたちも元気を回復したものか、果敢にレギュラーティー(6579Y)からのプレーだ。            【拡大】
 オーシャンコースは、海岸沿いにレイアウトされていて、フラットで広いフェアウエイを持つ。ハワイ島のコースの特徴のひとつである真っ黒い溶岩が各ホールを取り巻き、芝生の緑、溶岩の黒、そして大海原の青色と砕ける波の白さのコントラストが美しい。海沿いのホールでは、フェアウエイの脇に太平洋のうねりが打ちつけ、波しぶきが飛び散る。椰子の木がハワイらしい雰囲気をかもし出しているが、きれい過ぎるレイアウトが、章くんには少し物足らない。コナCC 
 このコナCCは、2000・2001年の2年連続でLPGAハワイアン女子オープンを開催。それを機に、大幅なコース改造がなされたというが、ハワイのコースはみんな溶岩荒野の上に表土を敷き、芝生を張り詰めていったものである。
 リゾート開発の夢に燃えたデベロッパーの決意は固く勇壮であった。このコースの造成を見ても、ひとつのホールを造るのに、その2倍ほどの敷地に芝生を張っている。ティグラウンドのはるか後ろから美しい芝生が張られ、左右のラフもたっぷりとした幅を持っていて、そのラフを延ばしたり、広いラフの中に溶岩をむき出しにして積み上げたりして、戦略性を高めているのだ。グリコナGCーン奥も、すぐ海が切り込んできているようなデザインのホールは別として、十分な奥行きを持っていて、大きなバンカーや起伏をつけて、グリーンオーバーを待ち受けている。
 ひとつのホールを終わって、次のホールへ移るカート道路の左右は、溶岩の荒地や時として白波の打ちつける岩礁であったりして、景観は尽きない。
 
 今回のハワイでプレーしたコースはみんなそうだったが、ケアウホウ・リゾートの真っ只中に作られているこのコースも、時には住宅の庭先をかすめ、またその住宅地の中を走る一般道路を横断しながらプレーしていく。いや、一般道を越えてショットするなどということはないが、次のホールへ行くためのカート道路が、一般道を横切っていく箇所はいくつもあった。
 一般道路が優先なのだが、住人たちはゴルコナGCファーに優しく、一旦停止してカートを通してくれ、車の中から手を振ってくれる。
 このラウンド、章くんはパットの調子が悪く、アウトは3ホールで3パットしてトータル43。
 アウトの3509Yに対して、インは3237Yと比較的易しい。
【拡大】 圧巻は14番411ヤードのパー4。ブルーティからは、海越えのティショットとなる。渦巻く波頭の上を打っていくドライバーは快心。しかしセカンドの4番アイアンを右に吹かし、3オン1パット…やっとのパー。コナGC
  そして17番142Yのパー3は、ぱっくりとえぐれた谷越え。ショートすれば、ボールは真っ黒な溶岩の谷へ吸い込まれる。しかし、たかが142Y。章くんは当然1オンながら、3パットのボギー。
 このイン、章くんは5ホールで3パットして41(2ホールで1パット)。「3パットさえしなけりゃ、70台で回れることが判った」と負け惜しみの弁である。
 コナGC

 あがって2時。レストランで昼食をとった。メニューの中にハワイの定番「ロコモコ」を見つけて、3人ともそれを注文。ハンバーグ・目玉焼きをご飯に乗せてグレービーソースをかけたハワイのごちゃ混ぜ料理だが、それなりに美味しい。この「ロコ・モコ」を最初に作ったのは日系人…、ハワイ島に住む日系2世リチャード&ナンシー井上夫妻であるとか。日本の丼物の発想だ。
 そのボリュームに誰も食べきることはできず、章くんと滋子さんは半分ほどを残してしまった。大食漢のヤスヱも、3分の2ほどを食べたところで、「もうアカン」とスプーンを手放した。
 オープンテラスの手すりの向こうに、ケアウホウ・リゾート一帯の景観が広がっている。緑の中に白亜のロイヤル・コナ・リゾート・ホテルが光り、彼方にオーシャンブルーの大海原が遥かに続く。
 テラスに、小鳥がやってきた。人間たちを、特に恐れる様子もなく、テーブルで談笑する人々の足元を歩き回り、こぼれたパンくずなどをついばむ。章くん、ご飯粒を1つぶ 床に投げた。目ざとく見つけた小鳥くんは、すばやく駆け寄りチョンとほおばる。今度は、足元2mほどに投げると、何の躊躇もなく駆け寄ってきて、チョンとついばむ。ヤスヱが見つけて、「ダメよ! 野生のものに、むやみにえさを与えちゃ」とご注意。


コナ・コースとの繁華街 カイルア・コナ
カイルア・コナ
 コナCCには、章くんたちが今日ラウンドしたオーシャンコースのほかに、もうひとつマウンティンコースがある。章くんは、今日は2ラウンド36ホールと計画していたのだが、昨日のバテ振りでは「2ラウンド」と言えば、「私に死ねと言うの」と必ず言われることだろう。それで1ラウンドで切り上げ、食事を取ったあと、ホテルへ引き返した。
 昼食を取りながら、ヤスヱが「マウナケァの頂上へのツアーはどうだろうね」と言い出した。ヤスヱは日本出発の前から、「マウナケァ山の頂上へ行ってみたい。4200mは富士山よりも高いわけだし、常夏のハワイで冠雪しているんだからね」と言っていた。マウナケァ山頂ツアーは、ヤスヱの願望だったのだ。「私、心臓が弱いので酸素ボンベを持ってかなきゃね」と言ったのには、章くん、噴き出してしまった。「何、笑ってるのよ。章くん、人工呼吸のやり方知ってる?」とさらに言うヤスヱに、章くん、「人工呼吸のやり方は知っているけれど、お前相手には絶対にやらん」。
 『ゴルフのあと、午後から出かけて夕焼けを山頂から見るツアーでもあれば行ってみようか』と章くんも期待して、近鉄観光を訪ねたところ、「高山病予防のため、途中で休憩もとらなきゃなりませんから、お昼前出発のツアーとなりますね」と言う。「じゃぁ、ゴルフやめて行きゃいいじゃない」とヤスヱは簡単だ。
 料金の安いアメリカの予約代行会社を探し、日本から何度もメールやファックスをやり取りして予約を取った章くんは、今からまたキャンセルとなれば大事(おおごと)である。既にクレジットカードで料金の支払いにも同意しているから、これもキャンセルしなきゃならない。実際にやってみれば簡単なことなのかも知れないが、ヤスヱの気まぐれで予定を変更…キャンセルの面倒はゴメンだ。
 それでも章くん、「君たち2人で行ってきたら」と、ゴルフのキャンセルは面倒だとは言わず、オレはゴルフを中止してまでは行かないぞという意味を込めて勧めると、「そうするわ。近鉄さん、2人空いてるかな」とヤスヱはひたすら前向き。ところが、「ダメですね。12日までこのツアーは一杯です」と近鉄くんは言う。章くん、思わずバンザイと叫びそうになるのを抑えて、「残念やなぁ。ゴルフするしかないか」。
カイルア・コナの海沿いの通り
 シャワーを浴びて一休みしたあと、買い物と食事を兼ねて、コナ・コーストの繁華街「カイルア・コナ」へ出かけた。キンカメ前から2Kmほど続く、みやげ物やレストランが並んだ一角である。
 海沿いの道をぶらぶら歩く。道の上に大きな木が覆いかぶさっている。ハワイには、大きな木が多い。気候が年中温かくて、スコールなど決まって雨が降るハワイは、大木が育つのだろう。そういえば「この木 なンの木 気になる木」のコマーシャルに出てくるあの大木は、ハワイのマウイ島にある。ここカイルア・コナの入り口で、道にかぶさっている木も、幹の周りは大人5人ほどでやっと取り囲むことがでカイルアコナのショッピング・センターきるほどの大きさだ。
 Tシャツ屋、ガラス細工店、ムームーや工芸品を並べている店などをのぞいて歩くが、買うほどのものはない。
 そのうちの一軒「ActiVity」と看板を出した店をのぞくと、「Helicopter Volcanos = 160$」と書いた大きな写真を見つけた。「おいおい、近鉄は365$ってたじゃないかぃ」と、一時はキャンセルをしようというところまで行ったのだが、ヤスヱの「要は高いお金で安心を買うかどうかということよ」という説明を聞きながら、この日は近鉄も閉まったので、また明日考えることにした。夜、部屋に帰って調べてみると、160jはキラウエア火山だけを見て引き返す50分のフライトで、火山を初めハワイ島を一周する2時間30分のコースは350jであった。近鉄は365j…、15ドルの手数料は許せる。
夕暮れ 夕暮れが迫ってきた。店々の間を抜けて、浜辺へ出た。折りしも太陽が水平線の彼方へ沈もうとしている。
 堤防へ腰掛けて、ハワイ島のSUNSETを眺める。打ち寄せる波、砕ける波頭、どこまでも透き通った海、クルージングから帰ってきた船が港を目指し、遥かに霞んで定かでない水平線に太陽が落ちていく。砕け散る波音が、耳に快い。
 が、見渡す限りの大海原に沈むサンセットにしては、美しいけれども迫力が足らない。過年、カリフォルニアで見た、空も山も…見渡すもの全てを紅に染めて、真っ赤な太陽が黄金色に輝く海へ沈んでいった夕焼けには程遠い。この日から5日間、ハワイ島ではそこそこの晴天が続いたが、章くんをして涙させる、感動の夕焼けを見ることはできなかった。 

 7時。夕食を「地球の歩き方」を見て、カイルア・コナの南端ウオーターフロント・ロウの2階にあるイタリア料理の店「ミケランジェロ・イタリアン&シーフード」で取ることにしレストランた。テラス席には、波の音が聞こえる。
 本格的イタリア料理店かと思いきや、メインはスパゲティのイタリアン。章くん、注文した本日のシェフお薦めのスープ(本日のスープはこれ1品)と、シーフードのスパゲティ「フラッテ・デ・マレ」が、ともにトマトソースでかぶってしまった。しかし、バスケットに盛ったパンが、パン好きの章くんには美味しくて満腹…。



 前2ページへ  次4ページへ  世界ゴルフ紀行トップページへ
 

ハワイ・ゴルフ紀行
その3