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【239】 名張毒ブドウ酒事件ドラマ「約束」    
2012.07.03


 ブルーレイに録った名張毒ブドウ酒事件ドラマ「約束」を見た。1961年3月28日、三重県名張市葛尾の薦原地区公民館葛尾分館(現存しない)で行われた、地区の懇談会で、参加者のうちの女性5人が、毒入りのぶどう酒を飲まされて死亡した事件のドラマである。


 その日、薦原地区公民館葛尾分館では地区の農村生活改善クラブ(現「生活研究グループ」)「三奈の会」の総会が行われ、男性12人と女性20人が出席した。この席で男性には清酒、女性にはぶどう酒(ワイン)が出されたが、ぶどう酒を飲んだ女性17人が急性中毒の症状を訴え、5人が亡くなった。捜査当局は、清酒を出された男性とぶどう酒を飲まなかった女性3人に中毒症状が無かったことから、女性が飲んだぶどう酒に原因があるとして調査した結果、ぶどう酒に農薬が混入されていることが判明した。
 その後、重要参考人として「三奈の会」会員の男性3人を聴取する。3人のうち、1人の妻と愛人が共に被害者だったことから、捜査当局は、「三角関係を一気に解消しようとした」ことが犯行の動機とみて、奥西を追及。4月3日、農薬混入を自白したとして逮捕された(逮捕直前、奥西は警察署で記者会見に応じている)。しかし、逮捕後の取り調べ中から犯行否認に転じる。
 1964年12月23日、一審の津地方裁判所(小川潤裁判長)は奥西の自白との間に矛盾を認め、無罪を言い渡すが、検察側は判決を不服として名古屋高裁に控訴した。
 1969年9月10日、二審の名古屋高裁は一審の判決を覆して奥西に死刑判決、奥西は判決を不服として最高裁に上告したが、1972年6月15日、最高裁は上告を棄却し、奥西の死刑が確定した。
 1974年、1975年、1976年、1977年、1988年と5次にわたる再審請求はすべて棄却される。2005年2月、ワインに入れられた農薬は奥西が入れたという種類のものとは違うという弁護人による科学鑑定がなされ、名古屋高裁(第一刑事部・小出錞一裁判長)が再審開始を決定する。
 しかし、2006年12月に名古屋高裁(第2刑事部・門野 博裁判長、このあと東京高裁に栄転)が再審開始決定を取り消す決定を下した(死刑執行停止も取り消し)。これに対し、弁護側が、2007年1月、最高裁に特別抗告したところ、最高裁は2010年4月に名古屋高裁決定を審理不尽として破棄し、審理を名古屋高裁に差し戻した。
 2012年5月、名古屋高裁は『捜査段階での被告人の自白には信用性が高い』と判断し、検察側の異議申立てを認めて本件の再審開始の取り消しを決定。これに対して被告人弁護側は同年5月、最高裁判所へ特別抗告を行った。


 事件から51年、被疑者の奥西勝はこの歳月を刑務所の塀の中で、いつ死刑が執行されるかという恐怖と戦いながら過ごしてきた。だから奥西を解き放てということではさらさらないが、初期捜査で揺るぎない証拠を固め、疑う余地のない判決を確定させることへの甘さがあったのではないか。
 僕は、この捜査を担当した辻井取調官(故人。ドラマにも実名で登場していたので、ここへも実名を記す)とも面識がある。その部下で、奥西に手錠をかけたというMさんもよく存じ上げているが、お二人とも人格円満で、正義を貫く警察官としての人生を全うされた方々であった。
 Mさんが言われた、「『私がやりました』と言って、奥西がぼろぼろと涙をこぼし、自分のズボンをびっしょりと濡らした。あの涙を見て、私は奥西が犯人だと確信した」という話を、はっきりと覚えている。捜査員としての確信であったのだろう。… しかし、しかし、その後も捜査を続け、物的証拠も固められたことだとは思うけれど、決め手が「奥西の涙」であってはならない。
 事件後、地域では奥西の家族への迫害が始まり、家族には一切口をきかず、家には投石されたとか。果ては夕食中の被告宅に被害者遺族が押しかけ「土下座して謝れ」と詰め寄る事もあったという。こうした村八分の結果、家族が葛尾を去ると、何者かによって共同墓地にあった奥西の家の墓が暴かれ、墓地の外にうち捨てられた。
 奥西の父母・子どもはふるさとの地を追われ、二人の子(男・女)は別々に親戚に預けられた。父親は一新の無罪判決後に程なく亡くなっているが、息子の無実を信じながら母親は、名古屋で一人暮らしを続け、名古屋拘置所に収監されている息子の面会に通う一方、969通の手紙を息子に書き送り、1988(昭和63)年、84歳で亡くなっている。
 真実は、これからの司法の更なる努力を待たねばならないが、警察・検察の初期捜査の重要さを改めて認識させられる。冤罪は、晴れたら一件落着ではなく、被疑者はもちろん、その家族や関係者の人生を踏みにじる。
 司法・裁判の公正さを表す象徴とされる正義の女神(ギリシア神話の女神テミスもローマ神話の女神ユースティティアも)は、その手に天秤と剣を持っている。天秤は正邪を測る「正義」を、剣は「力」を象徴し、「剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力」であって、法はそれを執行する力と両輪の関係にあることを表している。
 時に、目隠しをした女神の像を見ることがあるが、目隠しは彼女が前に立つ者の顔を見ないことを示し、法は貧富や権力の有無に関わらず万人に等しく適用されるとの、「法の下の平等」の理念を表している。
 僕には女神が携える剣は、法を司るものとして、悪を征する力であると同時に、正義を測る天秤がもし自らの良心に触れることがあれば、自らの命を絶つための剣であろうと思われる。人を裁くとは、命がけの責任がある。もちろん、警察・検察という、法に携わるものも、同様の覚悟があって当然だ。
 現在86歳という奥西勝の余命は長くない。数年前に胃癌が見つかって、胃の2/3を摘出したと聞いたが、先日も肺炎で入院したとか。司法としては、奥西の死亡で事件が終結することを望んでいるところもあるのだろうけれど、彼が生あるうちに、全力を挙げて奥西は有罪なのか、それとも無罪なのかを証明し、彼の人生に納得の結論を出して送ってやることが、ここまで歳月をかけ続けたものの責務であろう。



【239】 野田佳彦が目指したもの?        
2012.06.25


 野田首相が政治生命を賭けると言い続けて、その成立に執念を燃やした一体改革関連法案は、自民・公明両党も賛成する運びとなって、26日の衆院本会議で可決する見込みである。一時は成立が危ぶまれた法案であっただけに、執念とも言うべき意思を持ってここまで漕ぎ着けたことは、一応の評価をしてもよいだろう。
 しかし、彼は何を目的として、この法案の成立に執念を燃やしたのだろう。2009年、鳩山内閣の財務副大臣就任前後の野田佳彦は 「霞ヶ関には2万5千のシロアリがたかっていて、これを退治すれば12兆5千億円の経費が浮く」と言っていた。当時の彼は増税どころか、経費削減を旨とした改革論者で、民主党のマニフェストを忠実に実行しようとする政治姿勢であった。
 が、鳩山・菅内閣で財務副大臣、財務大臣を歴任して、野田佳彦のスタンスは財務省寄りになっていく。野田は初入閣で財務大臣に就任していて、他の大臣の経験のないままに財務大臣に就いたのは、旧大蔵大臣の時代を通じて初めてのことである。大臣経験がないことが野田の幸福であったか不幸であったかは論を置くとしても、経験のある大臣に比べて、政策全般についてはもちろんのこと、国会答弁や霞ヶ関のしきたりなどについても、財務官僚から微に至り細に渡ってのレクチュアーを受けたことは間違いないだろう。これが、野田の財務省寄りのスタンスを形成していったことは容易に理解される。
 事実、2010年、菅内閣の財務大臣就任以後の野田の言動は財務省の広告塔に徹していて、増税論者で菅内閣の財政再建のために迎えられた与謝野馨とともに、消費税増税を声高に主張するようになる。2011年の菅内閣のあとを受けた民主党代表選には、東日本大震災の復興を見据えて増税容認に傾く国民世論を背景に、消費増税を掲げて出馬…。反小沢勢力の支持を受けて、海江田万里との決選投票に勝利し、野田内閣を組閣したことは周知のとおりである。
 2009年には経費節減改革型のスタンスをとっていた彼を、2011年には「政治生命を賭けて諸費税率をアップする」と叫ぶ首相に変化させたのは、やはり財務大臣時代の財務省の洗脳だろう。今の安住財務大臣の財務省一辺倒振りにも、政治家を操る霞ヶ関の巧みさ恐ろしさを見ることができるが、官僚の協力なしには一歩も前に進めない民主党政治の幼稚さにも空恐ろしさを覚える。


 内閣をスタートさせた野田佳彦は、党内融和を掲げ、小沢派の造反を封じるべく輿石東の幹事長起用を決める。しかし、国家観も政治的使命も持ち合わせない輿石は、自分たちの身分や立場を守るばかりの幹事長に終始し、党内の取りまとめに最大の条件である小沢一郎の説得もできず、民主党の分裂を招くこととなった。もちろん、輿石を起用した野田の責任は免れない。
 財務省で勉強(?)して、「日本再建のためには、消費増税しかない」と固く思い定めた野田は、消費増税法案の可決に邁進する。その成立のためには、自民党・公明党との妥協を繰り返し、民主党のマニフェストをかなぐり捨てての猛進であった。
 当然、民主党内からは反発が出て、党内を二分する賛否両論が渦巻くこととなる。小沢・鳩山グループは、民主党マニフェストに反するとして反対の姿勢を鮮明にしたが、野田はこれと真っ向から対決して、自民党・公明党の協力を取り付け、法案成立を図ろうとしている。


 結局、野田佳彦の目指したものは何だったのだろう。日本再建のために、今、消費増税は必然なのか? 民主党の分裂は避けられないのに、この法案を強力に成立させなければならないのか。
 野田佳彦は、平成の高橋是清たらんとしているのか。世界大恐慌のあと、日本を世界最速でデフレから脱却させた、その財政手腕に学ぼうとしているのか。…、今日の国会中継で、みんなの党の江田憲司が、「増税とともに景気対策も進める」と答弁した野田に、「増税して景気が向上するという経済理論はない。歴史的事実もない」と言い放った一言が耳に残る。
 後世、『財務省のシナリオに乗って消費税をアップさせ、日本をデフレ地獄の深淵に沈ませた男。彼の無謀な増税策は、民主党を分裂させただけであった。』という評価が定着しないことを祈るばかりである。



【238】 小沢一郎 離党       
2012.06.21


 民主党は一体改革案について議員懇談会を開催し、野田首相が出席して説明、理解を求めた。反対する小沢グループの議院を中心に反対・異論が相次いだが、午後8時に切り上げて、野田首相と輿石幹事長に一任することとした。
 26日の衆院本会議で一体改革関連法案を採決する方針で、自民・公明両党も受け入れる見通しである。


 小沢一郎は21日午前、国会内で幹事長の輿石 東と会談し、社会保障・税一体改革関連法案の衆院採決で反対票を投じる考えを伝えた。
 小沢は21日昼、国会内で記者団から離党・新党結成の可能性を問われ、「選択肢はいくつかある。採決が済んでから(仲間と)相談し、最善の道を選びたい」と述べている。この後、国会内で開いた自らが会長を務める「新しい政策研究会」であいさつし、ここでも「消費増税法案には反対する」と表明、そのうえで「国民の気持ちがどの辺にあるのか、何のために政治家になっているのかに思いをいたし、ぜひご自身で決断していただきたい」と語り、造反に同調するよう求めた。会合には、小沢グループ議員ら民主党を中心とした国会議員93人が出席した。


 ここまでの小沢の言動を見ると、衆院採決後に民主党が分裂するのは避けられまい。反対票を投じた議員を懲罰にもかけずに不問に附すことは、与党民主党執行部としてはできないことである。また、小沢一郎本人も、この先、民主党に留まっても冷や飯食いのままで、何の存在価値もない。小沢チルドレンの面々は、党の懲罰が課されれば、次の選挙での公認も危なくなって、党に留まる理由もない。今のままでも、次回の選挙では当選はおぼつかない連中が大部分なのだから、政党交付金のおこぼれに預かれるのなら、新しい党へ移ったほうがまだ良いだろうというところか。
 離党する人数が54人以上になると、与党単独では衆院で半数を下回ることになるため、党執行部は、小沢元代表のグループ議員らの引き留めに全力を挙げることになる。小沢グループは衆参約110人で、衆院は約80人。このうち、衆院採決で反対票を投じる意向を示している議員が50人程度いるとされる。



 このように小沢一郎の離党、新党結成は避けがたい状況である。小沢離党は54人を確保して独立できるかどうかに、民主党執行部との綱引きが繰り広げられることになるが、ただ、既成政党で小沢と連携する意向を持つ党は皆無である。だとすれば、小沢は政界再編のキーマンになることもできず、今後の政局でも、多数派工作で小沢と手を組むところはまず無いと考えねばなるまい。
 もっとも、政界の一寸先は闇! 小沢を取り込めば政権が転がり込むとなれば、昨日までのキレイごとはさらっと忘れて屋号を繰り返すのがこの世界である。また、この国には、そんな寝技を評価する向きもあって、政治が近代化しない温床にもなっている。
 60人ほどの人数を引き連れて独立すればキャスティングボードを握ることができる…、それが小沢の狙いでもあるのだろうけれど、日本の新しい時代を切り開くためにも、小沢と手を組む勢力が現れないことを期待したい。
 小沢新党が40人程度ならば、これからも消費税・TPP・一体改革などに何でも反対の小沢一派はむしろ出て行ってくれというのが、執行部の本音であろう。小沢チルドレンの選挙区には対立候補を立てて潰していくのは、それほど難しいことではない。
 以上の状況を俯瞰しても、小沢はもう過去の人である。僕は小沢一郎の政治資金虚偽記載裁判の無罪を受けて、「時代は小沢を捨てた」と書いた。判決は無罪であったけれど、民意と時代は小沢を断罪したと書いた。その後、5・6月の日々の中でも、小沢を受け入れる土壌はどんどん狭くなってきている。現代を生きる政治家ではないことを、早く自覚するべきなのだ。


 小沢の動きを横目で見ながら、政界は再編に向けて、大きなうねりが繰り返されることだろう。橋下大阪維新の会、石原新党などが、次の選挙の目玉であることは、繰り返すまでもない。野田・谷垣の密談(?)のままに進んで、9月ぐらいまでに解散ならば、まだ新党の準備は十分とは言い難い。それを狙っての密談なのだろうが、それでも民主党、自民党は過半数は取れず、その場合は民主党+自民党での大連合が実現しそうである。




【236】 東京高裁、マイナリ被告の再審決定   
2012.06.07
    - 東電OL殺人事件 ネパール人被告 再審へ -


 東京電力女性社員殺害事件の犯人とされた、ゴビンダ・プラサド・マイナリ元被告(45)の再審が東京高裁において決定し、東京高検は同元被告を釈放することを決めた。
 最近、度重なる再審無罪や証拠の捏造・隠蔽など、検察や警察の捜査の杜撰(ずさん)さが次々と明るみに出されているが、この事件をきっかけとして、日本の犯罪捜査を改めて調べてみると、そのいいかげんさ(冤罪事件、誤認逮捕の多さ)に驚くばかりであった。
 ちなみに、「冤罪事件」をキーワードにしてウイキペディアフリー百科をあけてみると、下に列記したように、おびただしい数の事件が挙げられてくる。
(ここに挙げたのは、新刑事訴訟法下(1950年以降)の日本において裁判で無罪が確定した冤罪事件なので、1913年吉田岩窟王事件:1915年加藤老事件:1948年免田事件などは取り上げていない。 斜線のものは、再審で無罪が確定した事件。


1950年 -二俣事件 財田川事件 小島事件 梅田事件 木間ヶ瀬事件
1951年 -八海事件 池内事件 観音堂事件
1952年 -菅生事件 米谷事件 青梅事件 辰野事件 芦別事件
1953年 -徳島ラジオ商殺人事件(徳島事件) 石和事件
1954年 -島田事件(赤堀事件) 仁保事件 松尾事件 造船疑獄 
1955年 -松山事件 中華青年会館殺人事件 
1957年 -大阪事件 (創価学会) 
1959年 -滝事件
1961年 -因島毒饅頭事件 
1962年 -恵庭事件
1965年 蛸島事件 六甲山事件
1967年 -布川事件
1968年 -三億円事件 
1969年 -鹿児島夫婦殺し事件(高隈事件)
1970年 -豊橋事件 大森勧銀事件 牧会活動事件 
1971年 -土田・日石・ピース缶爆弾事件 沖縄ゼネスト警察官殺害事件 日活ロマンポルノ事件
1972年 -山中事件
1973年 -富士高校放火事件
1974年 -首都圏女性連続殺人事件 甲山事件
1975年 -遠藤事件 四日市青果商殺人事件
1977年 -三国事件 結城殺人事件
1978年 -福島県警狂言強盗でっち上げ事件 鳴海清殺害事件 広島市印刷会社経営者殺害事件
    東京中野放火事件
1979年 -貝塚ビニールハウス殺人事件(貝塚事件) イエスの方舟事件 
1980年 -富山・長野連続女性誘拐殺人事件 
1981年 -みどり荘事件(大分女子短大生殺人事件) ロス疑惑 石見町女児殺人事件
    暴力団組長覚醒剤密輸偽証冤罪事件 下田缶ビール詐欺事件 葛生事件
    旭川日通事件
1983年 -北見傷害再審事件 
1984年 -札幌男児誘拐殺人事件 山下事件 自由民主党本部放火襲撃事件
1985年 -お茶の水女子大寮事件(お茶の水女子大寮強盗強姦未遂事件) 山田市長汚職事件
1986年 -高槻選挙違反事件(高槻事件) 新宿ビル放火事件 赤羽放火女性焼死事件
    西船橋駅ホーム転落死事件
1988年 -綾瀬母子殺人事件 警察官ネコババ事件 
1989年 -北方事件
1990年 -足利事件
1993年 -調布事件 北國銀行背任事件
1994年 -松本サリン事件 広島港フェリー甲板長事件 覚せい剤調書ねつ造事件
    福岡スナックママ連続保険金殺人事件
1995年 -村井秀夫刺殺事件 道頓堀ホームレス襲撃事件
1997年 -城東署覚醒剤所持捏造事件(警視庁偽装摘発事件) 宇都宮線痴漢冤罪事件
1998年 -宇和島事件(愛媛誤認逮捕事件) 京王線痴漢冤罪事件 埼京線痴漢冤罪第2事件
    日債銀事件 小倉元漁労組合長射殺事件
1999年 -長銀事件 埼京線痴漢冤罪第3事件 宮城県放火未遂事件 杏林大病院割りばし死事件
2000年 -西武新宿線痴漢冤罪事件:映画『それでもボクはやってない』のモデルとなった。
    阪急宝塚線痴漢冤罪事件 東海道線痴漢冤罪事件 総武線痴漢冤罪事件
    『ウルトラマンコスモス』主演者傷害・恐喝事件 高岡暴力団組長夫婦射殺事件
    下高井戸事件
2001年 -佐賀市農協背任事件 新座市ひき逃げ事件 雪印牛肉偽装事件 東京女子医大事件
    広島保険金目的放火殺人事件 ハンナン事件
2002年 -富山連続婦女暴行冤罪事件 中央線痴漢冤罪第2事件
2003年 -志布志事件(鹿児島事件) 札幌地下鉄痴漢冤罪事件 西武新宿線痴漢冤罪第2事件
    西武新宿線痴漢冤罪第3事件 福岡市博多区妻殺害事件 知的障害児童わいせつ事件
2004年 -引野口事件 松山市白バイ自損事故 大阪地裁所長襲撃事件 
    福島県立大野病院産科医逮捕事件(大野病院事件) 茨木市連続ひき逃げ事件
    東理ホールディングス事件 Winny事件 奈良強制わいせつ事件
2005年 -世田谷ひき逃げ事件 奈良声かけ「脅迫」事件 横須賀古書店主強制わいせつ事件
    大阪市北区放火2人死亡事件 2005年4月5日JR中央線痴漢冤罪事件 
    2005年5月12日JR中央線痴漢冤罪事件 図書館前痴漢冤罪事件 枚方談合事件
    JR福知山線脱線事故
2006年 -女性タレント器物損壊冤罪事件 広島市住居トラブル傷害事件 
    阪急神戸本線痴漢冤罪事件 東急田園都市線痴漢冤罪事件 防衛医大教授痴漢冤罪事件
    千葉市中央区強姦事件
2007年 -2007年2月5日西武新宿線痴漢冤罪事件 爪切り事件 携帯電話虚偽盗難届事件
2008年 -大阪市営地下鉄御堂筋線痴漢冤罪事件 枚方自宅介護殺人未遂事件(枚方冤罪事件)
    宮古島飲酒運転事故
2009年 -障害者郵便制度悪用事件:前田主任検事が「証拠」を改竄。
    浜松同居男性殺害事件 金沢窃盗映像誤認事件 東京都内少年連続ひったくり事件
    成田チョコレート缶覚醒剤持ち込み事件
2010年 -神戸市須磨区路上強盗致傷事件 中国国際郵便覚醒剤密輸事件 
    大阪ミナミ路上痴漢冤罪事件 大阪市生野区自宅傷害致死事件 竹田母親殺害事件
    出版アドバイザー傷害致死事件 


 ざっと挙げてみても、これだけの冤罪事件がある。冤罪は、真相が明らかになって「無罪判決」を勝ち取ったとしても、その多くは過程に膨大な歳月を費やしていて、被疑者の失われた時間や社会的存在価値は取り戻すことができない。だから、警察や検察の初期の捜査には、慎重・的確・確実さと責任が求められる。
 科学的捜査方法が確立される以前には捜査能力の限界から、先入観や思い込み捜査による冤罪が発生する可能性が高かった。
 しかし近代になって科学的捜査方法が導入されたあとも、日本の警察・検察による捜査は、遺留品や物的証拠からそれにつながる犯人を導き出すのではなく、予め容疑者を設定する見込み捜査を行い、証拠は後から合致させる一方で、容疑者に有利な証拠は破棄や軽視や無視するといった手法が採られることが多い。
 そして、日本には現在でも代用刑事施設(旧代用監獄)と呼ばれる近代国家としては極めて特異で問題が大きいとされる取調べ体制が存在しており、司法当局の求める自白を容易に引き出せる環境であることが強く指摘されていて、冤罪の温床となっている。
 また、捜査機関は基本的に推定シナリオに基づく捜査を行うが、自らの出世のために虚偽の自白の強要、証拠の捏造など誤ったシナリオに無理やりはめ込もうとして発生する冤罪が、直近にも現実に発生している。警察や検察が、他人を意識的に冤罪に陥れようとするわけで、こんなことは絶対に起こらないよう組織や捜査・裁判のメカニズムを整備しなければならない。
 加えて検察の罪が深いと思われるのは、裁判の過程では有罪に結びつく証拠だけを提出し、被告に有利となると思われる証拠は隠してしまって、提出しないということが堂々と行われていることである。全ての証拠と判明した事実を明らかにして、成否を争うことこそ大切であるはずだ。捜査段階では、警察や検察は膨大な証拠を集め、知りうる立場にある。しかし、それらの中から有罪へのストーリーに合致するものだけを取り出し、有罪物語を構成していくというのだから、被疑者はたまったものではないし、裁判所も虚偽の構成を見破るのは難しいかもしれない。警察や検察は真犯人でないと知りつつ、実績づくりのために犯人をでっち上げているのではないかと疑われるような事象であって、これは検察の犯罪として裁かれるべきだと思うのだがどうだろう。
 無罪判決が確定しても、警察は「捜査は適切に行なわれたと信じる」のコメントを発表するだけであることが多く、原因追及及び関係者問責を行った例は足利事件を除き皆無である。法を守り執行するものとしての誇りと責任を明確にするという倫理観を正さないと、過ちは繰り返されるといわねばなるまい。


 また、捜査・起訴の違法性を補償の要件としないとする、冤罪に対する補償の低さも問題で、刑事補償法においては拘束1日につき1000円~12500円(金額は補償請求を受理した裁判所の裁量により決定される)しか認められない。これは、仮に10年服役しても約365万円~4566万円しか補償されないということである。
 さらに、現在の制度では、冤罪事件でも国が弁護側の費用を補填することはない。よって現状として、冤罪の被害者は実質、経済的な被害さえも賠償されることはない。無罪判決を勝ち取るための弁護士などの費用の支払いに保証金が当てられるだけでなく、懲役措置を受けているために国民年金にも加入することも出来ないから、日本では冤罪により長年服役した後に無罪を獲得した者のほとんどが、生活保護を受けて細々と生活しているというのが現状である。
 逮捕された場合には、再審によって無罪が確定されるまで有罪として扱われるため(推定有罪)、本人や家族は経済的損害を受け、また犯罪者とその家族として差別や排斥を受けることが多い。警察や検察は重大な責任を負っていて、慎重でなくてはならないことは、これらを鑑みても明らかであろう。


 冤罪を生じさせないためにも、取調べ過程の可視化が議論されている。犯罪者が隠そうとする犯罪事実に迫るためには、あの手この手の取調べが必要であることはわかるが、違法なものであってはならないはずであり、科学的・実証的な研究の積み重ねによって、真実に迫る捜査のあり方を確立してほしい。きれいごとではなく、そうするしか捜査当局者の生きる道はない。



【235】 尖閣購入なら「日中に重大危機」と、駐中国大使が反対明言 
2012.06.07


 『 丹羽宇一郎駐中国大使は7日付の英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、東京都の石原慎太郎知事が表明した尖閣諸島の購入計画について「実行されれば日中関係に重大な危機をもたらすことになる」と述べ、反対を明言した。
 日本政府関係者で明確に尖閣諸島の購入計画に反対を表明したのは初めて。発言は波紋を広げそうだ。
 藤村修官房長官は、これまで記者会見で必要ならば国が購入する可能性に言及。政府も計画に乗る構えを見せていることに対し、丹羽氏は日中関係の前線を預かる立場から反対を表明した形だ。
 丹羽氏はインタビューで「私たちは過去の(日中関係改善に向けた)努力を水泡に帰すことがあってはならない」と語った。
 北京の日本大使館によると、インタビューは1日に北京で、日本語と英語を交えて行われたという。【北京共同】』(中国新聞より)


 表題を見て、中国の駐日大使が言ったのだと思った。記事の内容を読んだら、駐中国の日本大使が言ったのだと解ってビックリ…。日本の国を背負って派遣されている大使なのに、日本の国家や国民のために仕事をしているのだという意識のかけらもない!
 この駐中国大使は「丹羽宇一郎」は、伊藤忠商事社長・会長から、日本郵政株式会社取締役などを歴任し、2010年(平成22年)6月から民主党政権の下、中華人民共和国駐箚特命全権大使として派遣されている。(「駐箚(ちゅうさつ)」は、外交官などが任務のためにしばらく外国に滞在すること。駐在。)
 伊藤忠商事は、大日本帝国陸軍の大本営作戦参謀としてソ連軍との停戦交渉を行い、その後11年間をシベリアに抑留された陸軍中佐「瀬島龍三」が帰国して、会長を務めた会社である(山崎豊子著『不毛地帯』のモデルといわれる)。瀬島はソビエト共産党の特殊工作員として教育されていたとする証言もあるが、帰国後の彼は新設された自衛隊への勧誘を固辞し、伊藤忠商事へ入社して帝国陸軍の参謀本部の組織をモデルにした「瀬島機関」と呼ばれる直属の部下を率いて、繊維を扱う一商社に過ぎなかった伊藤忠商事を総合商社に発展させるなどに辣腕をふるった。
 丹羽宇一郎は、その当時の伊藤忠商事で薫陶を受ける。対ソ連・中共との太いパイプは瀬島時代からの継承であったのかもしれないが、丹羽時代の伊藤忠は登小平中央顧問委員会主任(当時)の長男であった登撲方の身体障害者団体に少なくないカンパをしていたり、複数の中国政府要人に多額の献金を行なっていた(中でも李鵬元首相の息子に対する数十億円の献金については、大阪国税局から摘発を受けている)ことなど、中共政治部の中枢につながりを得ていく。
 1998年(平成10年)、伊藤忠の代表取締役社長に就任。多額の負債を抱えていた伊藤忠商事を2001年(平成13年)3月期決算では過去最高の705億円の黒字を計上するまでに回復させるなどの業績を残したが、2010年6月に中国大使として赴任してからは、「売国大使」と揶揄されるほど中国寄りの姿勢が目立っている。
 2010年9月7日に発生した尖閣諸島中国漁船衝突事件では、夜中に呼びつけられて中国当局に馳せ参じているし、2010年12月18日、政府・与党内にて対中政府開発援助(ODA)に厳しい声が上がっている中、中国へのそれを増額するよう外務省本省に意見具申している。また、中国政府の新潟市中心部万代小学校跡地約5,000坪を購入して総領事館を設置し、同時に最近閉店した百貨店の跡地に中華街を作りたいという構想が、篠田昭市長らの支持を得て実現しつつあるというが、その土地購入にも丹羽宇一郎の協力があるという。
 そして、今回の「東京都による尖閣購入が実行されれば、日中関係に重大な危機をもたらすことになる」という発言を聞くと、所詮は商売優先の感覚でしか世界を見ることのできない、小商人でしかなかったということか。駐箚特命全権大使とは、その国を代表して赴任国と相対する存在である。国家の意思と国民の名誉、そして国益を守ることために、全身全霊を賭して外交を行う存在である。それが、意思も覚悟もない、ただ足し算と引き算…損得勘定だけが身を律する基準である輩が、選りにもよって厄介な国の大使として赴任しているのである。
 ここにも、民主党政権の誤りがある。いや、自民党政権であったとしても、果たしてこの事態を避けることができたのかといえば、危うさは否定できない。とすれば、今の日本の問題点は、やはり戦後日本の60年がもたらした戻れない道というべきか。戦後体制の見直しを急がねば、この国の将来はないことを、改めて思わされた出来事であった。



【235】 震災瓦礫は現地処理を考えるべき   2012.06.04


 東日本大震災で生じた震災瓦礫の処理が、1年3ヶ月を経た今も遅々として進んでいない。まだほとんどが山積みされたままのところも多く、他府県への移送・焼却処理を呼びかけているが、賛成する住民は少なく、搬入に対しては体を張って妨害する事件も起こっている。
 震災後、原発周辺の住民は強制避難を余儀なくされ、今なお放射能汚染の状況は深刻であることを思うと、受け入れ側の過敏な敬遠も無理ないことだろう。『安全』と言われても、この国は政府も責任企業も学者もウソをつくことを、繰り返し見せつけられてきた。今なお、放射能被害者には解決策も救済策も完全には行われていないこと思えば、『風で舞い散る放射能を持ち込まないで』という反対住民の思いも当然だ。
 最善の方法は、現地処理を行うことだろう。僕はかねてから、放射能の漏出を防ぐ囲いを完全に造り、震災瓦礫を埋め立てに使って陸地を広げればよいのではないかと言ってきた。震災瓦礫を埋め立てれば海水が汚染されて、以後の漁業が壊滅する…などといった懸念が呈されたが、そのために防御工事をしっかりするのであり、また、それで海水汚染が懸念されるのであれば、他府県に処理を依頼するなどもとからできない相談でしかない。
 昨日、お昼前の報道ステーションを見ていたら、『発生した瓦礫を仙台平野沿岸部に整備する防災林の土台として活用。その事業を林野庁が担当し、6月にも着手する』という福島県南相馬市の計画を紹介していた。それによると、沿岸18キロに防潮堤を造った後で、内陸部に瓦礫などを再利用し、土を盛り、植林をして防災林を設置するというものだ。埋め立てに必要な瓦礫は、南相馬市のものだけでは足らなくて、他の市町村から求めなければならないという。埋めるというと、僕なんかは海の埋め立てと短絡するけれど、「瓦礫を利用した防災大堤防の建設」という陸の埋め立てを行なう方法もあったのだ。
 国内の森林再生に取り組む一方で、国外においては、1990年から熱帯雨林再生プロジェクトに参加して、マレーシアでは根が充満したポット苗を植樹する方法で、再生不可能とまでいわれている熱帯雨林の再生に成功し、1998年からは中国の万里の長城でモウコナラの植樹を行うプロジェクトを進めてきた、宮脇 昭地球環境戦略研究機関国際生態学センター長・横浜国立大学名誉教授の取り組みも紹介していて、「東北全域の瓦礫だけでは足らない」「生命の再生で防災を」と81歳になられる先生は頼もしい。
 瓦礫を全国の自治体に搬送するに、膨大な費用がかかる。そこに、いわゆるガレキ利権が生じるわけだが、それらに群がる政治家や業者の妨害を断固排除して、この計画を軌道に乗せたい。その金額を、地元の防災堤防の建設という事業に投入していくことも、大きな復興支援になるはずだ。
 環境省に問い合わせると、「広域瓦礫処理」は、被災地で受け入れる想定はしていません。そもそも、広域瓦礫処理は、岩手、宮城源でのがれき処理の負担を減らすための目的であり、被災3県内でのがれきの移動は想定していない」という、答えにもならない答えである。
 全国自治体に過分の負担をかけ、住民の理解も得られない、震災瓦礫の広域処理は、原点に立ち返り、現地処理の方向で見直すべきであろう。



【234】 
野田首相の人事センス ???    2012.06.03


 野田首相と小沢一郎元首相との、第2回目の会談が行われた。輿石民主党幹事長のセッティングで行われた会談だが、双方の主張が繰り返されただけで、何の進展もなく…と言うよりも、お互いの相違点が際立った結果になって、消費増税法案をめぐり、民主党を分裂させることにもなりかねない前提を作ってしまったような感もある。
 仲立ちが、輿石 東だというのが致命的だ。この日教組王国の山梨県教組選出の民主党幹事長は、国会議員の文書通信交通滞在費削減について「そんなことやったら、生活ができなくなる」と自分の個人的感覚でコメントしているように、彼の頭の中には日本の国家とか国民のためにとかいった思想はない。自民党の溝手顕正参院幹事長はこんな輿石 東を「八岐大蛇(やまたのおろち)かヌエみたいな、幹事長とも言えない怪しげな男…。なぜヌエかと言うと、何も考えていないからだ」と評し、「日本の国を迷わせている」とまで言っている。
 仲介役を努めるにあたって、輿石には事態をどのように収拾しようとか、どうすることが日本や民主党にとって良いのかという構想もない。輿石が野田に「こうしよう」と進言したとも聞かないし、小沢を「ここは協力を」と説得した事実もない。もっとも、輿石の言葉を野田や小沢が聞くこともないのだろうが…。
 こんな男を政権与党の幹事長に据えた、野田総理の任命責任は重いといわねばならない。鳩山・菅政権の迷走ぶりを見せつけられて、党内融和を優先させた人事の結果なのだろうが、民主党には人材がいないことの証明でもあろう。輿石には与党幹事長としての、まずは意識もないし、そして資格も能力もない。
 

 野田首相の人事センスにはクェスチヨンマークが並ぶ…?????。第一次内閣では派閥人事の弊害とはいえ、山岡賢治国家公安委員長、一川防衛大臣、前田国交大臣など、誰が見てもお粗末過ぎる…あるいは問題があり過ぎる大臣が顔をそろえていたし、改造内閣では国防なんてまるで解っていない民主党らしく、いい人だけの田中直紀防衛大臣や、原発推進派の枝野幸男を停止を言わねばならない経産大臣に任命するなど、行き当たりばったりの人事が目立つ。
 先日、問責決議を受けた田中防衛大臣と前田国交大臣は、ともに参議院枠で輿石の推薦である。ここにも、自分たちの都合を優先させる輿石の悪影響がのぞいているが、田中直紀はなぜもっと勉強しないんだろう(苦笑)。また、前田国交大臣は元事務次官という国交省官僚のトップで、彼を大臣に据えれば『コンクリートから人へ』と謳った民主党のマニフェストは雲散霧消することは目に見えている。案の定、八ッ場ダム工事の再開、高速道路建設の解禁、整備新幹線延長など、国交省主導による矢継ぎ早やの公共工事が再開されている。問責を受けた、選挙候補者への推薦文書は明らかな選挙違反でもある。
 そうそう、鳩山由紀夫元総理を民主党外交担当最高顧問に据えているというのも、何ともお粗末な人事ではないか。鳩山はこの看板をぶら下げてイランを訪問するわけだが、案の定いいように利用されて、帰国後に「言った」「言わない」でゴタゴタ劇を展開する始末であった。国際情勢なんてまるで解っていない、外交的視点など皆無の男を政権与党の外交担当最高顧問に置くとは、世界の中でわが国の立場を貶め、苦しくすることはあっても、向上させることなど皆無であることは目に見えていたはずだ。
 菅前政権のギグシャク振りの反省から、党内融和を優先させた結果なのだろうが、内閣を構成する閣僚の任命は、国の行方を左右する。人事は、首相の専決を貫いて国民から高い評価を得た小泉純一郎に倣うべきで、ふさわしくない者がポストに就いたりすると、政治に対する国民の信頼と関心を損ないもする。その意味から野田首相の人事センスの悪さは罪が深い。



【233】 
税と社会保障の一体改革  民主党政権では無理  2012.05.28


 以前に「増税という愚策【参照】として、現段階の消費税の税率アップに疑問を呈した。国会では連日、増税論戦が盛んだが、今の増税にはやはり賛成できない。
 消費税を1%上げて2兆円ほど税収が増えるというが、23年度の国の収入を見ると、税収40兆9千億円に対して、公債金は44兆3千億円。また、今回の消費税増税分は社会保障費に充てるとしているが、やはり23年度の社会保障費は29兆円である。消費税の3%のアップなど、焼け石に水としか言いようがない。
 それでも上げないよりはいいという論議もあるかもしれない。しかし、増税は景気の足を引っ張るという歴史的事実を考えるべきだろう。だから、『消費増税で、日本はギリシャ化を免れる』という論議はウソである。デフレ下で名目成長率ゼロ以下の経済が続き、国民は消費を減らすどころか貯蓄を減らすことになる。200円弁当で節約を図っても、サラリーマン諸氏のふところはやせ細る一方だ。長引くデフレで、可処分所得は前年比1%ずつ、金額にして4700円ずつ減少してきた。増税すればデフレから脱却することは難しく、日本国民の多くが無産階級に転落することだろう。


 そもそも、民主党に税と社会保障の一体改革ができるとは考えられない。国民迎合型のマニフェストで政権を得た民主党は、何事につけてもバラマキ思考である。人生は運も大きな要素だから、「自己責任こそ社会保障の大原則だ」とまでは言わないが、民主党には「次の選挙への恐怖」とともに、「社会主義的な発想」が底辺にある。面倒見のよい政府を目指そうとしている。
 また、旧社会党の出身者ばかりでなく、もとは自民党の議員すら、政権獲得のときの大衆扇動の味が忘れられない。ここで厳しいことを言うと、次の選挙が戦えないと考えてしまう。しかし、国民一人当たり7万円の最低保障年金など、消費税の5%アップではとても補えるものでなく、さらに10%以上のアップが必要だ。財源について明確な説明をせずに、非現実的な保障ばかりを言うのは、国民を欺いていることになる。
 民主党の目玉であった「子ども手当」は、野党の反対にあって、もとの「児童手当」に戻されたが、そこにも『子育てを社会でおこなう』といった、マルクス主義的共産思想が垣間見られる。民主党議員たちの多くは共産主義などとんでもないというだろうが、大衆に迎合する(人々のためになると彼らが信じる)政策を推進する中で、無意識のうちに社会主義化・共産主義化してきたのだろう。
 しかし、長引くデフレのもとであえぐ日本経済の現実を見据え、世界に例を見ない少子高齢社会を迎えているこの国の状況を冷静に見れば、『増税して、福祉を厚く』というのは幻想に過ぎないことは、誰もが容易に理解できることだ。
 現実は『増税して、福祉を薄く』していくのが、この国の状況から見た結論である。ならば、消費税のアップは正しいのかというと、消費税を上げて福祉を厚く…という民主党政権の政策はウソであるし、消費税は上げねばならないけれど、手順が間違っていると言わねばならない。
 すなわち、①に、社会保障費の減額を図ることだ。現在、年金を受給している高齢者には、減額という現実を受け入れてもらわねばならない。低年金の人たちへの支給はより厚くあるべきだろうが、高額所得者や財産家の高齢者たちには、支給を減額あるいは停止してもよいのではないか。そうすると、お金持ちの人たちは掛け金を払わなくなるのではないかという懸念が生じるが、年金は相互扶助の制度なのだから、豊かな人たちは受け取れなくても掛け捨てるという思想が必要なのである。
 ②には、景気浮揚に実効性のある政策を行なって日本の産業の足腰を丈夫にするとともに、産業構造の転換を図り、新しい産業を育成するなどの取り組みを前進させることを、是非とも推進させねばならない。景気の浮揚には、むしろ税金を軽減するなど、思い切った施策が必要だろう。技術先進国という日本の長所を生かし、新幹線・原発などを含んだ世界の最先端を行く産業・研究に官民を挙げて取り組み、国内のイノベーションを図るとともに、完成品や技術を世界へ売り込んでいくことだ。エコノミックアニマルと言われた往時の勢いを、もう一度再現したいものである。そうすれば、若者たちの新たな雇用も拡大して、社会保障制度の土台を堅牢なものにすることもできる。
 そして③番目に、将来像を明確に示して、増税を実施することだ。民主党政権の諸政策は、ウソだらけのマニフェストとブレまくった過去の悪行から信頼されていないので、国民に国家ビジョンを示すことができない。その意味でも、民主党には日本の将来を託する資格がないといわねばならない。
 増税すると、今は苦しいけれど、2年後、3年後、5年後…、10年後はこうなるという、実現性のある将来像を示して、国民の協力(我慢・忍耐)を得ることが必要である。「100年安心の年金制度」なんて言って、3年もしたら破綻していたなんて、政治への信頼を地に堕とした、当時の厚生大臣はどんな顔をして表を歩いているのか。政治に信頼を取り戻さなくては、明日の舵取りは覚束ないだろう。
 ④番目は、与野党のバラマキ競争に慣れ、ジャブジャブの福祉に漬かってきた国民の考え方を、転換しなければならない。個人の欲望の肥大化や勤労意欲の喪失、自立精神の崩壊といった現代の風潮は、国家の財政の逼迫だけでなく、国家の崩壊につながる重大事である。
 野田政権は、消費税アップを国民に強いるのであれば、日本の将来のために年金を含めた社会システムやルールを見直すことを提唱し、国家に多くを求めることなく、自分の生き方は自分で決めるのだという覚悟を求めるべきである。この国の本当の危機は、戦後60年の日本に生きてきた、国民の心の持ち方にある。



【232】
 平成24年 憲法記念日
    2012.05.03


 30年ぐらい前には、「憲法改正」を口にすれば「右翼、反動、軍国主義」と非難され、「日本国憲法」こそが平和を守る至上の手段だという信仰が大手を振って日本を席巻していた。
 世の中は変わって、今や憲法改正は60%を超える支持を得ている(産経新聞とFNNが合同で行った世論調査)。日本が自力で国を守るという、ごく当り前の国になるための最大の足かせが、『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』と謳い、第9条第1項の「戦争の放棄」、第2項前段の「戦力の不保持」、第2項後段の「交戦権の否認」の3つの規範的要素を定めた、日本国憲法であることが広く認識されてきたということだろう。
 大東亜戦争終了後の日本を統治したGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)によって制定された日本国憲法の目的は、日本を二度と戦争を起こさない国にすることであり、そのために「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を規定したのである。しかし、理念としての平和主義はあるとしても、国際社会は武力の優劣を基盤として成り立っているのが現実である。スイスのような永世中立国たるにも、武力なくしては実現しない。「非武装中立」などというのは人間の営みや国家の成立を理解しない、言葉遊びの類に過ぎず、現在、世界の国でそれを継続的に実行・実現している国は存在していない。
 


 日本が自主独立の国たるには、憲法を改正しなければならない。それは、単に自国を守る武力を保持するためだけでなく、東京裁判で裁かれた日本の正当性を回復することが大きな目的である。
 大東亜戦争は日本の犯罪であると断罪した東京裁判の違法性は、今や世界が認めるところである。「事後法による裁判」「戦勝国の一方的な裁き」といったこれまで論証されてきた諸事実に加えて、ヴェノナ文書の公開などによる新証拠の発掘により、東京裁判は冤罪に基づく、でっち上げ裁判であることが明らかになったのである。
 日本を大東亜戦争の遂行による犯罪国家と断罪し、戦後日本を覆ってきた空想的進歩主義・平和主義・左翼思想などは、全て東京裁判史観とGHQによる統制統治が出発点である。この統治下において、戦前の日本に根付いていた思想・風俗・習慣・暮らしなどを否定し、二度と戦うことのない日本を実現するために、GHQのケージス大佐を中心とする若手将校が作成したのが、「日本国憲法」なのである。
 日本にとって憲法改正とは、戦後体制を見直し、日本を取り戻す作業である。戦後66年間の歴史は「日本国憲法」のもとで綴られてきた。やさしいだけの戦後教育も、利己的拝金主義を育んだ経済も、国家意識のない政治も、子を捨て親を捨てる社会も、みんな「日本国憲法」下で繰り返されてきた日々が生み出した現実である。
 日本社会の、そして日本という国の劣化は目を覆うばかりだ。ものづくりの技術も継承されず、人間の信頼も省みられず、文学や文化も沈下し、外国に対して正当なことも言えなくなってる日本…。これらは「日本国憲法」が招いた現象だ…とは言わないが、「日本国憲法」の下で招来した日本の劣化であることは間違いない。
 

 憲法改正は、戦後日本が喪失してきた、国家意識を回復し、日本人としての誇りを再確認するための課題である。
 GHQが、日本側の異議を受け付けない体制の中で、草案を作って押し付けた、武力の保持を否定する憲法は、その施行のわずか3年後(昭和25年)には、アメリカ自身によって警察予備隊という軍隊を編成せざるを得なかった。国家が軍隊を保持することは、国際社会における現実的要請だからである。
 このように「日本国憲法」は、制定の段階から正統性を欠き、施行に際しては国際政治の実情から逸脱し、日本国民に非正常な意識を敷衍してきている。国家観なき政治の主催者…民主党政権では望むべくもないが、日本の政治の最重要課題のひとつが「憲法改正」であることを、憲法記念日を機に確認したいと思う。



【230】 
尖閣諸島を東京都が買い上げ          2012.04.17
  - 石原都知事の発想は、常人の域を超越しているなぁ -


 東京都の石原慎太郎知事が16日、訪問中のワシントンでの講演で、東京都が尖閣諸島の購入へ向けて最終調整を進めていることを明らかにした。魚釣島など3島を個人所有する埼玉県の企業家と詰めの交渉をしており、企業家側も売却で合意しているという。
 石原都知事は購入目的について、中国などが領有権を主張していることを念頭に「東京が尖閣を守る。どこの国が嫌がろうと、日本人が日本の国土を守る」と強調。同時に、政府が対抗策を取っていないと批判した。中国などの反発は必至だが、日本の領土・領海を守るためにも、交渉の進展が注目される。(産経新聞などのニュースから)


 今のまま尖閣列島を放置していれば、韓国がヘリポートや大型船の船着場を建設して実効支配を進めている「竹島」状態になることは明らかである。中華人民共和国(以下、中共という)は海軍が太平洋へ出るためには台湾と沖縄諸島一帯の自由な航行を渇望していて、20110年の尖閣漁船衝突事件以降、尖閣列島付近の中共艦船の活動を活発化させている。
 2011年6月8日には、11隻にのぼる中共海軍の大艦隊が、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通過して西太平洋に出て演習を繰り返し、6月20日、同海峡を再び戻って引き返している。中共は、日本の排他的経済水域である宮古海峡を公海と言い張り、日本への通告もなしに、その後も艦艇の通過を繰り返している。中共の狙いは尖閣を突破口として沖縄諸島にも向けられていることに、十分な警戒が必要である。
 中共は今、「尖閣は中国固有の領土」と叫び始めている。かつては一度も主張したことのない領有を、地政学的・戦略的・資源的に重要であることが認識された今日の段階で、声高に叫び始め、既成事実を積み重ねて、世界的なキャンペーンを張っていく姿勢を見せている【参照】
 東京裁判が終わった昭和23年から昭和46年の朝日新聞の記事まで、23年間も一度も人々の口に上ったことのない…中共政府さえも取り上げたことのない「南京大虐殺」を、あたかも歴史の事実であるがごとくにデッチ上げたように、中共の歴史捏造は常套手段である【参照】
 今、世界の人々の中で、「竹島は日本の領土だ」と言い切る人がどれだけいるだろうか…?。と同じように、このまま有効な手段を講じて世界にアピールしなければ、「尖閣は日本の領土だ」という主張は曖昧なものになってしまう。
 石原都知事の行動が、日本の領土と主権を守り、国民の財産と安全を保障する政治の大きな一歩となることを期待している。


 18日、NHKのニュース9でキャスターの大越健介が、「なぜ今、波風を立てるようなことを言わなければならないのでしょうね」と発言していた。やっぱりNHKは「中国中央電視台東京支局」と揶揄されるのは、あながち理由のないことでもなかったようである。
 日本のマスコミは、なぜ問題に正対して発言するものを批判するのだろうか。そうすることは、結果的に相手方の立場・主張を擁護していることに気づいていないのだろうか。気づいているからこそ言う、確信的な売国行為であるということか。
 先日の河村名古屋市長の「南京大虐殺はなかったと思う」発言についても、「歴史認識で違いのある問題で、責任ある立場のものが自らの見解を一方的に公にしたのは配慮が足らなさ過ぎる」(中日)や、「一人の政治家の発言で34年間に及ぶ友好関係が吹っ飛んでしまう」(朝日)と、相も変らぬ南京大虐殺の真実から顔を背け、友好ばかりを取り上げた批判を繰り返している。議論を交してこそテーブルに着く…ということを、日本のマスコミは知らないのだろうか。


 石原伸晃自民党幹事長の訪中も、都知事の発言に対する中国側の反発から延期された。正当なことを言って付き合いを断るような相手とは、個人もそうだけれど、国同士も付き合う必要はない。俺の言うことを聞かなきゃ、出入り禁止だ…なんて、封建時代の田舎ヤクザのせりふじゃないか。


【230】 
郵政民営化見直し法案可決    2012.04.14
  -自民党も国民の信頼をつなぎとめることのできない政党であることを、自ら再証明-


 民主、自民、公明3党が共同提出した郵政民営化法改正案が12日午後の衆院本会議で賛成多数で可決、衆院を通過した。改正案は参院に送付され、今月中に成立する見通しだ。
 小泉政権で完全民営化の旗を振った自民党の中川秀直元幹事長、菅義偉元総務相のほか、小泉進次郎氏が賛成しなかった。
 改正案は、郵便局会社と郵便事業会社を合併し、現行の5社体制を4社体制に再編する。政府出資の日本郵政が保有するゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の株式については、時期を定めずに「全てを処分することを目指す」と努力目標にとどめるとし、また、4社の持ち株会社である日本郵政の株は政府が3分の1超を持ち、影響力を保つ。


 自民党、お前もか…!と、カエサルの心境である。まぁ、自民党を信用していたわけではないが、これで民主党のマニフェスト破りを批判する資格を喪失したという人だ。だから、民主党の株が上がったということでは決してないことは自明の理だが、自民党も国民の信頼をつなぎとめることのできない政党であることを、自ら再証明して見せたということだ。
 政官がザブザブと使っていた『離れで隠れてすき焼きを食うための資金』を断ち切り、民業に資金を回して、日本の経済を活性化するために使おうというのが、郵政民営化の趣旨であった。日本の旧制度を改革しようとする小泉改革の本丸としての「郵政民営化」を掲げた2005年の総選挙で、自民党は296、公明党は31の議席数を獲得し、その国政改革へと歩む姿は300議席を超える国民の支持を得たのであった。
 この改正(?)案によって、2009年に成立した株式売却凍結法案は廃止され、政府が100%を保有する日本郵政株は3分の1を残して売却が可能になるし、金融2社(ゆうちょ銀行・簡保生命保険)による新規事業への進出も可能となるなど、評価すべき改正点はある。ただし、現行法が持ち株会社の日本郵政による金融2社の株式を完全売却することを義務付けているのに対し、改正法はこれを努力目標としているところに、政治の闇(利権)と自民党の腐敗を見てしまう。
 郵貯と簡保の大資金を政官が意のままに使うことのできる体制への逆戻りを可能にしていては、民主党もそうだが、自民党にも明日はない! 


【229】 
東京電力の解体・再編を -九電体制の見直し- 2012.03.22
 

 福島原発の事故により、福島県をはじめとして東北各県に甚大な被害をもたらしている東京電力が、4月からの値上げを発表した。原発の稼動が望めない中で、石油など原料費の高騰をその理由としてあげているようだが、「多大な迷惑をかけて、なおかつ料金の値上げとは、反省していると思えない」という指摘に、「料金の値上げは、電力会社の権利であり義務でもある」と西澤東電社長は言ってのけた。
 しかも、契約期間中は利用者の承認がなければ値上げすることはできないにもかかわらず、その説明は一切ないままに値上げの通知を送り届け、拒否の申し出のないところは承認したとみなして4月からの値上げを実施するという横着さだ。21日、その点が世論に批判され、さすがに値上げ延期を発表した。
 今なお放射能を避けて避難生活を余儀なくされている人が多く居る現在、電気料金の値上げを言い出す体質は、『電気を供給してやっている、嫌なら使うな』という意識から生まれてくるのだろう。しかも、多額の国費の注入を受け、国民の税金で存続させてもらっている会社なのだという意識が欠如している。これが東電体質…、いや、地域独占体制を謳歌する電力会社の体質なのだろう。


 値上げを言い出している東電は、全く不埒な会社で、解体再編する以外にその考え方を改めることはできないと思われる。
 原発事故で多くの人が故郷を追われ、仕事やその日常を脅かされているというのに、東電社員の
給与水準は、政府の第三者委員会(東京電力に関する経営・財務調査委員会)の報告書によると、大卒社員の年収は50歳で約1200万円、55歳で1300万円であった。事故を受けて2割カットを東電は実施したというが、それでも50歳で1000万円前後の年収が維持されている。
 さらに退職金(企業年金の事業主負担を含む)は、大卒管理職が約4000万円、高卒の一般職は約3000万円だ。
 そのうえ、多くの企業で労使折半となっている健康保険料は会社が7割負担しているから、実質給与の上乗せである。また、社員の「リフレッシュ財形貯蓄」には会社から年8.5%の利子補給が行われている。一般銀行の定期預金金利が最高でも新生銀行の0.5%である今日、破格の優遇措置だ。8.5%の利子とは、8年で元金が2倍になる計算なのだ。
 第三者委員会は退職金の引き下げ(それでも大卒管理職で約3500万円)や福利厚生水準を他企業並みに下げることを提案したが、今に至るまで給与の2割カット以外は実施されていない。
 これが、一般企業のように、自由な市場競争で営業努力によって得た収益を原資とするならば、何の異議を申し立てることもない。しかし、東電(他の電力会社も含めて)は人件費を含めて経費として計上し、その後に電力料金を決めるという特権を保障された会社である。高額な自分たちの給与も、手厚い福利厚生も、会社の資産や施設なども、贅沢な経費を全て計上してのち、そこから電力料金に決めるのである。
 現今の政府も自分たちの垂れ流しを改めずに増税を画策しているのを見ると、東電の身勝手な論理とダブル部分は多いが、東電は民間企業なのである。一般企業としての倫理・姿勢を以って企業経営にあたることこそ、義務であり権利であろう。


 地域独占、経費一切を計上して電力料金を決定するという、現在の体制下では、電力会社はどこでも同様の体質を持っている。諸外国に比べて、異常に高い電気料金が、それを証明している。【電気料金の比較、参照】 日本の将来のためにも、今、この機会に、電力の自由化を実現させるべきであろう。



【228】
23離島国有財産化、尖閣除外 中国に配慮か  
2012.03.08  
 
 
 今日の読売新聞のWEB版に、上のような表題が踊った。記事はつづいて、以下の内容を伝えている。
 『 
政府は7日、日本の排他的経済水域(EEZ)の基点となる離島などのうち、所有者のいない23か所を国有財産として登録したものの、沖縄県の尖閣諸島周辺の離島は対象から外した。
 離島をめぐっては、EEZを明確化するための作業を進める一方、尖閣諸島を「核心的利益」として、領有権をあくまで主張する中国への刺激を避け、日中関係に対する配慮の跡もうかがえる。
 … 略 …、 藤村官房長官は7日の記者会見で、国有化や命名を記者会見などで発表しなかった理由について、「何か大げさにやるということではなく、順にやってきた」と述べるとともに、4島について、今後も国有化の対象とする考えがないことを強調した。』とある。


 対中外交の基本姿勢を、自主的配慮から主張する外交へと転換するべきであることに、そろそろ気づいてもよいのではないか、いや、すでに気づいているけれども、摩擦を恐れて踏み切れないでいるのか。いずれにしても、不甲斐ない話である。
 外交とは、主張すべきことを主張してこそ、そこを出発点として話し合いが始まる。主張しないことには、スタートラインにも立てないことは、国際社会の常識である。
 自主的配慮によって控えれば、相手が惻隠の情を覚えて譲歩するなどと考えているのは、国際感覚のない外交不適格者の妄想でしかない。主張しなければ、主張したものの言い分が既成事実となることは、これまでの国際社会の事例を見ても明らかではないか。
 ましてや、周辺諸国を東夷・西戎・南蛮・北狄などの蔑称で呼び、自らを中華と称して覇道を歩む支那が、他国に…特に自国の利害にかかわる周辺諸国に配慮することはない。例えば、「南京虐殺30万人」のプロバカンダを執拗に繰り返す支那に、どんな配慮を期待できるというのだろうか。
 1937年12月の南京攻防戦の前、南京市の残留人口は20万人であった(1937年12月17日付 南京安全区国際委員会 委員長 ジョン・ラーベ、第6号文書(Z-9)に記載)。東京裁判で南京虐殺を証言したジョン・ラーベの文書にもそう記されているのであり、これ一つを見ても30万人虐殺は支那のでっちあげであることが明らかだが、日本が否定キャンペーンを自主的配慮から自粛する中で、その虚説は繰り返され繰り返されて、欧米で映画化されるなど今やひとつの市民権を得る存在となっている。嘘も百回大声で叫べばホントになるのが、世間というものである。


 『君子は和して同ぜず、小人は同して和せず』という。君子は仲良く付き合っていても、異論は堂々と論じ合い、真の解決を見出すが、小人はうわべは争うことなく付き合っているけれども、心底信頼や尊敬し合ってはいない…という意味だが、日本の長年の外交姿勢とはまさしくこの姿であった。
 内政干渉が明らかなのに、中国の抗議に屈した、中曽根康弘総理大臣(当時)の「靖国神社参拝取りやめ」。事実無根であることがすでに立証されているのに、ただ謝れば今をしのげるという、韓国に対する河野洋平官房長官(当時)の「従軍慰安婦問題の謝罪」…などは、中韓の圧力に屈して、現在の日本にも色濃く負の遺産を残した、痛恨の失態であった。
 また、非戦闘員への無差別攻撃を禁じた国際法・ハーグ陸戦条約違反は明らかであるアメリカの日本本土絨毯爆撃と原爆投下、停戦協定に違反して満州になだれ込み、戦争終結後に千島列島・北方領土を違法占拠したソ連軍の無法…など、日本は国際社会に対して、彼らの無法振りを声高に主張しなくてはならないのではないか。
 

 日本政府の自主的配慮は、事実を事実でないと認める行為である。そうすることが、これまでどれほど日本の誇りを傷つけ、国民の英気を喪失させてきたか。国益を損ねてきたことか。政治を担当してきたものは、歴史に裁かれねばならず、その責任に身を震わせねばならない。
 論ずるべきを論じ、主張すべきを主張する。それこそ、真の信頼を築き、尊敬を得る道であることに、もう気づいてもいい頃ではないか。



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