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第2日その1 13日(月) チャオプラヤ・エクスプレス

ホテルの窓から
 昨夜は、中国国際航空の大幅な遅れで、ホテルに着いたのが午前4時30分。6時30分過ぎに寝て、10時過ぎに起きた。旅先の緊張感からか、4時間足らずの睡眠にしては、意外に爽やかな目覚めである。
 部屋の窓から外を眺めると、ホテルの足元にはバラックの家々が広がり、その向こうには高層のビルが聳えている。相変わらずバンコクは、旧時代的貧困と近代的繁栄が混在している街だ。                    【拡大】


 さて、今日から11日間暮らすわけだから、まずは食事をするところを探しておかなければならない。今日はもうゴルフに出かけることもできないから、「イケメン日本人旅行客餓死」なんて新聞の見出しにならないように、ブラブラと町を歩いて、適当なレストランや生活に必要なものを探してみることにしよう。
 それに、今回のタイ訪問では、やってみたい課題がたくさんある。@屋台メシを食べる Aチャオプラヤ川の水上バスに乗る B市バスに乗る C汽車に乗る D市場を歩く…といったところだ。タイの人たちの日常生活に触れながら、タイの街を歩いてみたいのだ。


 シャワーに入って着替えたあと、町へ出てみた。「エレガンス・スゥイーツ・ホテル」の周りエレガンス・スゥイート・ホテルの玄関は、ごみごみっとしたバンコクの下町だ。


← 「エレガンス・スゥイーツ・ホテル」の玄関
  【拡大写真】は、この玄関から向かって右の通り

 

 とにかくお昼ご飯を食べるところを探さねばならない。ホテルの前の通りには屋台が並んでいて、昼食を掻き込む人々で賑わっている
ホテルの前の通り
ホテル近くの屋台で昼食を取る人たち

 章くん、その1軒へ入ってみようと様子をうかがう。会社勤めの男性たちだろうか、スーツにネクタイ姿の男の人たちも居るし、学校帰りの女子生徒たちも数人が陣取って、大きなプラスチックの食器に盛った鶏肉や野菜を煮込んだスープをすすっている。【拡大】
 しかし、この汚さはどうだ。周りにはほこりだらけの椅子やテーブルが積み上げられ、テーブルクロスは変色している。この店はまだ自宅営業だから、食器などは水道水を使って洗い流すことができるのだろうけれど、道端の屋台はポリバケツの汲み置きの水を使っている。
 章くん、店に座る勇気が出ない。「屋台飯は明日にして、今日のところは絶対に腹痛を起こさない店を探そう」と弱気である。


 しばらく歩いて、章くん、「ロビンソン・ショッピングセンター」の4階に食堂を見つけた。壁際にぐるりと、麺類、肉料理、炒飯、サラダ、飲み物…などなど、10数件のお店が並んでいる。でも、章くん、注文の仕方が解らない。

いろいろな店が並ぶ食堂街
 ロビンソン・ショッピングセン
 ター4階のレストラン
【拡大】

 しばらく見ていると、チケットカウンターで100Bt単位のクーポン券を買い、それぞれのお店の料理を購入するのだろう…と見当はつくのだが、各店は一品の料理だけを出しているわけでなく、注文はどうやってすればよいのか、「どれにしますか」とタイ語で言われたらどうしよう、金券にお釣りはくれるのか、余ったらどうするのかなど、いざ頼むとなると課題が多い。
 日本人が居たら聞いてみようと思って、場内を一周し、東洋人っぽい顔つきの人たちへ近づいて、日本語を話しているかどうか聞き耳を立ててみたのだが、聞こえてくるのは中国語…。「日本人の方、居ませんか」と日本語で呼んでみたけれど、返事がない。
 ここも、今日のところは諦めて、無難なレストランを探すことにした。

3階 子ども用品売り場
2階 婦人服用品売り場



 エスカレータで降りていく途中、各階の様子をパチリ
並べられている品物は豊富で、日本のものよりもカラフルである。                【拡大】
 章くん、試しにパンツを買ってみた。タイだからきっと安いだろうと2枚買った。480Bt=1440円、それほど安くもないか。
 でも、ズボンのように上からボタンで前が開くかたちになっていて、生地は軽くてさらさら。縫製もしっかりしているし、同じような品を日本で買えば1枚で2000〜3000円はする品物である。今や、台湾・中国・タイ・ベトナムなどの繊維品は、安かろう悪かろうなんてとんでもない話で、品質のよい製品が生産・販売されている。


 しばらく歩いて章くん、ホテルのそばで中華レストラン「飯悦飯店」を見つけた。タイまで来て中華もないもんだ…とは思ったのだが、かなり歩き回ってお腹はペコペコ。とにかく何か食べなきゃと飛び込み、鴨肉の旨煮とエビ海鮮飯、中国茶とで275Bt(=835円)。これが、意外なほどに美味しい。後日もまた来なければ…と思って、チップ50Bt(=150円)を渡してきた。
 翌日の夕刻にこの店の前を通ったところ、前の道路には路上駐車の車が並び、店内は地元の客であふれていた。安くて美味い店ということなのだろう。章くん、このバンコク滞在中に4回、通った。

中華料理 「飯悦飯店」 メニュー。注文は写真を指差して、「これとこれ」と言う。 章くんが食べた、
海鮮飯(左)、鴨の旨煮
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 ご飯を食べながら今日の予定を考えていた章くん、チャオプラヤ川水上バスに乗って、王宮寺院(ワット・プラケオ)へ行ってみることにした。王宮は今までツアーで行ったことはあるが、ゆっくりと歩いたことはない。
 章くんのホテルから最寄りの水上バス乗り場はBTS(高架鉄道)終点駅「タクシン」のガード下にあるサトーン桟橋」【拡大】。徒歩で10分足らずだ。
 
サトーン桟橋
すぐ近くなのに、2度ほど道を間違いながら、とにかく行ってみると、待合室はたくさんの人であふれている。切符の買い方も、どこから乗るのかも、ダイヤも、何も判らない。案内所があって、「100Btの一日フリーパスを買え」とか言っている。「いら〜ん」と言って、人々の様子を見ていると、切符を買うこともなく船を待っている。
 ここから王宮へ行くには上流へ向かえばいいのだから、左から来るボートに乗ればいいわけだ。人々がざわつき、並び始めた。章くんはみんなの後ろに、おどおどとついていく。切符も買ってない。最悪、無賃乗車で罰金を払う覚悟を決め、やって来た船に飛び乗った。
水上バスの車掌さん  奥に進んで空いている席に座っていると、制服を着た女の人が、小銭が詰まった鉄の筒を「ジャランジャラン」と音を立てて振りながら船内を歩き回っている。車掌さんだ。みんな、彼女から乗船券を買っている。【拡大】
 船賃が幾らか分らない章くんは100Bt札を出して、「ワン・パーソン」と言いながら人差し指を立てる。車掌さんは、87Btのつり銭とともに「13Bt」の切符をくれた。
 タイはみんながお坊さんを敬っていると聞いていたのだが、この船にもお坊さんが乗っていたけれど、誰も席を譲ろうとしないし、後ろのほうに立たせて知らん顔をしている。
 タイ人の信仰心はうわべだけかと思ったりしたのだが、あとで聞いたところ、乗り合いの船には後部の通路の横にお坊さんの場所があって、そこを占拠しないようにとのことであった。お坊さんが座らないのは、修行のうちなのかも知れない。

サトーン桟橋 河畔のホテル シャングリラホテル
高速ボート 水上警察の舟艇 停留所


 日本へ帰ってきてからタイの様子を振り返るのに参考にさせていただいたインターネットのページ「チャオプラヤ・エクスプレスの乗り方」には、切符を買うときは行く先を言うのだと書いてあった。章くんは王宮まで行きたかったのだから、このベージによると8Btらしいが、車掌さんは「どこまで行くの?」と聞いてもどうせ通じない章くんに、終点まで行ってしまってもいいように、全区間を乗れる13Btの切符をくれたわけだ。市バスの場合も、言葉の通じない外国人には終点までの切符をくれると、何かの本に書いてあった。
 ただ、8Btのところを13Bt払ったわけだ。たかが5Bt(=15円)のことだからどうってことはないのだけれど、この『たかが5Bt(=15円)』…という感覚は、タイを旅する外国人にとっては考えなければならない問題である。
 タイの新卒工場労働者の賃金は4000〜5000Bt(1万5千円ほど)とか。日本の8分の1ほどだ。屋台の1食が20Btで、1日の食費が30〜50Bt。バスに乗る人々は、6Btの冷房バスをやり過ごして4Btの窓開きバスに乗ったりしているのが、タイの日常なのだ。「たかが5Bt」は、タイの人々の感覚ではない。
 また、いちいち日本円に換算する考え方も改めるべきだろう。ゴルフ場でキャディさんに渡すチップの相場も、多くのところは200Bt、よほどグレードの高いところでも280Btぐらいだ。キャディさんたちは300Btなんてもらったら、半月働けば工場労働者の月給になるのである。日本人の感覚からすると、100Btを上乗せしてしても300円多く渡すだけ…。しかし、タイの金銭感覚では8倍…100Btは2400円ぐらいの値打ちである。
 500Btを渡す客もいるらしくて、相場(200Bt)よりも多い300Btを渡しても、あまり良い顔をしないキワット・アルン(暁の寺)ャディさんも多いとか。
 観光客が、タイの相場を狂わせる。チャオプラヤ・エクスプレスは、『たかが5Bt(=15円)』という大問題を乗せて、チャオプラヤ川をさかのぼっていく。


 左手に「ワット・アルン(暁の寺)」が見えた。王宮は対岸だから、ここで降りればいいのだろうと見当をつけ、エイッと降りたら、これがドンピシャリ!
 別にどうってことはないことなのだが王宮の外壁、どこで降りるのかも解らずに乗ってきた身には、「ここかッ」と降りた船着場のゲートを抜けた目の前に、王宮の白い塀を見たときの安堵感は、えも言われぬものがあったのである。 

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