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ワット・フラケオ(王宮寺院)
第2日その2
  ワット・プラケオ


 3年ぶり3回目の「ワット・プラケオ
である。今まではツアーで連れて行ってもらっていたから、入場料が要ったのかどうかすら解っていない。入城門もたくさんあって、それぞれに衛兵が守っているが、職員専用の門へ行ったりすると、「観光客の方は3番目の門からどうぞ」と教えてくれたりする。
 王宮寺院の簡単な歴史や由来は、前回の「タイ・ゴルフ紀行2 2ページ」をご覧いただくこととして、早速、中に入ってみよう。


門を入ると、仙人の像が迎えてくれる この金色の仏塔は「プラ・シ
ィ・ラタナー・チェディ」

タイ建国の物語「ラーマー・キエン」絵巻の修復が行われていた。
きらびやかな境内 仏塔を支える妖精(?)たち 数々のお堂や尖塔が立ち並ぶ


エメラルド・ブッダ その霊力は計り知れないといわれる「エメラルド・ブッダ」は、今日も輝く祭壇の上に、おごそかに鎮座ましましておられた。人々はその慈悲の恵みに触れようと、大理石の床にひれ伏し、ひたすら礼拝する。       【拡大】礼拝!
参拝する女子学生
参拝する男子学生
靴を脱いで礼拝している
男女学生
 タイの人たちの信仰心の篤さは感動ものだ。左の写真は、後日に街角の寺院で撮影したものだが、お年寄りの方々はもちろん、若い男女の学生たちも、野外に祭られている仏に対して、靴を脱ぎ、裸足で礼拝していた。
 ある人は、鳥かごに入れた数羽の小鳥を、お祈りが終わると扉を開けて空に放っていた。これも、タイの宗教に定められた功徳のかたちのひとつなのだろう。近くの道端の屋台で、小鳥を入れた鳥かごを売っていたのには、恐れ入ったが…。
 お堂の中で、エメラルド・ブッダに参拝する、4〜5人の女子中学生に会った。何度もブッダに礼拝したあと、一人の女の子が先ほど入ってきた、入口から出て行こうとした。確かに「入口(Entrance)」とタイ語と英語で表示してある。観光客は気づかないのか、お構いなしで入口から出て行くが、その子を他の女の子が走り寄って手を引き、「出口(Exit)」と書かれたほうを指差して誘導していく。お互いに口をパクパクして、声を出さずに笑い合いながら、出口へと消えた。多くの観光客が談笑しあうお堂の中ででも、喋ってはいけないという戒めを、彼女たちはきちんと守っているわけだ。
 お堂の外へ出ると、彼女たちは礼拝壇の前に立って
甘水を掛け合う中学生たち
 お互いの頭に甘水をかけ合う女子中学生。
 礼拝壇の上に置いてあるハスの切り花を、
 横の器に入っている水に浸し、お互いの頭
 にざし合う。手にハスの花を持っているの
 が、見えますか。
、再び礼拝を繰り返していた。礼拝が終わると、段の上に置かれていたハスの切り花を手にし、花を甘水に浸して、その水をお互いの頭にかけ始めた。かけてもらっている女の子は、笑いながらも合掌瞑目し頭を垂れている。一人が終わると、次の子がまたかける。みんなにかけ終わると、もう一度ブッダに礼拝し、笑い合いながら走って行ってしまった。
 タイでは、子どもたちの間にも、篤実な仏への信仰心が根付いているのだ。いや、社会に根付いているからこそ、子どもたちの心にも自然に植えつけられてきたのであろう。国家が持つ姿勢の大切さが、ひしひしと思われた光景であった。

王宮



← 王宮。 【拡大】
 現国王のラーマ9世は、この宮殿には住んでおられず、研究所や農場を併せ持つ「チッドラダー宮殿」で、
ご家族とともに日々を過ごされている。


 王宮を出て、さてどうしようかと地図を広げている章くんの前に、一台の「トクトク一回乗ってみたかったトクトクが寄ってきた。一度乗ってみたかった乗り物だ。メーターをつけていないトクトクでは、料金は運転手と客との交渉である。              【拡大】
 章くんはホテルまで帰ることを考えて、「BTSタクシン・ステーション。100Bt OK?」と言うと、「400Bt」とか言う。「要らん、行け」と手を振ると、「300」「200」…と減ってきた。昨夜、空港からホテルまで400Btだったことを考え、「200Bt」ならばいいかなと思い、運ちゃんに200Btを渡して、後ろの座席に乗り込んだ。
 あとで聞いた話では、王宮からタクシン駅までのトクトクの相場は80Bt程度だそうだ。初体験の章くんが200Btを支払ったのはまぁ仕方のないところとしよう。運ちゃんは、観光客と見ると必ず吹っかけてくる。このあと3回、章くんはトクトクを利用したが、いずれも運ちゃんの言い値の半分以下で乗った。
 また、言葉がはっきり通じないのも困ったところだ。章くん、後日乗ったトクトクで、ホテルへ帰るつもりが、全く違うところへ連れて行かれた。「BTSタクシン・ステーションまで40Btで」と言ったところ、地下鉄の始発駅「ファラボーン」に着けた奴がいた。「どこへ着けてンだ。全然違うじゃないか」と日本語で怒って、20Btだけ渡して降りてきたこともあった。しつこいぐらい言わないと、どこへ連れて行かれるか解らない。まぁ、それも知らない町を旅する醍醐味のひとつなのだろうけれど…トクトクの運ちゃん
 さて、章くんが乗ったトクトクは、バリバリとけたたましい音を立てて走り始めたのだが、程なく運ちゃんは「セキュリティボックス」と書かれた建物の前で車を停めて、中から出てきたおっさんと何か話をしている。
 そのおっさんが胸に付けた『セキュリティ』の印を見せて、「私はセキュリタリーです。ユーはこの運ちゃんにハウマッチ払ったか?」と聞く。章くんは、日本のタクシー監視員のような役割で、トクトクの運行を管理している公式機関の人かと思い、「200「私はセキュリタリーです」と出てきたおっさんBt払った」と答えると、「OK.OK」とそれは妥当なところだといったジェスチュアを示す。
 さらに地図を出してきて、「じゃあ、こことここを案内してもらえ」と地図に3箇所、印をつけて渡してきた。あとで気づいたことだが、このおっさんと運ちゃんはグルなのだ。おっさんが印をつけた3箇所は、土産物屋・宝石屋・洋服屋であった。


←このセキュリティのおっさん、運ちゃんとグルだ。


 章くんは、市内を案内してくれるのならば、土産物屋でもどこへ寄っても構わない。どうせ、今日はあと何の予定もない。
 まぁ、セキュリティのおっさんがグルだったのにはやられたが、まず運ちゃんが、「ラッキー・ブッダ、安いよ、行くか?」と誘う店へ、「行け、行け」と言ってトクトクを走らせた。
 話の様子では、仏像のミニチュアを売っている店だろうか。ところが、行ってみたら店が閉まっている。運ちゃん、近所のおっさんに聞いているが、どうも店のオヤジはシャッターを閉めてどこかへ遊びに行ってしまったみたいだ。買う気もないのに章くん、「せっかく来たのに、どうなってンだ」と怒った振りをする。
トクトクからの風景
↑渋滞の中、交通整理する警官
 ↑洋服の店が並ぶ市場で。マネ
 キンでもこれだけの下半身が並
 ぶと、なんか妖しい
↑野菜を売る店が並ぶ市場
↑橋の上にも。どこにでも店が出る
↑鉄道の駅で列車を待つ人々
↑横を行くトクトク。5人ぐらい
乗っている。
 ↑オートバイタクシー。
  500mで10Btぐらい。
 恐縮気味の運ちゃん、気を取り直して、「宝石 安いよ。見るだけOK、行くか」と次を誘う。『どうせ買わないけれど、見るだけならタダだし、暇だから』と章くん、「行け、行け」。
 「BANGKOK Jewel Center」とか書かれた立派な看板の宝石店に着いた。スーツを着た女の子が出迎えてくれて、玄関を入ったところで「お飲み物をどうぞ」と勧めてくれる。「コーラ」をグィッと飲み干して、次の部屋に入ると、作業する職人たちがズラーッと並んで宝石の製造過程を見せている。「今日はあんまり時間がないんだ」と章くん、案内の女の子に煙幕を張っておいて、宝石の展示されているコーナーへ…。
 「ブルーエメラルドは?」と気のあるようなことを言いながら、ショーケースをのぞく。「これで2〜3万円ぐらいです」と説明してくれる女の子に、「小さいのはダメ。ゴミになるだけだから」と例によってハッタリをかまし、150〜300万円ほどの石を見せてもらった。
 先年に見た400万円のもののほうが、はるかに良い。「ダメじゃん、こんなんじゃ」とくさすと、別の部屋へ来いと言う。「今日はもうダメ、時間がない」という章くんに、「どこのホテルに泊っているのか」と聞くので、「シャングリラ」と高そうなところを言うと、「時間ができたときに電話をくれれば迎えに行く」と名刺をくれた。章くん、詐欺師の才能もあるかも…。
 20分ぐらいで出てくると、待っていたトクトクの運ちゃん、「何か買ったか?」。「何も買わん、見ただけや」と答えると、ちょっとガックリした様子。売り上げの何%かを受け取るのだろう。
 気を取り直して運ちゃん、「洋服 安いよ。見るだけOK、行くか」とさらに次を誘う。章くんが、冷やかし専門の客だということにまだ気づかないのだろうか。時計を見ると、午後5時過ぎ。少々面倒になってきた章くんは、「6時30分にホテルで約束がある」と答えると、「ダイジョウブ、10分 見るだけ」と運ちゃんは車を走らせる。
 ところがバンコク名物の渋滞が始まった。バンコクは世界中の首都のなかで、都市面積に比べて道路の占める割合が最も低いうちのベスト3に入るとか。加えて、近代になってから外国との戦争や地震・台風などの大災害のないバンコクは、昔からの道路が入り組んでいて、行き止まりの袋小路が多い。さらに、タイ中の自動車の半数がバンコクに集まっているという。だから、バンコクでは至るところで渋滞が起こり、つかまったら普段30分で行くところが2〜3時間かかる。
 5時半…6時…と、時刻は容赦なく過ぎていって、運ちゃんはいらだち始めた。章くんは何の用事もないから、道端の様子をパチリパチリとカメラに収めている。
 6時20分、洋服屋に着いた。高級そうな服地を出してきて、『安くしておくからスーツを仕立てろ。普通は20〜30万ほどだが、今日ならば5万円。1万円、2万円のものもあるよ。帰国の日に間に合わなければ、自宅まで送る』と、お定まりのセリフだ。家に送られてきたものは、引っ張ると千切れるような粗悪品…というのはまだ良心的なほうで、結局、届かなかったという話もザラだとか。
 「要らん、要らん、採寸の時間がない。僕は6時30分にホテルへ帰らなきゃならないんだ」と急いでいる振りをして店を出た。この時点でもう6時40分。さらに渋滞の中を走って、ホテルへ着いたのは7時30分。
 何も買わない章くんに、店からのバックマージンもない運ちゃんは、「あと100Bt追加してくれ」と言い出した。章くんは、「何言ってんだ、6時30分の約束に間に合わなかったじゃないか」などと、日本語と英語が混じった怪しい言葉で運ちゃんに答える。正確に伝わらなくても、6時30分の約束をどうしてくれるんだと言っている雰囲気は、伝わったことだろう。
 ホテルの前の交差点で止まったとき、「ここでOK。降りるぞ」と言うと、「ノーノー、100Bt… いや50Btでもくれ」とまだ言う。章くん、車を降りて運転席の横まで行き、7時30分を指している腕時計を指差して、「遅れたやないか。俺の約束をど〜してくれるのや」と言うと、『遅れたから、こいつ、怒っとるな』と思ったのか、「オゥ、ok…ok」と不満そうに行ってしまった。
 3時間近くあちこちと走ってくれたから、章くんは50Btぐらいチップを弾もうかなと思っていたのだけれど、相手から「100Bt追加」と言われて、「払えるかい、そんなもの」となったわけである。
 走り去っていくテールランプを見送りながら、『50Bt渡してやればよかったかな』とちょっと可哀相に思ったのだが、後日、「王宮からホテルの相場は80Bt」と聞き、『あのセキュリタリーのおっさんもグル』と気づいて、まぁ「おあいこ」みたいなものかと納得することにした。



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