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第7日 18(土)  パインハーストGC


 午前5時起床。昨日と同じの5時50分にお迎えだ。45分、フロントへ降りる。55分、ワンボックスカーが現れた。「今日は早かったじゃないか、5分の遅れだけだ」と冗談を言いながら、章くん、助手席へ乗り込んだ。
 何かの気配にうしろを振り返ると、先客があった。「おはようございます」とお互いに挨拶を交わす。日本語だ。章くん、まさか自分よりも早い客が居るとは思っていなかった。「おたく、何時に?」と聞くと「5時35分」…このタイ旅行で、たいへんお世話になる吉川堅太郎さんとの出会いであった。ベニシュラ・バンコック
 次のお迎えホテルは「ぺニンシュラ・バンコック」。名前を言っただけで判るホテル、中国系の経営で、玄関を一対の獅子が守っている。一泊料金は240US$〜とあるから25000円以上、章くんのホテルの1週間分じゃないか。
 ホテルはまだ灯りもついていなくて、もちろん人影もない。時間は6時10分。吉川さんが、「高級ホテルの見学をしてきます」と言って、玄関から入っていった。
 例によって運転手の兄ちゃんに、「このホテルは、何時の約束だ」と聞くと「6時25分」と言う。「またまた早すぎるじゃないか」と言うと「バンコクは渋滞があるから」などと弁解する。「こんな夜明けに渋滞するかい」と言っていたら、吉川さんが戻ってきた。
 「さすがに豪華なホテルですね」と話す影が、闇に溶け込んでいる。あたりが暗いということもあるが、それ以上に、本人の色の黒さが原因だ。「すごく日に焼けてみえますね。ゴルフばかりしているのですか」と聞くと、「もう2ヶ月間、タイに居るンで、日焼けしたんですね」という答え。「えーっ、2ヶ月…」、章くん、絶句した。
 吉川さんは、東京都の出身だが、現住所は香港。長年、香港の商社に勤務していたという国際派だが、最近独立して、タイにも仕事を広げようと、視察を兼ねての滞在である。
 奥さんを香港に残してのタイ長期出張…。「いいの?」と聞いたら、毎月初めには香港へ帰っていると言っていた。タイは観光目的ならば滞在が許されるのは1ヶ月以内…、月に1回は出入国しなくてはいけない決まりだとか。
 「ずーっとホテルに?」と聞いたら、「滞在型のアパートメントです。1ヶ月20000Bt。キッチン、プールなども付いていて、部屋の掃除(100Bt)やクリーニングなども別料金でやってくれます。繁華街のタニヤ・ハッポンの近くです」と言ってニヤリと笑パインハースト クラブハウスった。ここにも居たか、ニッポンのおじさん!
 6時25分、ぺニンシュラ族が出てきた。中村さん夫妻は50才過ぎのご夫婦と65歳ぐらいの遠山さんという男の人。車中の話の様子では、中村さんも遠山さんもお医者さんみたいだ。


 7時15分頃、パインハーストGCへ着いた。何というたくさんの客の数だ。すでに1番のティグラウンドには、長蛇のスタート待ちの列ができている。
 梨花ゴルフの社長が来ていた。先日章くんが電話で申し込んだときに、申し込みを受け付けてくれ、念のために「おたくのお名前は?」と聞いたら、「リカで〜す」と答えた社長である。
 「今日はうちのお客が80人ほど来ているの」と言っている。「来年僕が来たら、社長の両手の10本の指にダイヤが光っているね」と言ったら、「利益があまりない仕事なのです」と、もっともらしいことを言っていた。


 キャディさんはCHERRYちゃんという、ちょっとキュートな女の子。多分、おじいさんかそのおじいさんあたりがインド人のカンジだ。


       章くんも タイのキャディにすっかり慣れた
              ピースなんてしちゃっている →





 吉川さん、スタート前にサンドイッチを買って食べようとしたら、「はいスタート」とキャディさんが呼びに来て、噛みながら行くとスタート前の売店でパンを買う吉川さん。 タダのコーヒーも置いてある。、「まだ5組あります」。
  そこで章くん、打ちっぱなしの練習場へ行って、1箱30
 Btでボールを買い、打席へボールを置いたら、「はいスタ
 ート」とCHERRYが呼びに来て、クラブを持っていかれ
 てしまった。1発も打てず、球を買いに行っただけ。


 今日のペアリングは、一緒に車に乗ってきた中村ご夫妻、遠山さん、吉川さん、そして僕の、またまた5人組だぁー。

                        
前も5人組、キャディさんともで10人
 1番525Yパー5、空振りのようなチョロ。6オン2パットの8でトリスタート。昨日の4人組の後遺症か。
 アウト、1バーディ2ボギー1ダボ1トリで43。    【拡大】

18番のティグラウンドり








 インは15番368Yパー4で、ティショットがバカ当たり。残り70Yをサンドウエッジでダフって池ポチャ。池の端からの第3打がシャンク。4オンにおまけの3パットがついて、トリの7。
 このゴルフ場、カップの周りに半径30cmほどの円が描いてある。この中に止まればOKということなのだろう。キャディが勝手にボールを持って行ってしまう。
 結局、インは4ボギー1トリの43、トータル86でホールアウト。


 中村さん、遠山さんもそこそこに上手なのだが、旅先のゴルフで体はクタクタ、コースも知らず、グリーンも不慣れだから、100近くを叩かされていた。
 吉川さんは豪快…、ときどき隣のホールへ打つ。5人のキャディが一斉に「フォアー」と叫ぶ。ハーフに2〜3回合唱させて、スコアは90少し。


 ペニンシュラ族が「今日帰国…3時にホテルをチェックアウトしなきゃならない」と言うので、ホールアウト後はシャワーにも入らず、そのまま引き上げた。

                                    


    タイのバスは 南国らしく色鮮やかだ →


 
 ↓ 帰途、この時期には珍しく、
   スコールに遭った。










 高速道路を降りたところで2時を回っていて、チャオプラヤ川の対岸にあるペニンシュラへ回るにはタクシン橋を渡らなければならないのだが、渋滞に巻き込まれると、この橋を渡るだけで1時間ほどかかる。
 と、運転手の兄ちゃん、ソイ4通り突き当りの船着場へ車を着けた。ここから、ホテル専用の渡し舟が出ているのだという。何もかも豪華じゃないか。「ご縁がありましたら、また…」と愛想よく挨拶して、ペニンシュラ3人衆は降りていった。


 章くんのホテルへ向かう途中、吉川さんが「明日は何かご予定がはいっているのですか。よろしければゴルフされませんか」とお誘いをいただいた。明日は日曜日、エントリーもたいへんだろうし、一日休んでまた月曜日からツアーを再開しようと考えていた章くんの明日は、何の予定もない。
 「明日は何の予定もありません。ご一緒させていただいてよろしいのですか。願ったり叶ったりです」と答えると、「じゃあ、朝7時にタクシーでホテルへお迎えにあがりますから」と言っていただいた。


 シャワーに入り着替えて、休憩。ラウンド中に、茶店へ寄ってあれこれとパクついたので、それほどお腹は空いていない。フルーツをつまみ、NHKテレビを見ながら旅行メモを整理したりして過ごす。
 ルームキーパーの女の子がやってきた。部屋を掃除し、ベットを整え、グラスやタオルを新しくしてくれる。「サンキュー」と話しかけても、タイ語しか話さないのだろう、会釈はするが無言だ。よく見ると、この女の子は裸足…。タイの現実は、ホテルで働く女の子も履物をはかないのが当然ということか。
 章くん、いつも60Btをチップとして枕元に置いていたのだが、今日は顔を見てしまったこともあって、100Btを渡しておいた。

 夕方、ようやく日も暮れようとしている頃、章くん、チャオプラヤ水上ボートに乗って出かけた。
 どこへ行こうという当てもない。タクシン橋下のサートーン桟橋から乗船して、気の向いたところで降りることにしよう。
【拡大】 日焼けした肌に、川風が心地よい。暮れていく川面にさまざまな船が行き交い、両岸のホテルにも明かりが点った。


 王宮寺院が黄金の尖塔の先を残照に煌めかせながら、夕闇の中にたたずんでいる。間もなく、タイの人々の一日も安息の時刻に入ろうとしている。


 船がチャオプラヤ川を横切って、対岸の船着場に着いた。ずっと上流に向かって右岸に停まるものかと思っていた章くんにとっては、ちょっと意外だ。
 あとで調べてみると、この船着場はバンコクからマレー半島を南下して、その先端のシンガポールまで走る、タイ鉄道の南線の始発駅「バンコク・ノーイ駅」に隣接する桟橋だったのだ。
 そうとも知らない章くんは、ただ対岸であるということだけで、何か違った風情があるかなと思い、その駅で飛び降りた。
美味しそうな果物が満載 午後7時前。船着場の前は、たいへんな賑わいだ。軒を連ねる店々、その前の歩道に並ぶ屋台、買い物する人々、タクシー・トクトク・オートバイ…。でも、外国人を見ない。繁華街の人出とは異なる、地元の人々の賑わいが行き交っている。
 

 さて、何か食べようかな。屋台に座るには、まだまだ覚悟不足…。小さな露地に入っていって、薄暗い食堂を見つけた。2〜3組の客がテーブルを囲んでいる。入り口の席には、5人ぐらいの女子学生が皿をつついておしゃべりの最中であった。
路地裏の食堂 章くん、注文はどうやってするんだろう…、出てけって言われるんじゃ…などと心配しつつ、店内に足を踏み入れた。
 ところが、店の人が誰もいない。客のみんなも、章くんのことを眺めているのだけれど、店の人を呼ぼうともしない。「誰か居ませんか」と呼んだけれど、誰も出てこない。女の子たちに「店の人は…」と日本語で尋ねたところ、「ナンタラ〜…サ〜イ」とタイ語の答え、サッパリ解らない。
 諦めて外へ出てきて歩き出し、うしろを振り返ったら、エプロンをした女の人が、女の子たちと話をしている。店のおばさんだろうか、章くんの姿を見て、隠れていたのだろうか。


 大変だぁ、ここでデジカメのバッテリーが切れた。表通りへ出て見つけたレストランで食べた料理も、帰りの船上から見たロマンチックなバンコクの夜景も、写真がない。


 章くん、ここが鉄道の「ノーイ駅」の近くだとは知らなかった。知っていたら、国際列車の始発駅を、是が非でも見に行くところだったのに残念なことであった。
 レストランに入って食事を終えてから、あたりをブラブラ歩き、午後10時前、先ほどの桟橋へひき返して、下りの船に乗ることにした。
 ところが、下りの船への乗り方が判らない。先ほど降りた桟橋は上り専用で、下りの船はここへは着かないのだ。その隣の桟橋に、船が泊まっている。『ちょっと船の形が違うけれどなぁ』と思いながら乗り込むと、船員さんが来て「チケット」と言って桟橋の横のカウンターを指差している。『先にチケットを買えということか。ちょっと方法も違うな』と思いながら、カウンターへ戻っておばさんに「タクシン」と言い100Bt札を差し出した。ホントは、章くんが帰る船着場の名前は「サートーン」というのだが、それでもおばさん、「タクシン?」と言いつつ、向こうと指を指す。
 この船着場は、対岸への渡し舟の発着所なのだ。鉄道の始発駅や、ワット・アルン(暁の寺)などの主要な観光地には、対岸への渡し舟が運行されている。ペニンシュラなどの高いホテルにも、随時運行の渡し舟がある。お客さんが一杯になると出航するらしい。
 指差された方向へ歩いていると、「タクシン?」と言いながら、ご婦人が手招きしてくれた。日本の方だろうか、「ありがとう、サンキュー」と日本語と英語で礼を言ってついていくと、チャオプラヤ・エクスプレス下り線の桟橋があった。ちょうど船が着いて、みんな乗り込んでいるところ。章くんを先導してくれたご婦人も乗り込んで、前のほうの席に陣取っている。
 チャオプラヤの川面に町の光が映り、その光の間を船が行く。岸辺のホテルや寺院もライトアップして、色とりどりの光の影が揺れる。
 章くん、『このロマンチックさは、ひとりじゃだめだなぁ。今度は誰かと一緒に来ようか』と、旅の感傷に浸る。『バンコクで素敵な人を見つけて、旅のアバンチュールというのもいいかな』と、そんな気甲斐性もないくせに、すぐに不埒なことを考えたりもする。



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