第12日 その2  23日(木)夜  ナイトクラブ「MOMO」


 これから先は公開するとマズイのではないかと思いつつ、章くん、この夜にバンコクを発っているから、やましいことは何もなかったので、特別公開に踏み切ることにしよう。


 黒いドレスを着た女支配人が出てきて「いらっしゃいませ」。大きなボックスへ座って待つこと5分、10人ほどの女の子を従えて、女支配人が再びお出まし。「どの子をご指名?」とのたまうので、章くん、「こッ、この子と…この子…」。「えっ、2人も…」と吉川さんが呆れる。
 しばらくして、吉川さんが「ビリヤードしませんか」と言い出した。部屋の片隅にポケットビリヤードの台が置いある。「空いてる?」と聞いているが、今のところ客は章くんと吉川さんの2人だけ。工事中のクラブに来るのは、よほどのスキモノか、勇気のあるものだけだろう。
 吉川さんとトンちゃんの勝負を見ていて、ここにビリヤード台が置いてあるわけが解った。負けた方はウイスキーのグラスを空ける…、あるいは着ている服を1枚脱いだりするのだ。


       特別公開
 ← トン(TON)ちゃんと
     パイ(PAI)ちゃん →







          やや緊張気味の章くんでありました ↓





 章くん、決定的な失態に気づいた。章くんは昨夜のうちに日本円をタイバーツに換金していたのだが、あまり余してもと思って、ほどほどにしかバーツに両替しなかったのだ。昨夜の散財と今日の費用で、あと3000Btほどしかポケットに残っていない。
 「吉川さん、ほどほどのところで切り上げて下さい。バーツの持ち合わせが…」と言う章くんに、吉川さん、「僕の使って下さい」と太っ腹である。先日初めて会ったばかりなのに、幾ら要るか分らない遊びの支払いを甘えてしまっていいのだろうか。
 しかし、そこは野良猫の章くん…。空港までのタクシー代1000Btを残して、あとの2000Btを吉川さんに預け、「ええいブランデーをあけちゃえ。やれフルーツを持って来て…。何か食べたいものないかい?」と本領発揮。人の金で遊んでいるのに、いいのか…この大盤振る舞い。吉川さんも乗ってしまって、「カラオケ行こー」などとシッチャカメッチャカ。
 やがて午後10時。章くん、10時30分には空港へ入らなくてはならないので、お別れの時間である。トンちゃん、パイちゃん…、お名残惜しいけれど、章くんは日本へ帰らなければならない。もう1日、帰国を延ばそうかと考えた章くんであったが、近日また、タイの温泉に来なくてはならないし…と思い直して、彼女たちが引っ張る半袖を振り払い、勘定を全て吉川さんにお任せして、MOMOをあとにしたのであった。
 「念のために、これ持って行って下さい」と、別れ際に吉川さんが1000Btをポケットにねじ込んでくれた。


 MOMOからバンコク空港まではタクシーで30分、300Btほど。高速代を入れても400Btはかからないが、バーツはもう要らないからと、章くん、運転手さんに1000Btを渡して、500Btのお釣りをもらった。500Btを受け取ったのは、空港の手荷物預かり所の費用が270Bt必要だったからである。
 午後10時30分、24時間空港のバンコク空港はたいへんな混雑だ。
 手荷物を受け取り、残りは約300Bt。売店でお茶とロールケーキを買った。30+20=50Btぐらいかと考えていた章くん、お茶が90Bt(270円)ケーキが45Bt(135円)と聞いて愕然とした。ここバンコク空港で買った お茶とロールケーキはもう、タイ国ではない。日本よりも高いじゃないか。
 タイバーツの残りは100Btと小銭。まぁ、予定通り。

 中国国際航空の窓口で搭乗手続きを済ませ、国空港利用税500Bt.をお支払い下さい。際線ゲートを出ようとしたら、係員が居て「TAX」と言い、すぐ横の納付証明書の発売窓口を指差す。見ると「500Bt」と書いてある。これは章くん、全く頭になかった。


←空港利用税500Btを支払わないと、ここは通しませ〜ん。


 手持ちのバーツは100と少々。おいおい、タイで働かなきゃならなこの子はすごい。裸足だぞ!いのではないかと思いきや、吉川さんが別れ際に渡してくれた1000Btが、胸のポケットにあるではないか。無事、帰りの飛行機に乗れたのは、ひとえに吉川さんのおかげである。


        アフリカのどこかへ飛ぶ飛行機に乗った
         男の子。裸足だぞ。
          世界のどこへ行くにもスリッパの
          章くんも これには完敗!     →





第13日  24日(金)  帰 国


 午前1時50分。予定よりも30分ほど遅れて、CA980便はバンコク(ドン・ムアン)空港を飛び立った。【拡大】
 途中は何事もなく、午前7時25分、やはり30分ほど遅れて、北京空港へ到着。沖止めの飛行機からバスに乗り換えるときに、外気に触れた。零下1度…、バンコクから来た身には、骨身にしみる寒さだ。急いで、レインコートのズボンを履いた。
 ここから、信じられない出来事が起こる。名古屋へ向かう乗り継ぎ便CA159は8時25分の出発。ところがトランジットの手続きができないのだ。
 一旦、中国へ出国して、改めて名古屋へ飛ぶ手続きをしてくれというのである。なぜなのか、全く解らない。乗り継ぎの客は、章くんともうひとり、卒業旅行にタイ漫遊を計画したという名古屋の女子大生くん。バッケージレーンへ行って荷物を引き取り、一旦北京空港にて。中国へ入国…。
 女子大生くん、中国の入国管理官と何かもめている。眼鏡を外し、後でとめた髪留めを外して、「ワタシ…、アイチケン…、ワタシ…」とか言っている。5分ほどで出てきた。「どうしたン」と聞くと、「このパスポート、ホントに本人なのか…って」と言うので、「どれどれ」とのぞいたパスポート写真は、ロングヘヤーにソバージュを掛け、眼鏡もかけていない、化粧ばっちりの美人が写っている。こりゃぁ…本人じゃないよ…と言いかけて、章くん、ぐっと飲み込み、「中国人は、目が悪い」とフォローになっていない言葉をかけた。
 また、出国票を書いて税関を抜け、再度中国国際航空の窓口へ着いた頃には、乗り継ぎ便はすでに飛び去ったあとであった。次の便は、午後3時のJAL。女子大生くんは「日本の飛行機だから嬉しい」とか言うけれど、6時間ほど時間を潰さなければならない。
 章くん、タクシーにでも乗って、北京の街を一周して来たかったのだが、猛烈に眠い。北京空港にはほとんどないベンチを、空港の片隅で見つけ、そこで横になったら3時間ほど寝てしまった。
 起きてきて、寝ぼけ眼(まなこ)でJALの窓口へ搭乗手続きに向かった。今度はゴルフバッグは、大型荷物の預かり窓口へ入れてくれという。CA(中国国際航空)とJAL(日本航空)には、二度と乗らんぞ…と八つ当たり。
 ウラジオストック行きの飛行機のゲートに座ってウツラウツラしていると、程なくして搭乗時間が迫ってきたのか、あたりにたくさんの人が集まってきた。
 分厚いコートに身を包(くる)んだおじさんおばさん…。章くんの前の椅子にかけていた女の子は、内側が毛皮で覆われた皮のブーツを履いている。外側で揺れている、小さな手まりのようなスイングの飾りが可愛い。
 搭乗が始まった。旅の思い出を語り合っているのだろうか、談笑しながら一団はゲートの改札へと入っていく。と、最後尾にいたご婦人が、椅子に座ってウツラウツラしている章くんのところへ戻ってきて、肩を叩き、「∝∀√*$@≫£§?(ロシア語で「飛行機出ますよ。起きなさいな」… 多分)」と声を掛けてくれた。
 搭乗が始まったのに、ひとり座席で居眠りしている章くんを見て、『起こさなくていいのかしら。ロシア人じゃないし…。でも、この飛行機のゲートに座っているのだから…この飛行機に乗るのでしょう…。あのまま寝ていて、もし飛行機に乗れなかったら、私の責任かしら』と、さまざまなことを考えていただいたことと思う。
 声を掛けてもらって、ウツラウツラから目覚めた章くんは、瞬時にご婦人の心の中までを読み取って、「サンキュー」と言いながら、『おっと、急がなきゃ』という雰囲気を出し、あわてて荷物を持って立ち上がった。
 「ゲートはこちらよ」とか言って、誘導までしてくれる。乗るわけでない章くん、そこまでは付き合えない。トイレのマークを指差して、「ちょっと…」と言うと、ご婦人は「急いでね。遅れないで(多分)」と言いながら、ゲートに入っていった。
 飛行機の中でも、あの親切なご婦人、章くんを探してくれていただろうか。『体は小さいくせに、長いトイレね』とイライラさせてしまったかなぁ。飛行機が飛んだあとは、『ホントに日本人はドジね』と怒っていたかもしれない。
  帰りの飛行機の中で読んだ本


 目覚めてコーヒーを飲み、JAL(日本航空)の搭乗ゲートへ向かう。
 午後3時、北京空港を離陸。名古屋〜北京を1日1往復する日航機だが4割ぐらいのシートが空いていた。
 日本の飛行機の中では、日本語が通じるからか、日本人の客が妙に横柄(おうへい)だ。前のおっさん、機内食を食べた後に「ラーメンないのか、ラーメン」とか言っている。中国航空で言ってみろ、不穏分子が乗っていると認定され、途中の田舎空港に緊急着陸して、公安警察か人民解放軍に踏み込まれ眼下に見える夜景るぞ。

 やがて日本…。窓の外はすっかり日が暮れて、眼下に街の灯がきらめいている。北京周辺の暗さとは、比較にならない光の洪水だ。
 午後7時、中部国際空港に着陸。荷物を受け取り出国。バンコクを出てから、15時間が経過している。ヨーロッパから帰ってきた気分だ。
 お腹も空いていないし、荷物がいっぱいで、セントレアをぶらつく気にもならない。せっかくのタイの余韻が壊れてしまう。
 そのまま高速船乗り場に向かい、20時発の高速船で、20時40分、津なぎさまち港に着いた。今度はいつ行こうか…と、章くん、もう考えている。

                               完


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