11月11日(火) ホイッスラー展
秋深い京都へ、「ホイッスラー展」(京都国立近代美術館)を見に行った。
ホイッスラーは19世紀後半の印象派と同時代の画家。新たな芸術誕生の牽引者となったジャポニスムの巨匠で、アメリカで生まれ、パリで過ごした後、ロンドンを拠点に活躍した。
今回の展覧会の目玉
「《白のシンフォニー No.2:小さなホワイト・ガール》」→
ポスターか、せめて絵葉書でも買ってこようかと思ったのだが、このモデルはホイッスラーの愛人ジョニーで、この絵を完成した年に二人は別れているという、とても世俗的な理由で買うのをやめた。
ジャポニスムの牽引者らしく、日本の浮世絵や陶芸の器など、彼の所蔵品も展示されていた。日本美術(浮世絵、琳派、工芸品など)は19世紀中頃のロンドン万国博覧会への出品などをきっかけに注目され、西洋の作家たちに大きな影響を与えた。たとえばゴッホによる『名所江戸百景』の模写やクロード・モネの着物を着た少女が非常に有名であり、ドガを初めとした画家の色彩感覚にも影響を与えている。
← 「肌色と緑色の黄昏:バルパライソ」
黄昏てゆく、凪の海。さざ波が穏やかだ。
ホイッスラーは、当時主流であった歴史や教訓を伝達するメディアとしての絵画を否定し、絵画そのものの表現力、つまり絵画における純粋な視覚的効果を追求したとある。「芸術のための芸術」を目指す、いわば唯美主義の主導者として、彼は画面における色や形の調和に主眼をおいた作品を産み出し、同時代の芸術家たちに広く影響を与えた。
これらの他、水彩画やエッチングなどの小作に心ひかれるものが多くあった。

ホイッスラーの作品を見たあと、4階の常設展会場へ上がってみた。
さすがは京都近代美術館、目を見張るような作品を所蔵している。ここでも随分と時間を過ごしてしまった。
← 京都近代美術館の4階ロビーから
目の前に平安神宮の大鳥居が、その向こうに京都市立美術館が見える。
午後3時、建物内にある「カフェ・ド・505」で、
遅いランチをとった。→
パスタの本場イタリアから輸入した製麺機によるデュラムセモリナ粉100%の自家製麺生パスタを提供してくれるという。
「ビーフシチュー・パスタ」を頼んだのだが、コシのあるもちもちとした食感でソースとの絡みも良く、「パスタ」よりは「うどん」だろうと公言している章くんも、美味しくいただけた。
春や秋の天気の良い日はテラス席が人気で、予約するか、空席ができるまでしばらく待つかしなければならない。章くんは待っまでの食事は苦手なので、室内で済ませたが、窓越しの桜の紅葉が西日を受けて、キラキラと光っていた。京都はあと一息の冷え込みで、紅葉シーズンの盛りを迎える。
11月8日(土) 日中首脳会談に向けて
「安倍首相は7日夜、BSフジの番組に出演し、「(首脳会談の)条件整備を進めていく中で4項目を合意することができた。この上に立って首脳会談がAPECで行われるように最終的な調整を進めているところだ」と語った。
APEC外相会議で北京入りしている岸田文雄外相も7日夜、記者団に「開催を視野に入れて具体的な調整をしている」と述べた。安倍首相は9日に北京に到着し、12日まで滞在する。日中首脳会談が実現すれば、2012年5月以来約2年半ぶりで、第2次安倍内閣では初となる。
合意した内容は、
(1)日中の戦略的互恵関係を発展させていく(2)歴史を直視し、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた(3)尖閣諸島など東シナ海の海域で近年緊張状態が生じていることに異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態を回避する(4)政治・外交・安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努める――の4項目。
中国側は首脳会談開催の条件として、尖閣諸島をめぐり領有権問題が存在すると認めた上で「棚上げ」することと、安倍首相が靖国神社に参拝しないと確約することの2点を求めていた。一方、日本側は「会談に前提条件はつけない」との立場で、2点については「譲歩」は受け入れられないとの姿勢は堅持しつつ、中国側と折り合える文言を調整した。
文書では、中国側が領有権の存在にこだわってきた「尖閣」を明記し、両国間に「異なる見解」があるとする一方、歴史について靖国参拝には一言も触れなかった。日本外務省幹部は「異なる見解」について、「『緊張状態が生じている』にかかっている」とし、尖閣の領有権をめぐるものではないと説明。「日本の立場が後退したとか損なわれたとかは一切ない」と強調した。
【朝日デジタル】
上の記事は、靖国問題は日中間の政治的マターであって、越えられない根源的な問題ではないことを実証している。APECのホスト国である中国は、訪れた安倍首相に会うことなく追い返せば、その非礼・不見識さを問われる。よって靖国不参拝の確約を取り付けて会談を図ろうとしたわけだが、日本は断固として無条件会談を押し貫いてきた。その結果が、上の(1)〜(4)項目の合意なのである。いずれも、かねてから双方で認識されてきたことを文言にしたに過ぎず、中国側として会談開催のための体裁を繕ったというところだろう。
外交とは、「ならぬものはならぬ」と貫かばならない。日本としては「靖国参拝は国を守るために散華した英霊への儀礼」であり、「尖閣は昔から国際的に認められてきた日本固有の領土」である。中国に譲歩する材料など何もない! 国是としての原則を貫けば、論拠の曖昧な無理は修正せざるを得ないのである。
今、日中に(ついでに言えば日韓は一層)日本の国是を曲げて首脳会談を実現しなければならない理由は何もない。中国13億人を相手にする商売が捨てがたいのならば、自己責任でリスクを冒して行けばいい。それまでを止めるつもりはないが、うまくいかない時に政治のせいにしたり、中国に手かせ足かせをはめられても日本政府に泣きついたりしない、断固たる決意のもとで出かけることだ。
時の流れは、従軍慰安婦問題を誤報と断じたように、南京大虐殺の捏造も、中国共産党建国の嘘も、次々と明るみにあぶりだしていくことだろう。中共と付き合っていくかどうかは、中共が日本に条件を突きつけている以上は不可能であって、中共がいかに変わるかが必要条件なのである。
そして、いつの日にか、中共が日本と同じ価値観を持つ民主主義・自由主義の国になることが十分条件だけれども、あと30〜50年は中国共産党の独裁は続くことだろうから、日本は中共(ついでに韓国)とはまともに付き合わないことこそが肝要である。両国とも、反日を国是としている国なのだから…。
11月5日(水) 消費税10%は見送るべき
読売新聞が、『森喜朗元首相は7日夜のBSフジ番組で、消費税再増税を予定通り実施すべきだとの考えを示した。「民主党政権が提起し、自民党が協力した。自民党が『やっぱりやめた』では国民から批判を受ける」と強調した。同時に「(引き上げを)やめたら法律改正しなければならない苦労もある」と指摘。一方で増税の是非に関し、首相は既に決断しているとの見方も示した』と伝えている。
アベノミクスによる景気の高揚は大企業を中核とする一部の層が実感しているだけの話であり、庶民の懐にその恩恵を及ぼしているかといえば、程遠いというのが国民の大部分の実感である。
経済成長率を見ても、消費者動向を見ても、国民の暮らし向きを見ても、何一つとして消費税を上げても日本経済は向上するなどという材料はない。先日、日銀が大幅な金融緩和を発表して株価を上昇させたが、「大幅な金融緩和」を打たなければならなかったことこそ、景気が足ぷみしていることの証左であろう。
増大する社会保障費を賄うためには消費増税しかない…というのは財務省が作成したシナリオである。麻生財務相、野田自民税調らは、自分で考える頭もなく、自分の言葉で喋る素養もない。財務官僚が書いたシナリオをその言葉のままに読み上げるしか能がないから、どんな局面でも同じことばかり言っている。森元首相は…、麻生と野田が言ったことを真似して行っているのだ(笑)。
増税には、産業を活性化させ、景気を良くして、自然増収額を大きくするしか、国家経済の健全さを保つ方法はない。経済政策の目的はひとえに、国の生産力を向上させ、国際競争力を強靭なものにして、国民の収入を増大させることに尽きる。そうしてこそ、国家の歳入(税収)も増大するのである。
民主党政権が提起し、自民党が協力した増税案など、遵守しなければならないなどと言っているのは財務省をはじめとする霞ヶ関の輩たちだけだろう。そもそも「増税は官僚政治」なのである。民間に任せたならば、景気を浮揚させる努力をし、企業と国民の収入を増やして、国家財政を潤すと言うはずだ。
今、消費増税を行えば、日本経済にとって、何一つとして好材料はない。財務省とその傀儡政治家たちがほくそ笑むだけのことである。景気の失速ばかりでなく、収入は増えず、諸物価の値上げばかりが続く生活の閉塞感に、人心は安倍政権への信頼を揺るがせることとなる。それも、彼らのほくそ笑みの材料のひとつなのだろうが、政治を旧体質へと後退交代てはならない。ここは果断なる政治的判断を行い、消費税増税を延期することこそ、王道である。
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